元宝塚・伝説の67期生「退団後、32歳で大学進学」

宝塚音楽学校に首席で入学し、黒木瞳さん、涼風真世さん、真矢みきさんなど名だたる同期とともに「伝説の67期生」と呼ばれた三ツ矢直生さん。現在は宝塚歌劇団の音楽講師も務める三ツ矢さんに、美容クリニックに行かずしてたるみゼロを叶える「歌う美容法」や、宝塚退団後も新しいことに次々にチャレンジしてきたエピソードを語っていただきました。

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《プロフィール》
宝塚歌劇団音楽講師・聖徳大学客員講師。
宝塚音楽学校首席入学。宝塚歌劇団を「ベルサイユのばら」ジェロ―デル役で退団。1996年、32歳で大検を経て東京藝術大学音楽学部声楽科に入学。在学中より宝塚歌劇団の講師を務め、現在に至る。2018年より、パリ、NY、シアトルなどで演奏会を展開。同年、仏「アンクラジユマンピュブリックオフィシエ勲章」受勲。毎年12月24日にホテル椿山荘東京で開催する「三ツ矢直生クリスマスディナーショー」は2022年で22回目を迎えた。

お話を伺ったのは……三ツ矢直生さん

歌うことは有酸素運動。快楽指数も自己肯定感も高まって良いことづくめ。

時々、年下のママ友から「ダイエットやアンチエイジングの秘訣は?」とか、愛用コスメについて質問されるのですが、全くこだわりはなくて(笑)。お陰様で若い頃とあまり体型が変わらなかったり、フェイスラインのたるみが少ないと言っていただけるのは、おそらく歌っているから! 歌うって、有酸素運動なのでしょうね。 普段、携帯を触っていることが多いと、どうしても胸郭が閉じて呼吸が浅くなり、巻き肩になってしまう気がしています。歌う時は腹式呼吸ですが、正しい腹式呼吸をしているだけで姿勢も良くなり、かなり運動になるんです。腹式呼吸のトレーニングは、まず姿勢を正して、おへそに親指を置いて両手で逆三角形を作ります。そうすると腹直筋(肋骨から恥骨のあたりまで、お腹の正面にある長い筋肉)・腹斜筋(脇腹部分にある筋肉)の位置がなんとなくわかると思うのですが、そこをしっかり動かし、顎関節を開けて「フッ・フッ・フッ・フッ」と息を吐きます。腹式呼吸を意識しながら胸を開くイメージで歌うと、体をしっかり使うので汗ばんできます。それだけで全身のエクササイズになりますよ!顎関節も開き、顔の筋肉も使うので、肌にもほうれい線予防にも効果があると感じています。 ミュージカルの歌などは「命を懸けて恋をする」という世界観の歌も多いので(笑)、歌っているうちに自然と心拍数も上げり、血行が良くなります。一般の方のお稽古の時も、皆さんの心の引き出しの中の愛の記憶を蘇えらせてください、とお話しています。誰かを大切に想い、大切にされていることをイメージして歌うと自己肯定感も上がると思います。「歌うことは快楽指数が高い」と聞いたことがあるのですが、レッスンを終える頃には皆さん少女のように薔薇色の頬になって帰られます(笑)。 宝塚歌劇団の大先輩に「女は髪と声と姿勢が大事よ」と教えていただいたことがあります。このすべてに心の在り方が出てしまいますものね。心と体を整え、周りも自分自身も幸せだと嬉しいな、と。「歌えば幸せ」をテーマに、指導はもちろん、歌い続けています。

