【40代の性教育】恋愛・セックス・避妊・ジェンダー問題を10代と学び直して更新

ジョイセフより提供

10月11日は「国際ガールズ・デー」、10月18日は「国際メノポーズ(更年期)デー」と、10月は女性をエンパワメントする日がありましたね。ところで皆さんは、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)という言葉を聞いたことはありますか?

40代の私の世代の家庭内の性教育といえば、生理がきてお赤飯を炊かれることなど、恥ずかしい思い出しかありません。そんな思いは自分の娘にはさせたくないと思っていた矢先、国際ガールズ・デーに際して性教育やSRHR関連のイベントが渋谷で開かれたので、最新の性教育ってどんなものなのだろうと40代の私も参加してみました!今の10代、20代は私が想像していたよりも意識が高く、親世代の40代の私たちこそが性教育から取り残されて、子ども達世代のSRHR教育を阻んでしまっているかもしれないと感じました。ぜひ、40代以上の世代に知ってもらいたい今時の性教育をご紹介したいと思います。

「女子高生ブーム」真っ只中の10代を過ごして

現在、40代の私が10代の頃を思い出すと、髪は茶髪のシャギーで、制服は思いっきり短くしたスカートにダボダボのスミスのルーズソックス、これまた伸び切ったラルフローレンのカーディガンで渋谷を闊歩していた様子を思いだします。その頃はちょうど「女子高生ブーム」のど真ん中でした。卒業ギリギリの頃には紺色のハイソックスが戻ってきて、女子高生ブームが終わりかけていましたが、周りの雰囲気はとても荒れていて、今の高校生がとても真面目で大人びて見えるくらいです。

その頃は調子に乗っていて気がつきませんが、10代の女の子として生きることの生きづらさ、なにか違和感めいたものを常に感じていたように思います。当時は「国際ガールズ・デー」なんてありませんでしたし、女の子としてリスペクトされている環境ではなく、両親からもまともな性教育を受けた記憶はありません。生理がきてからは、辛くても堪えるだけでした。そっとしておいて欲しいのに、赤飯を炊いてみんなに吹聴されるなんて、嫌だったことも母は知らないでしょう。自分の中で起こっている心や身体の変化について、身近に相談できる人がいませんでした。

20年遅れの日本の性教育

ようやく、女性であることの呪縛から私を解放してくれたのはアメリカ留学でした。大学に性の問題など何でも相談できる医師や保健師がいて、ピルの存在を知りました。20年前、日本で私の周りでは誰も摂取している人がいない時に、アメリカではすでに経口ピルだけではなく、注射、パッチなど様々なチョイスがありました。その頃に出会ったアメリカ人の夫は女性の生理にも理解があり、私は自分の体を大切にするということを学びました。

20年遅れで、ようやく日本も「SRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights・性と生殖に関する健康と権利)」という概念が生まれ、浸透しつつあるとは思いますが、まだまだ「SRHR」という言葉には馴染みがないように思えますし、「国際ガールズ・デー」も認知されていないと思います。

そんな折、先月、10月11日の国際ガールズ・デーに際し、女の子のSRHRを応援する【CHOICE FES SHIBUYA】が開催されていることを知りました。【CHOICE FES SHIBUYA】は国際協力NGOのジョイセフ(JOICFP)、 渋谷の女性ウェルネス促進団体 Women’s Wellness Action(WWA)が主催し、「I LADY.」をテーマに「SRHR」の理解を広め、ガールズエンパワーメントする「知って・体験して・アクションする」スペシャルイベントです。

「I LADY.」には3つのメッセージがこめられています。

Love Yourself(=自分を大切にすること)
Act Yourself(=自分から行動できること)
Decide Yourself(=自分らしい人生を、自分で決められること)

なぜ先進国の日本で支援が必要なの?

