夫は「子供を作りたいから結婚するわけではない」と。41歳になっていた私にはありがたい言葉でした

焦って結婚するよりも、本当に自分にあう相手と出会って結婚する方がどれほど幸せか、思いを巡らせている40代は多いのではないでしょうか。じっくりと、自分のペースで素直に正直に過ごしていれば40代だって幸せな結婚ができることを教えていただきました。

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40代からの相談所結婚

◯ 話してくれたのは...西山喜久江さん(仮名)

福岡県生まれ。某国立大学卒業後、神経内科医として活躍を続ける。24歳で結婚33歳で離婚。現在は再婚3年目。趣味は読書、旅行、ワイン。料理が得意。ポジティブさが取り柄。

夫 鹿児島県生まれ。大学卒業後、海上自衛隊に入隊し、今でも各地を転々とした生活を送る。趣味は旅行、ワイン。おおらかで思いやりがあり、真面目な性格。

難病を専門とする神経内科医として20年間医療に携わってきました。母が体が弱かったことがきっかけで医学部を目指すようになり、一浪の末地元九州の国立大学に合格。同大学で研修医として頑張っているときに同じく研修医だった1歳年上の僻地医療を目指す元夫に出会いました

すぐに恋愛が始まり、お付き合いをするようになり、付き合って半年後に結婚することになりました。というのも夫が僻地の農村に勤務先が決まり、遠距離恋愛よりも安定した遠距離結婚を選んだんです。またその地での勤務が約9年と最初からわかっていたので、その間はそれぞれが医者としての仕事を全うし、その後一緒に住もうという安易な選択をしてしまったのです。なので新居を構えることもなく、それぞれ病院の宿舎に住んで月1か2カ月に1度会うという形でスタートしました。

私の方は大学病院に勤務しはじめ、仕事が面白くてしょうがなく、大変なこともたくさんありましたが、全部が自分の身になっていくような充実した日々を送っていました。初期研修が今後の素地になると先輩から聞かされていたので、確立するためにそれはそれは仕事を頑張りました。結婚生活よりも圧倒的に仕事のことしか考えてなくて、夫のことを殆ど気にかけることもなく、気が付けば年に一度GWに会うくらいで、電話も最低限という状態

それぞれに確固とした仕事があり、経済力もあり、その上周囲の環境にも恵まれていました。元夫はまじめで静かな人。悩みがあっても聞かれない限り言わない人で、私もそこまで気が回らず何も聞かなかったので、相談事もしなければ喧嘩もしない、もめごともなく、お互い頼ることをせず、夫婦としての争点が全くないまま時は過ぎていき、気付けば9年。女性の影など怪しいことは全くありませんでしたが、2人の未来像が描けなくなっていました。

両親からも中途半端な状態は良くないから話し合いを勧められ、久しぶりに会って話をしたんです。そうするとお互いが相手に対してもう何の感情もなくなっていて、結局離婚を選びました。とはいえ何の泥沼もなく、精神的苦労もなく、傷つくこともなく別れたので、離婚しても生活に何の変わりもありませんでした。結局2人が会ったのは9年の間に50回程度。一体全体この結婚は何だったんだろう?というあっさりした気持ちしか残りませんでした。そのとき私は33歳。より医者が天職だと思うようになって、仕事に邁進。再婚する気もありませんでした。

ところが39歳のとき、当時勤務していた病院の経営者と考え方の違いから、人間関係の大切さを考えさせられるトラブルが勃発。それまで人間関係の難しさを感じたことが少なく、改めて人間関係ってどういうものだろう?私は1人で生きているけど、これでいいのか、自分自身の在り方に直面させられたんです。

ふっと周りを見ると、みんな結婚して仕事も頑張っている人ばかりではないですか。パートナーシップについても考えるようになりました。私は読書家で、何かあると本で勉強します。まず本田健さんの『理想のパートナーを見つけるためにしておきたい17のこと』を読んでみました。経済力、仕事があれば1人がベストだと思っていた私にとっては目から鱗の内容で、人は1人では生きられないことをまざまざと突き付けられたんです。40歳で何をいまさらと自分でも思いますが、あまりにも最初の結婚がままごとに感じ、相手に対しても何てひどいことをしたんだろうと初めて反省し、もう一度結婚したいと思いました。

ところが周囲の男性はみんな結婚しています。そんな悩みを友人に相談すると、結婚相談所の「キューピッドクラブ」に入会することを勧められ、即電話。職業柄、先送りすることは絶対的に許せないし、思い立ったらすぐに行動する体質は身に付いています。ところが入会資格は40歳未満。ほかも同様でした。現実を突き付けられ、呆然としましたが、またアマゾンで婚活本をポチッ。特に婚活アドバイザーの植草美幸さんの『必ずうまくいく婚活の裏ワザ25』がためになりましたね。それで、また婚活をしてみようという気になり、40代でもOKの相談所を見つけたのです。

結婚相談所には、「2年くらいかかるわね」と言われました。後から聞くと、私には3、4人分のエネルギーが要ったそうです。まず一緒に洋服などの買物に行きました。仕事中心だった私は洋服にも無頓着でパンツ中心。それを一緒にスカートやデザイン性のあるニットなどを購入。どんな人が好みでどんな生活がしたいのかも徹底的に話しました。

ちゃんと働いているまっとうな人で家族を大切にする人と医者を続けながら、一緒に料理をしたりお酒を飲んだりしたいと話しているうちに自分の理想がわかってきました。それに合う人に月1、2回ペースで会いましたが、ピンと来る人には出会えないままでした。そして10人目に会ったのが今の夫

結婚相談所でネット検索をしてヒットしたのですが同じ九州出身の海上自衛官で6歳も年下。最初は年齢に二の足を踏みましたが、条件が整っているので会うだけあってみたらのアドバイスの元、1回目は東京のホテルで会いました。思いのほか話が弾み、好きな物や感じ方が似ていて、年齢差も感じないし、夢のような1時間でした。

それは彼も同じで、2度目のデートは港にあるステキなカフェに連れて行ってくれました。続けて会ううちに「これは夢か現実なの?」と思うほど幸せで、この人と一緒にいたいと思うように

でも結婚するからには確認しておきたいことがあり、それは私の年齢からして子供を持つ確率が非常に低くなるということでした。結婚相談所の規則として、4度目に会うときは結婚前提を確認した上で成り立つため、本交際に行く前にクリアにしたいと思い、NHKのドキュメンタリー本の『卵子の老化』と言う本を彼に渡し、「あなたが結婚に子供を求めているなら、なくはないけど確率が低いから、年齢が若い人か専業主婦になりたい方を探すべき」と言いました。ベクトルが違うとお互いに悲劇だと思ったのです。何より、その頃の私は、結婚というものをじっくり見つめ直し、自分だけ幸せではいけない、相手の幸せを考えることが大切だと確信していました。

すると夫が「子供を作りたいから結婚するわけではない。君と一緒にいたいから結婚するんだ」と言ってくれたのです。当時41歳になっていた私に、何て有難い言葉なのでしょう。そんな人は後にも先にもきっといない、決意は固まりました。その後はとんとん拍子に進み、10月に入会、3月に夫と出会い、6月に結婚を決め、10月に42歳と夫36歳で入籍しました。

実は夫の職業柄、転勤が多く、今も離れて生活していますが、前回の教訓を生かし、月1か2回は必ず会い、毎日電話をして困っていることがないかを聞いています。そして何が違うって、共感しあえることが多々あって、これいいね、ご飯美味しいね、これやってみたいねと日々の生活の中で伝えあえることが何よりも幸せです。結婚って生活で、家が何より大切だと気づきました。

ずっと個で完結していた私。今でも一人で走りそうなときは深呼吸して、何食べたい? 何したい?と些細なことでも聞いて、受け入れるようにしています。結婚は相手の人生を背負うこと。夫が幸せであれば私も幸せだという、結婚の幸せを見つけました。

取材/安田真里 イラスト/あずみ虫 ※情報は2016年掲載時のものです。

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