言葉を信じて「やりたいことは口に出す」がモットー。夢は必ず叶うと信じています

2002年に『夢がかなう法則』という本を小学館から出版しました。宝塚時代からその後の人生まで、私の半生を綴った本です。一度絶版になったのですが、ご要望があり、2014年に再販することに。その時、出版社の方達が愛情を持って営業してくださっている姿を目の当たりにし、著者である自分が呑気にしている場合ではないぞ!と火が付きまして(笑)。漠然と「大好きな場所であるNYの方達にも読んでいただきたい!」とSNSで呟いたら、見ず知らずのNY在住の宝塚ファンの方が見つけてくださって!なんと、その方がNYの紀伊国屋書店に交渉してくださり、本を平積みしていただけることになりました。すぐNYまで風呂敷に本を包んで(笑)飛んで行ったら、現地で取材もしていただけることに。その際に「本のタイトルにちなんで、今の夢は何ですか?」と聞かれたので「NYで演奏会ができたら嬉しい」と答えました。それがきっかけで2016年にNYライブが実現。「僕がサポートするよ」とNY在住の大江千里さんが伴奏を、衣装をコシノヒロコ先生が担当してくださいました。 このNYライブの時に「次は、日本に帰ってフランス人・ジョルジュサンドの独り芝居を公演する」という話をしたら、お客様の中にフランス文化に関わる方がいらっしゃって。それがご縁で、東京藝大の卒業演奏でフランスの楽曲を選んで歌ったことやシャンソンの演奏会を10年以上続けていること、そして『ジョルジュサンド』を演じたことなどを評価していただき、アンクラジュマンピュブリックオフィシエ勲章(フランス社会功労奨励賞:芸術分野等で優れた人物に贈られる褒章)を2018年に受勲しました。 フランスで受勲式が執り行われたのですが、宝塚歌劇団の正装である袴を着て褒章を受けました。音楽家として、とても嬉しく感動的な受勲となりました。 本を持ってニューヨークに走って行ったら、その結果、フランスで褒章までいただいてしまった……という、わらしべ長者みたいな話ですが(笑)。普段から自分のしたいことは言葉にしよう!と思っていたおかげかなと思います。思い立ったら、すぐに周りの人に「これがしたい!」と伝えて動いてしまう(笑)。でも、振り返るとそうすることで実現してきたことが多いですね。歌劇団の生徒でも「この役がしたいです」と言葉にできる人に本気を感じます。意外に思っても言語化しないことのほうが多いですし、やっぱり言葉の力って大事だな、と思っています。

アンクラジュマンピュブリックオフィシエ勲章を受勲

退団後に気づいた「中卒」という枠を乗り越えて今がある

もともと性格的に好奇心が強いほうだと思います。それと、これは宝塚歌劇団で身についたのかもしれませんが、悔しがりというか、意外と負けず嫌いなのかもしれません。 退団後に初めて宝塚以外のミュージカルに出演した時、「音大を出ていない人には音楽がわからない」のようなことを言われたことがあって。その瞬間、ちょっと悔しくて。「じゃあ、一番倍率の高い音大を受験してみようかな」と。その方のおかげで、今素敵な人生になりました(笑)。 中学卒業後、すぐに宝塚音楽学校に入学したのですが、「中卒」というのは宝塚音楽学校の中ではむしろ受験準備期間が短いのに入学できたと、評価していただけることが多かったんです。でも退団後に求人情報などを見ると、「高卒以上」と書いてある。「あ、世の中って、中学卒業だとなかなか大変なんだ」と、その時初めて知りました。 退団後、好奇心が相まって大検に挑戦し、32歳でセンター試験を経て、東京藝術大学に合格。当時、「宝塚歌劇団始まって以来の快挙」などと新聞の一面の記事にも取り上げていただきました。

東京藝大への挑戦も、自分としては「もっと歌を極めたい」という思いからの自然な流れでした。「初日には、幕が開く。それまでに何があってもできるようにする」。これも宝塚時代に体得させていただいたことでしょうか。そんな思いで大学受験の準備をして挑みました。 これからももちろん、一人ではできないことばかりだと思います。周りの皆様の力を借りながら、一つずつ夢を叶えていきたい。私は「歌えば幸せ」なので(笑)、このまま夢に向かって走り続けていくと思います。

3月12日(日)13:30開場14:00開演 Johann Strauss IIオペレッタ『こうもり』三ッ矢直生:オルロフスキー役 共演:田代誠、田中宏子、小栗純一、池田理代子 場所:北とぴあ さくらホール ご予約・お問い合わせ:☎03-3546-9005(株式会社ムジカラパン)

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