ピルコンの染矢明日香さん(右)、ジョイセフのディレクター小野美智代さん(中央)、WWAsの森田由紀さん

まず、初めに私がこのイベントに参加して、疑問に思ったのは、なぜジョイセフは先進国である日本で活動しているのだろうということでした。貧しい家の女の子が幼くして結婚させられるなどという広告をよく見かけますよね。国際協力というとその様な遠い国の支援をしていて、あまり身近な活動というイメージがありませんでした。

日本は医療も発達し、インフラも整った先進国のはずなのになぜ、「I LADY.」などの啓蒙活動が必要なのか?とお伺いしててみたところ、海外で活動してきたことで、日本国内の女性の問題に目を向けるきっかけになり、暴力やSNSを含むいじめ、経済格差、望まない妊娠や中絶など様々な課題があることに気が付き、国内での活動を始めることになったそうです。ジョイセフ広報の廣瀬礼子さんいわく、日本は「SRHR」をめぐる状況や性教育、ジェンダーギャップなどの点で多くの課題を抱えいるので、ジョイセフの海外での経験を活かし、日本での支援を行っているということです。

私もジョイセフさんのお話を聞いて、日本人女性の権利が発展途上国の女性並みの危機にあり、その事に関して社会全体の関心が薄いという実情にショックを受けました。

今回のイベントではジョイセフのディレクター小野美智代さん、避妊啓発団体ピルコンの染矢明日香さん、WWAsの森田由紀さんと「SRHR」についての現状についての理解を深め、これから自分達ができるアクションについて考えるトークセッションがありました。

その中で、国内での中絶についての話もあり、その多くが「時代遅れ」の搔爬そうは法(外科的に掻き出す手術)とのこと。また、日本では世界標準の安全な中絶法にアクセスできず、世界で流通している女性が主体的に選べる安全な避妊法が手に入りません。中学校の学習指導要領でも「避妊、性交、中絶を扱わない」とされ、義務教育では正しい知識が得られないのが現状と考えられています。

トークセッションを通して、多くの日本の女性がその「当たり前の権利」を手にできず、自分らしい生き方の選択が阻まれていると痛感しました。それを打開するには教育しかありません。その為にはできるだけ若い頃から「SRHR」を知り、学ぶ必要があると思いました。

SRHR(性と生殖に関する健康と権利)って何?

WWAsより提供

恋愛、セックス、避妊、月経、ジェンダー、セクシュアリティーなど人生に悩んだときに自分に必要なものを多くの選択肢の中からスマートに自分らしく選ぶ「ライフスキル」を養うことが必要です。まずは、自分には以下の「SRHR」の権利があることを知ることが大切になります。

10代だけではなく更年期や不妊などの40代以上の女性にも関わる問題も含まれていますし、女性だけではなく、男性の性の問題も含まれます。SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」と目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、そして目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の3つとも密接な関係があります。

セクシュアル・ヘルス
自分の「性」に関することについて、心身ともに満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること。

リプロダクティブ・ヘルス
妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシャルな人(無性愛、非性愛の人)問わず、心身ともに満たされ健康にいられること。

セクシュアル・ライツ
セクシュアリティ「性」を、自分で決められる権利のこと。
自分の愛する人、自分のプライバシー、自分の性的な快楽、自分の性のあり方(男か女かそのどちらでもないか)を自分で決められる権利です。

リプロダクティブ ・ライツ
産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利。
妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られ、「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利です。
(ジョイセフより)

知らない人とSEXについて語る!?「I LADY CARD」を体験!

とはいうものの、単なる説明だけでは「SRHR」って具体的に何なのかピンと来るものがありませんよね。そこで、性と恋愛のスキルを身につけるジョイセフが開発した教育アイテムの「I LADY CARD」のワークショップを体験してきました。【CHOICE FES SHIBUYA】で発表されたばかりでこの日が初のお披露目となりメディアでも初公開となります。

デザインは、電通のアートディレクター/ブランドディレクター間野麗さん。開発にあたって、紙見本や箔押し見本を見ながら、何パターンも検証をしたりと印刷にとてもこだわったそう。「大変でしたがその結果、見たことないほどのキラキラのカードが完成しました。」と後日のインタビューで間野さんから制作の当時のお話を聞くことができました。

実際に手にとってみると、とてもお洒落なカードで性教育のアイテムには見ません。会場もこれから性の話をする雰囲気とは思えない、タロットカードやトランプなどのカードゲームをする様な感覚です。会場には20人以上、10代から50代以上の方まで年齢層も様々。素敵なカードのデザインのお陰か、初めての人が集まる場所にも関わらず、緊張感もなく和気藹々とした雰囲気でした。

カードは月経、デート、セックス、妊娠、SRHRの5テーマが7枚ずつ。4人分かれて、それぞれに7枚ずつカードが配られます。そして自分の気になるカードを選び、そのトピックについて話し合います。

普通であれば、どれも初対面の人と話す内容ではありません。親しい間柄でもなかなか話せない話題です。ですが、会話はポンポンと弾み、どのトピックも話しきれない程でした。まさか今日初めて会う人と生理やセックスについて話せるとは思いませんでした。

私の席の参加者は、20代、30代、40代とバラバラの年齢層でした。驚いたのが、その場の全員がピルを飲んでいたことでした。私が20代の頃だったらまずあり得ないことだったので、私が20代の頃よりも今の若い方の「SRHR」への意識の方がずっと高いことが感心しました。

男性の参加者も!

女性の参加者が多かったセッションですが、男性の参加者の方もいました。獨協大学でジェンダー問題に取り組み、ユースヘルスを守る活動をしている学生さん達でした。私が学生の時にこの様な活動をしている方は少なかったですし、まして男性が興味を持っているということに、私たち40代よりも20代のジェンダー問題についての意識の高さを感じました。

40代のイメージとは全然違う今時の生理事情!

最初に「月経」のカードについて話し合いました。20代、30代の方の方がカードの中の経験が多くて驚きました。カードには「ナプキン」や「タンポン」の他に「吸水型サニタリーショーツ」、「生理休暇」などがあるのですが、私が月経が始まった時はナプキンとタンポン以外は一般的ではありませんでした。特に、利用しているという参加者の方によると今は様々な種類の吸水型サニタリーショーツが出ているようで、私は使ったことがないのでとても気になりました。「生理休暇」なども、私が就職した頃は、日本では、周りでも使ったことのある人は聞いたことがありませんでしたし「生理休暇」という言葉すらなかったと思います。参加者の中には利用したことがあるという方もいました。

デートDVの感覚の違い

興味深かったのが「デート」のカードの中に、「即レスしないと怒る」や「相手の位置情報をチェックする」という項目があったことです。特に位置情報は、私が独身時代の時は考えられなかったので、実際、20代の参加者は同意を元に使うこともあるし、割と周りの人も待ち合わせの時などに使っているとのこと。でも、同意がなければ気持ち悪いとも話してくれました。スマートフォンやSNSでいつでもつながっていて、安心感がある様で束縛とは紙一重。人間関係がより複雑になっている様子が伺えました。女性だけではなく、カップルや将来結婚を考えている人とはぜひ、受けてほしいセッションだと感じました。

自分らしくは人それぞれ!

最後のセッションの「SRH」(自分の「性」をヘルシーに生きたい。どうする?)というカードから「人の目を気にしすぎない」というカードを選んだ方がいました。ちょうど20代半ばで、結婚ラッシュ。他人を羨んだり、比べてしまう自分がいて辛いということです。40代を迎えて、私にとっては、優先順位が低くなってしまったことが、20代にとっては重大だったり、でも自分も20代の時は同じように悩んだとハッと思い出すことも多々ありました。20代の方と関わる時に、私にとっては些細なことでも、相手には重要なこともあって、決して蔑ろにしてはいけないと気付かされました。

