【漢字】「灰汁=はいじる」は間違い!実は意外に読めない漢字3選|CLASSY.
CLASSY.ONLINEでは、過去数回に渡り、「読めそうで読めない熟語」を取り上げています。漢字自体は常用漢字(2,136字)の範囲内ではあるけれど、そのままの音読みでは読めない言葉です。今回も3つ紹介します。
1.「反故」
まずは、やさしいところから。例文は「友人に約束を反故にされた」。この「反故」は何と読むでしょうか?
常用漢字表では、「反」の音読みは、「ハン」「ホン」「タン」が示されています。「反対」「反省」などのようにほとんどの熟語では「ハン」と読みますが、「謀反(ムホン)」や「反物(タンモノ)」などは違いますね。では、今回の問題「反故」の読みは?
正解は「ホゴ」でした。「反故」の意味は、本来、「書き損じて不要になった紙」です。もともと「ハンゴ」と読みました。「ホン」は「裏返す」、「ゴ」は「使用済の紙」の意味です。「かつて紙が貴重だった時代、字や絵を描いた紙の裏をもう一度使った」ことに由来します。これが「ハンゴ→ホウゴ→ホゴ」と発音変化して、現在の一般的な読み方になりました。「ホゴ」以外に、「ホグ」「ホウグ」と読む場合もありますし、「反故」以外に、「反古」と書くこともあります。
なお、例文のような形で使われた場合は、「使えなくなった(無駄になった)」という拡大解釈で、「(約束などを)一方的に破る」の意味で使います。現代では、この意味で使うほうが多いと考えてよいでしょう。
2.「灰汁」
次は、ちょっと難しくなります。例文は「彼は灰汁の強い人物で知られる」。この「灰汁」は何と読むでしょうか?
正解は「あく」でした。「灰汁」とは、本来、「灰を水につけて得る上澄み液」のことです。昔から「洗濯や染め物」などに使いました。つまり、「あく」という言葉がもともとあって、それを「灰汁」の漢字に当てたわけです。いわゆる「当て字」です。
また、「灰汁(あく)」とは、上記の意味以外に、「植物に含まれる渋い成分」や「肉や魚などを煮た時に煮汁の表面に出る濁り」の意味もあります。「牛蒡(ゴボウ)の灰汁を抜く」とか「鍋の灰汁をすくう」のようにも使います。
さらに、これが拡大解釈されて、「人間や作品に現れる個性的などぎつさ」にも使われるようになりました。今回の例文「灰汁」はこれです。「あく」と読んでも「悪」ではないので、書く時は注意しましょう。
3.「虫酸」
最後は、今回いちばんの難問です。例文は「あの人の声を聞くと虫酸が走る」。この「虫酸」は何と読むでしょうか?
もちろん、「チュウサン」ではありません。正解は「むしず」でした。「虫酸」とは「胸がむかむかする時などに、胃から口にこみあげてくるすっぱい液」のことです。同じ意味で、「虫唾」と書く場合もあります。つまり、「体の中の虫が出すすっぱい液」か「体の中の虫が出すつば」と考えて2種類の漢字が当てられました。例文の「虫酸が走る」は慣用句として、「ひどく不快である」状況を表します。
そうえいば、食堂や定食屋で注文する際、何て読むか迷うメニューってありませんか? 最近入ったお店でメニューの「豚汁定食」に心ひかれ、「ぶたじる」「とんじる」で迷いました。あなたはどう読みますか? 私の見解は、「汁」を「しる」と訓読みするなら、「豚」も訓読み「ぶた」だろうと。つまり、「ぶたじる」派です。でも、最近、「とんじる」ってよく聞くような気もするし……。結局、他のメニューに逃げた私です。では、今回はこの辺で。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「難読漢字辞典」(三省堂)
・「読めそうでギリギリ読めない漢字」(河出書房新社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)