【アートで共創教育 連載vol.12 最終回】言葉にしたり、答えを求めるよりも、まずは子どもたちに大いに感じてもらうことが大切

行ったことはあるけれど、ただ「きれい!」で終わってませんか? チームラボボーダレス――この新感覚ミュージアムが目指す「共創社会」について、子どもたちと一緒に考えてみます。

【アートで共創教育 連載vol.11】「絵を描くのは苦手だと思っていた息子が……」ところ変われば子どもから見えてくるものも変わる!?

ちょっとした声がけでも子どもに自己肯定感が生まれる

子どもは自分で新しい発見を見つけると、急にハッと「大人の顔」になることがあります。そんな瞬間を息子がここで見せました。

〈苦手意識は、自分が勝手に思っていたことだったんだ!〉
〈周りは、そう思っていなかったんだ!〉

絵を描くことが大嫌いだった息子が、自信を持って絵を描けるように変わりました。
今までの息子なら「絶対描かないから!」と、断固として描きませんでした。
でも、チームラボボーダレス(東京/お台場)の「世界とつながったお絵かき水族館」で描いたイカの絵に続き、“亀のお絵かき”から何かが変わった息子。「自信」がついたようです!

息子が“亀のお絵かき”をしている間、私とカメラマンが「とてもいい色の配色!」「きっちりはみ出さずに塗っていて上手やん!」などと、いろいろ話しかけていましたが、どうもこの声がけで「自己肯定感」が芽生えていたようです!
私自身も気づきました。
ほんの些細な褒め言葉や、第三者が素直な意見を伝えることだけでも、子どもたちにはダイレクトにストレートに伝わるのだと!
これが「自己肯定感に繋がること」だったんだ……。

アートも子育ても未知の世界――最初はわからなくてもいい

子どもには何が引っかかり、影響するのか、未知すぎてわかりません。
よく、《子育ては親育て》と言いますよね。子どもに親も育ててもらっている、とか。子どもの精神的な答えがわからないことには、親もどうしていいかわからないことだらけです。
子どもは宇宙のように果てしない謎だらけ。母親としても悩みまくりの毎日です。一緒に悩み、親も勉強させてもらっています。

チームラボボーダレスの中に、「マルチジャンピング宇宙」というトランポリンがあります。子どもだけが体験できるトランポリンです。
ジャンプすることで時空のひずみを生み、星屑とガスが集まって星を作ります。条件をクリアすると、素敵な宇宙が一瞬で真っ黒になり、ブラックホールが誕生します。
どんな弾み方してるんだろう?
弾力が知りたくて、
「トランポリンのゴムの感触は?」「めっちゃ弾む? 沈んだ?」「ブラックホールが出るときはわかるの?」と息子に聞いてみたら
「わかんない」ですって。
でも明らかに、言葉にはできない何かを感じ取っているようでした……。

東京藝術大学の美術教育専門准教授・伊藤達矢さんに、以前うかがった話を思い出しました。

「人は皆、違う性質や性格を持っているので、一斉に同じことを刷り込んでも、感じ方はそれぞれ違うはずです。同じことをしても、同じものを見ても、同じにはなりません。
物事を理解するということは、もともと自分が持っている考えと新しく入ってきた知識が合わさること。そこで初めて“わかった”となるのです。
算数の公式のように、どうしても刷り込んで覚えなければならないこともありますが、複数の答えに対して考え続ける『グレーなままの考え』がまだまだ必要な世の中。美術館や博物館で同じものを観ても、観ている人はそれぞれ違うものを観ています。

同じ〈山〉の絵を観ても、都会の人、海のそばに住んでいる人、山あいに住んでいる人が心で感じる風景はそれぞれ違うものです。

子どもたちも、子どもたちなりの価値観でいろいろな発見をしています。それを親たちが受け止めて、答えてあげることが大事なのです。一方で、大人の意見を子どもに伝えることで、子どもたちは大人の世界に触れることができます。大人と同じコミュニティに入れただけでも嬉しいのです」。

芸術は【正しいか】より【どう感じたか】が大事

アートは、人々の価値観の違いを学ぶことができます。そこから、自分なりの解を見つけるようになるのではないでしょうか。「わからないけど、こうなのかな?」と。
わからない→だから誰かと話をする→「そんな考えもあるんだ!」と他人の気持ちを知る→自分の気持ちも整理されてゆく。
本人の中ではまだ不確かなものを、「どうしてそう思ったのか?」と一緒に意見しながら会話を掘り下げていくと、見えてくることがあります。
“アートは言葉のない言語”です。
「感性」の後に言葉がついてくるのではないか、と思います。

この連載を通じて、私は、人が生きるために大事なのは「自分で決めるという決断力」と「自分を信じる力」だと思うのです。
人生には必ず二者択一を迫られる岐路があります。〈先生はこう言っていたけど、自分はそうじゃないと思う〉ということがあります。世の中の矛盾を乗り越えながら、自分はどのように決断していくのか。そのためには揺るがない自分が必要です。

子どもは、不思議なことが大好き。
色が変わってゆく不思議、形が変化する不思議。それがデジタルでインタラクティブなら無限の変化があります。チームラボボーダレスは、行くたびに違う“不思議”を見せてくれる無限大アートが親子で楽しめるミュージアムです。
〈心で何かを感じ取ることができるアートをいつまでも楽しんでいってくれたらな……〉と、つくづく感じました。

ご家族でぜひ、アート体験を!
ありがとうございました。

撮影/西 あかり 取材/東 理恵

森ビル デジタルアート ミュージアム : エプソン チームラボボーダレス

森ビル株式会社とアート集団・チームラボが共同で2018年6月から東京・お台場のパレットタウンで展開する「地図のないミュージアム」。10,000平方メートルの中に520台のコンピューターと470台のプロジェクターを駆使して、圧倒的なデジタルアートを繰り広げる。2023年に東京都心部において新たなチームラボボーダレスを開館する準備に入るため、2022年8月31日をもって閉館し、2023年には東京・虎ノ門に再び移転OPENします!
https://borderless.teamlab.art/jp/

※2022年7月29日、大阪・長居植物園に「チームラボ ボタニカルガーデン 大阪」がOPENしました。

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