ちなみに、その他の「SRH」のカードは「I LADY.に生きる」、「自分のバイアスに気がつく」、「運動、栄養、睡眠を大切にする」、「自分と他者との違いを確かめ合う」、「マイドクターを見つける」、「感染症を予防・治療する」です。子育てをする中、体が資本で母である私が倒れてしまうと大事になるので、精神的なことよりも、「運動、栄養、睡眠を大切にする」や「マイドクターを見つける」という方が気になってしまうのが40代になったと感じるところでした。

意外と40代って悪くない‼

私が学ぶことも多かったのですが、その場で出産経験があるのは私だけだったので、伝えたいこともたくさんありました。40代は出産・子育てが怒涛の様に押し寄せてきます。私が20代の時、気ままに独身を謳歌していた頃、40代の方はこんなに大変な思いをしていたなんて想像もつきませんでした。

一方、20代の方は今が必死で、40代なんてずっと先のことだけれども、できればなりたくはない「おばさん」という漠然としたイメージなのかなとも思います。でも、ぼんやりしていると、びっくりするくらいあっという間にそのなりたくなかった「おばさん」になります。そう、皆、平等に残酷に。

でも、なってみたいら、あら、意外と悪くないのが40代。経験が積み上がってきて、何より経済力がついて選択肢が増え、まさに今、私は自分のSRHRを取り戻しつつあります。だから40代を迎えるのを楽しみにして欲しいし、それは20代、30代の踏ん張りにあるからこそで、今悩んでいることはきっと将来に結びつくと、老婆心ながらアドバイスしてしまいました。ただ、40代になって、もう少し大人になっているかなと思っていましたが、そうでもなかったのが人生100年、まだまだと感じている今日この頃です。

いろんな世代の方を普段は話すことのないトピックをざっくばらんに語ることができて、とても気づきの多い経験をさせてもらいました。これからの「SRHR」教育に期待できる「I LADY CARD」。企業、自治体、学校などの団体での性教育を必要としている現場で広めていければということです。ワークショップなども開催されていくと思いますので、ご興味のある方は、ジョイセフのページをチェックしてくださいね。

I LADY.ノート
カード以外にも「SRHR」を考える「I LADY.ノート」が参加者に無料で配らました。ノートに書き込みながら自分のこと、人間関係のこと、そしてからだのことについて考え、SRHRの知識に触れられるようになっています。こちらは、ジョイセフのチャリティーショップでも購入できます。

「I LADY CARD」
Question カード ×5種(DATING/ SEX/ PREGHNANCY/ SRHR/ PERIOD)
Answer カード5テーマ ×7 枚 ×4人分+How to use I LADY Card (1枚)
販売対象:企業、自治体(男女共同参画センターなど)、学校、団体、性教育を実施したいアクティビスト
価格:50,000円(公認ファシリテータ研修費込。1つBOX追加ごと20,000円で提供)
現在の価格は上記となりますが、必要なところに配布し、より多くの人が学べるように、スポンサーをつけて無料で提供出来る様な工夫もしていきたいとのことです。

公益財団法人 ジョイセフ
〒162-0843 東京都新宿区市谷田町1-10 保健会館新館
日本において、人口・リプロダクティブヘルス(RH)・家族計画・母子保健分野の国際協力における最長の歴史と最大の実績を有する専門機関。行政庁は内閣府。

ライター・Rina Ota
ライター・Rina Ota
代官山生まれのフォトグラファー・ライター。海外留学を経てシンガポールの外資系通信社に就職。結婚を機に東京に戻り、アメリカ人の夫と2人の子供の子育て中。大の旅行好きで人生の半分を海外で過ごす。ビーチが好きすぎて東南アジアでツアーを企画するほど。スイーツのアレンジ写真が得意。年間数百本近くデパ地下のスイーツレビューを書いてきたスイーツ&アフタヌーンティー好き。報道系出身ということもあり「SRHR」やフェムテック関連は今、一番興味のあるテーマ。

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