【元宝塚・花總まりさんインタビュー】集大成となる『エリザベート』への思いを語る。

宝塚歌劇団により日本初演を果たし、東宝版でも人気を博しているミュージカル『エリザベート』。この秋、待望の再演で主演をWキャストで務めるのは元宝塚歌劇団トップ娘役の花總まりさんと愛希れいかさん。全4回にわたりお届けするスペシャルインタビュー、第1回目では日本初演で主演し、本公演が四半世紀以上を共に歩んだエリザベート役の集大成となる花總まりさんにお話を伺いました。

――’19年の公演から3年、’

――’19年の公演から3年、’20年のコロナ禍による公演中止を経て今回、『エリザベート』再演が決まった時のお気持ちを教えてください。
‘20年の頃は『エリザベート』に限らず、たくさんの舞台がコロナ禍により中止になっていました。でもここ数年の間に、中止になった舞台の再演が決まったと耳にするようになったんです。『エリザベート』も再演するのでは?と思っていた時に再演のお話をいただいたので、「来たー!!」という感じでした。

――「来たー!!」という言葉には、喜びがいっぱい詰まっていたのでしょうか?
喜びがいっぱい…喜びは確かにありました。でも一概に喜びだけではなかったです。中止になった’20年から経過した2年間という歳月はとても大きくて、自分の気持ちや身体に変化をもたらしました。ですから、喜びと同時にエリザベートを演じられるのか?と冷静に考えている自分がいたので、喜びと冷静さの半々という感じです。今回はエリザベートという大役を演じるのにぎりぎり間に合う範囲だなと思いましたので、お受けすることにしたのです。

――エリザベートを四半世紀に渡

――エリザベートを四半世紀に渡り演じたことで、初演の時と今とでは役のとらえ方が変わったところ、逆に変わらないことはありますか?
自分でやろうと思っていることは大枠では同じなのですが、その時々で感じ方が変わるんです。そういう意味では、日々いろいろと変化している役だと思います。そんな中で一番変わったのは、宝塚版から東宝版になった時でしょうか。宝塚版は約2時間半に短縮されているのでエリザベートの場面が少なくなっていますが、東宝版はオリジナルに近いのでエリザベートの登場するすべての場面があるのです。エリザベートの場面が増えたことで初演の宝塚版にはなかったことを考えるきっかけになり、エリザベートの気持ちをより深掘りすることができたと思っています。

――花總さんがエリザベートとして舞台に立つ上で大切にしていることを教えて下さい。
本当のエリザベートの気持ちを追及することです。

――追及していくと、辛くなりませんか?
かなり辛いです。でも、追及する作業というのは真っ暗闇の中を手探りで探ってもがき続けている感じなので、辛いと感じている余裕がないですね(笑)。追及していて思うのですが、エリザベートの一生を皆は「辛くて可哀想」と言いますけど、そんな簡単なものじゃないということです。毎日を辛い辛いと思う、下に向かう気持ちだけでなく、いろんなものを探し求めていく、前に向かうような気持ちもあったと思うんです。「辛い」という簡単な言葉で片づけられるはずはないエリザベートの気持ちを、より深く追求し続けたいと思っています。

――『エリザベート』=花總さん

――『エリザベート』=花總さんというイメージを持っている方が多いと思いますが、数々の作品を演じている花總さんにとって『エリザベート』はどんな作品ですか?
本当にたくさんの作品でいろんな役をさせていただきましたが、一番長い人生を役で演じたのが15歳から60歳のエリザベートです。そんな大役を宝塚で初演で演じた時は22歳で、四半世紀経った今でも演じさせていただき、私の舞台人生の中で一番多く演じさせていただく役となりました。エリザベートを演じることにより、お芝居に対するとらえ方やミュージカルへの向き合い方が変わったんです。それにより自分の人生も変わったので、言葉では伝えきれないくらいの感情があるのですが、宝であり不思議な縁を感じる作品だと思っています。

――最後に、舞台を観に来てくださる皆さまに一言お願いします。
お伝えしたいことは二つあります。一つ目は、’20年は公演がぎりぎりで中止になったので、チケットを購入していただいたにもかかわらず観ることができなかった方がたくさんいらっしゃいました。まだこの時世どうなるかわからないところはありますが、ほぼ同じキャストでお届けすることができますので、今回の公演を楽しみしていただきたいということです。
二つ目は先ほどもお話ししたことですけれど、今回はエリザベートに出演することを決心しましたが、これからもこの作品に取り組んで行けるのか先のことはわからないということです。そんな私に今やれることは、エリザベートという女性に真摯に向き合って全身全霊をかけて一回一回大切に演じるということだけです。そんな姿を、一人でも多くの方に観ていただけたら嬉しいです!

花總まり
‘91年宝塚歌劇団に77期として入団。’94年に入団3年目というスピードで雪組トップ娘役に就任。‘96年、日本初演となる『エリザベート』でタイトルロールを演じ、’98年に再演。’06年退団。トップ娘役就任期間は12年を超え歴代最長記録となる。’15年東宝ミュージカル『エリザベート』で再び主演を務め、’16年、’19年に続き、今回の’22~23年公演でも主演を務める。

『エリザベート』
‘96年に宝塚歌劇団により日本初演、’00年の東宝版初演から観る者を魅了し続けてきた大ヒットミュージカル『エリザベート』が、’22年秋~‘23年に待望の上演決定! ミヒャエル・クンツェ(脚本/歌詞)、シルヴェスター・リーヴァイ(音楽/編曲)、小池修一郎(演出/訳詞)という最高のクリエイター陣が集結。花總まり、愛希れいかがWキャストでタイトルロールを演じ、観客を美と退廃の世界へ誘う。’22年10月9日(日)~11月27日(日)東京 帝国劇場/12月5日(月)~12月21日(水)愛知 御園座/12月29日(木)~’23年1月3日(木)大阪 梅田芸術劇場メインホール/1月11日(水)~1月31日(火)福岡 博多座

【衣装】ブラウス、ブーツ<ともに参考商品>スカート¥306,900(すべてブルネロ クチネリ/ブルネロ クチネリ ジャパン☎03-5276-8300)ピアス¥689,700バングル¥1,023,000(ともにTASAKI☎ 0120-111-446)
撮影/平井敬冶 ヘアメーク/野田智子 スタイリング/戸野塚かおる 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)