【不妊治療】アラサーでも未婚でも…知っておきたい「同年代の不妊治療の実態」【治療をしていることを伝えておくべき人は】

昨年から保険適用になり、より一層身近なものになった不妊治療ですが〝まだ早いかな…〟や〝まずは自己流で〟など、クリニックへ行くことに躊躇いがあるかも。でも、自分のカラダを知ること、考えることに早すぎることはありません。

仕事と不妊治療、両立は難しいですよね?

「時間的には融通が利くクリニックが多くなりました。問題なのは職場の理解とメンタル面かも」

7年前に比べて、仕事をしながら不妊治療している女性は多くなった印象です

学生の頃から生理不順で自分は妊娠しにくいかもしれないと思っていましたが、最近は医療も技術も進んでいるから、そのときになればなんとかなると考えていました。26歳で婚約したタイミングで、ずっと服用していたピルを中止したもののなかなか生理がこなくて、❶病院でブライダルチェックを受けました。そのチェックでAMH(アンチミューラリアンホルモン)が閉経後の女性の値であることが判明し、早期閉経と診断。「妊娠を望むなら、一刻も早く不妊治療をはじめるべき」と言われたのですが、不妊治療専門クリニックは、戸籍上で夫婦と認められないと通えないところが多く、早々に籍を入れて治療を開始しました。26歳後半から不妊専門クリニックに通い始めましたが、7年前に比べて、働きながら治療をしている人が多くなった印象です。リモートワークの浸透もあり、待合室ではパソコンやスマホで仕事をしている人も目立ち、不妊治療を働く女性もしやすくなったと感じます。最近のクリニックは、❷診療開始時間が早かったり、院内で充電ができたり、と仕事をしながら通えるように配慮されているところも。仕事を続けながら治療をするなら、病院選びの段階で、診療時間や院内の設備を確認してみるといいと思います。

無理に言わなくてもいいけれど、上司には伝えておくとスムーズです

私が治療を開始した頃は出社必須の時代で、通院のためにアポイントを断らなくてはいけないシーンも多々ありました。当時の上司には不妊治療中であることを伝え、「アポイントの変更や調整が度々発生するかもしれないので、都度ご報告します」と話しました。通院の日はスケジュール管理システムに〝アポ〞と入力し、上司にだけは「このアポは通院です」と共有。無理に言わなくてもいいけれど、直属の上司にだけでも伝えておくとスムーズです。自分が上司の立場になった今、私も一報が欲しいと思っています。治療のことをどこまでの範囲で知られたくないのか把握しておきたいし、上司としてできることがあれば対応したい。今は、不妊治療支援に力を入れている企業も多く、申請書の提出で様々な制度を受けられるところもあります。どうしても不妊治療というワードに抵抗があるのなら、最初は伏せて婦人科に行くと伝えるだけでもいいかもしれません。

理解してもらえない&働きづらい会社の場合は転職を考えても

不妊治療をする上で、融通が利く環境で働いているか否かは、重要になってきます。妊孕力は年々低下し、今日が一番若くて、妊孕力も高い状態。なので、リモートワークができなかったり、上司に理解がなくて仕事と治療を両立できない場合は、転職を視野に入れてもいいと思います。治療中はどうしても不妊治療だけにフォーカスされがちですが、治療後の育児まで考えると、結局そういう環境では働き続けにくい。不妊治療をひとつの転機とポジティブに捉えて、産後のキャリア復活までを見据えて働く環境を変えてみる。今を頑張ればいいだけじゃないから、治療後、産後のことも踏まえてライフスタイルを見つめ直すきっかけにしてもいいのではないでしょうか。

お金や時間もかかるけれど、メンタル面が一番つらい

私の場合は早期閉経により卵子の数が少ないこともあり、最初の段階から顕微授精を行いました。タイミング法や人工授精に比べて費用のかかる治療で、❸治療開始の2年でかかった費用は約500万円。自分ひとりで支払っていたのですが、不妊治療を受けることになったのは自分のせいだ、という思いもあって、この金額をなかなか夫に言えず抱え込んでいました。その状況が苦しくなり、夫に打ち明けたところ、夫に養子縁組をしてでも子どもが欲しいという同じ考えがあることが分かり、気持ちがスッキリしたんです。私もその選択には賛成だったし、不妊治療がうまくいかなくても、この夫婦関係は成り立つ、と認識できたことで、精神的にも救われました。人にもよりますが、不妊治療においては、数十万かけたのにうまくいかず、またゼロからスタートということが起こります。それも1、2回は踏ん張れるけれど、3回目以降になると、答えのない状況にどうしたらいいか分からないという境地に陥って、メンタル的にしんどくなり、仕事と治療の両立がキツくなるシーンが出てきます。どれだけのお金と時間を不妊治療にかければいいのか、仮に10年続けてその年齢で第一子でいいのか。計画的に人生を作ってきた私にとって、未来が見えず、ライフプランを立てられないのは歯がゆいことです。この部分は、数値的な目標を持って仕事に向き合い、達成している女性こそ、結構辛いと思います。だから、治療をどこまでやるのか、最終的にふたりの人生に子どもは必要なのか、しっかりパートナーと話し合うことは大切です。治療をやめてふたりの人生を歩む、子どもが欲しいから養子縁組を選ぶなど選択肢を幅広く持ち、話し合っておくことで、治療中の心の安定が保てます。保険適用になったとは言え、ステップが進むと高額な治療も多い。リモートワークを活用したり、クリニック選びを工夫すれば、働きながら不妊治療を受けることは時間的には可能だと思います。でも、やっぱり費用がかかるから、普段ファッションや食費に使っていたお金にシビアになる部分の方が大きい。私は診療費で、「ルブタンやフェンディが買えたな」と正直思ってしまったときもありました。時間というよりも、精神面の折り合いをどうつけるか、が大事かなと経験上思います。

\あわせて知っておきたい「不妊治療」のこと/

❶ブライダルチェックとは、将来的に妊娠・出産を考えている男女を対象としたトータルヘルスチェックのこと。妊娠・出産や胎児に影響を与える病気・感染症の有無を調べ、早めに治療したり予防接種を受けるきっかけになる。普段の生活では気づきにくい婦人科疾患の早期発見にも。「結婚を前提としないタイミングでも受けられるので、名称を変えるべきと思っています」(坂梨さん)

❷最近では夜や土日だけでなく、朝7時からのクリニックも。仕事前や午前半休で通えるメリットがある。

❸坂梨さんが当時実際に治療にかかった費用の内訳は、交通費2万円・初診料や検査代など10万円・薬やサプリメント代15万円・精子凍結代5万円・顕微受精(総額100万円程度×3回)・鍼灸代10万円など。早発閉経のため一般的な治療よりも薬やホルモン補充が多く必要だったため高額で、病院のベース料金も高額だったそう。

教えてくれたのは…

教えてくれたのは…不mederi株式会社 Founder CEO・坂梨亜里咲さん(33歳)
大学卒業後、ECコンサルティング会社、女性向けキュレーションメディアのディレクター、フリーランスのコンサルティングを経て、29歳で起業。26歳で早期閉経と診断され始めた、自身の不妊治療経験から、女性のQOL向上を目指したサービスやプロダクトを展開。

イラスト/Erika Skelton 取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc