雅子さま ご一家の絆を深めるリンクコーデ…色に秘められた想いとは

今年5月、日本橋高島屋の天皇皇后両陛下御即位5年・御成婚30年記念特別展にて(C)JMPA

華やかで品のある佇まいで、私たちの憧れであり続ける雅子さま。中でも、その装いは、毎回注目の的に。STORY webでは、令和流の皇后スタイルを確立する雅子さまや成年皇族の方々の装いを紹介する連載がスタート。秘められた思いなどを紐解いていきます。

今回は、仲が良いことで知られる天皇ご一家の装いについて、放送作家・皇室ライターのつげのり子さんに伺いました。

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さりげないリンクコーデが令和流

2022年の11月から増えている天皇ご一家3人でのご公務。印象的なのは、天皇陛下、雅子さま、愛子さまが装いをカラーリンクされていること。平成の天皇ご一家でも、秋篠宮ご一家でも見られない、まさに令和の天皇ご一家流のスタイルの1つと言えるのではないでしょうか?

「令和になってから、毎回と思われる顕著な天皇ご一家のカラーリンクコーディネート。アイテムをお揃いにするのではなく、天皇陛下のネクタイ、雅子さまのジャケット、愛子さまのバッグ……など、色をさり気なくリンクした洗練されたおしゃれが特徴です。ご一家は毎回話し合われて装いを決められているのでは? と感じています。ご公務は大変なことも多くプレッシャーもかなりあるとお見受けしますので、そういったご公務を楽しむという意思も感じ取れます。また、リンクされているカラーは、わかる人にしかわからないメッセージがこめられていることもあります」(つげさん、以下同)

今回はその秘められた想いを紹介していきます。

1. 淡いトーンで絵画を引き立たせて

昨年11月、「国宝展」を鑑賞された(C)JMPA

久々のご一家そろってのお出ましとなった、東京国立博物館での国宝展では、淡いブルーで装いをリンクされていました。

「国宝展は絵画など国宝の数々が主役。そういった展示作品を引き立てるために、淡い色で無地のシンプルなセットアップを選ばれたのではないでしょうか。愛子さまは同じく淡いブルーをメインカラーにした等身大のスカートのセットアップ、天皇陛下は雅子さまと同じ淡いブルーベースに愛子さまと同じネイビーとのドット柄ネクタイをされ、3人での統一感が強調されています」

2. ピンクのストールに込められた離島への思い

天皇ご一家を、主演の吉岡秀隆らが出迎えた(C)JMPA

昨年12月、離島の診療所を舞台にした映画『Dr.コトー診療所』の試写会を訪れたときは、ピンクベージュが基調の装い。ストールにも込められた思いがあるといいます。

「映画『Dr.コトー診療所』は、離島の診療所の話。上皇ご夫妻は退位されるまでに国内55の離島を訪問され、苦労の多い離島に住む人々を励まし、想いを寄せられてきました。その想いを受け継ぐ天皇皇后両陛下も、常日頃から離島に住んでいる人々を気にかけられています。

この日のコーデは、雅子さまのピンクのストールがポイント。主人公のモデルとなった方が勤務されていた鹿児島県の下甑島(しもこしきじま)には、カノコユリという美しいピンクの花が咲きます。大判の花柄ストールは、このカノコユリをイメージされたのでしょう。

ご一家でそれが引き立つピンクベージュで装いをリンクされることで、“離島の大変な自然環境に携わる人達に寄り添っています”という想いを伝えたかったのではないでしょうか」

3. すべてを受け入れるクリーム色

毎年元日にはご一家の近影が公開される。写真/宮内庁提供

今年の元日に公開されたご一家でのお写真では、白からクリーム色の見事なグラデーションカラーリンクに。ご一家のリンクコーデを拝見していると、天皇陛下のネクタイの色のバリエーションの多さにも驚かされます。

「天皇陛下はご学友の方に『結婚されてから装いがおしゃれになった』と言われるほど、雅子さまの影響を受けられています。リンクコーディネートも、ネクタイで合わせられることが多いので、微差の色違いでかなりのコレクションがあるのではないでしょうか? この日は新年を迎えての、ご挨拶の日。白やクリーム色は、まだ染まってないすべてを受け入れる色。これから1年、色々なことがあると思うけれど、国民とあらゆることを共有し受け入れていきたいという気持ちが表れていると感じました」

4.リンクさせながらも年代ごとのシルエットを

栃木県にある御料牧場をご散策(C)JMPA

久々のご静養となった、今年4月の御料牧場ではブルー系でリンクされながら、一家全員がジャケット×パンツというアイテムのリンクも印象的でした。愛子さまは、スカートをお召しになることが多かったので、非常に新鮮なリンクコーディネートに感じます。

「普段ご静養先では、もう少しリゾート感のある装いをされていますが、このときはコロナの第5類移行前でしたので、まだ遠出を控えている国民がいることを慮って、ご静養というより視察される雰囲気が強いジャケットスタイルを選ばれたのでは。雅子さまは、長め丈のテーラードジャケットにテーパードパンツ、スクエア型の揺れるイヤリング。愛子さまはフレッシュな短め丈のテーラージャケットに旬のセンタースリット入りパンツ、可愛らしい星のモチーフが揺れるイヤリング。と、同じアイテムを選ばれていても、年代によって個性を出されているのが素敵ですよね」

5. 子どもたちとのご交流は愛子さまを主役に据えて

5月4日、ウィーン少年合唱団のコンサートへ(C)JMPA

4年ぶりに来日したウィーン少年合唱団の公演では、白とイエローのカラーリンクを。

「愛子さまがイエローのお召し物を着られているのはとても珍しいと思います。愛子さまはまだ学業優先で、ご公務の機会が少ないので、出席できる日は主役にしてあげたいという思いと、合唱団の少年たちと年齢の近い愛子さまが引き立つようにという思いから、雅子さまが全身白、愛子さまがイエローのコーディネートを選ばれたのだと思います。

ウィーン少年合唱団は、ハプスブルク家出身の皇帝により創設されました。イエローはハプスブルク家を象徴する色。同家が栄華を極めた時代には、世界遺産・シェーンブルン宮殿をはじめ、建造物をイエローに塗っていたので、それにちなんでこの色を選ばれたのではないでしょうか」

6. まるで分身のように・・・母娘の水色コーデ

19年に行われた即位礼正殿の儀で、両陛下がお召しになった装束をご覧に(C)JMPA

日本橋高島屋で開催された、両陛下の結婚30年を記念した特別展をご一家で訪問されたときは、パンツとスカートの違いはあれど、淡いブルーのセットアップ、シニヨンにまとめられたヘアスタイル、と雅子さまと愛子さまのまるで双子のような装いが新鮮でした。

「まるで同じジャケットをお召しになられているかのようで、ここまで似ている装いでいらっしゃるのは珍しいこと。この展示は、雅子さまが皇室に嫁がれて30周年を記念した特別な展示ですが、その30年の中で特に印象深く嬉しかったのは愛子さまのご誕生だと思います。雅子さまの、(愛子さまは)私の分身のような大切で尊い存在であることを伝えたい、という強い思いが伝わってきます」

7. 日頃からの絆が見えた、チェックシャツ

4月、御料牧場でのご静養中に大根を収穫された。写真/宮内庁提供

報道陣が入らない場面でもリンクコーデをされているご一家。天皇皇后両陛下のご成婚30周年記念日を前に公開された写真でも、仲よくチェック柄をお召しになっていました。

「天皇ご一家は普段から会話が多いことでも知られています。ご家族でのリンクコーディネートは、やはりコミュニケーションを密にとっているからこそできるもの。報道陣がいない場面でもリンクされているなんて、それが日常なのかもしれません。天皇陛下が雅子さまにプロポーズでおっしゃった『雅子さんのことは、僕が一生全力でお守りします』という言葉を完璧に実行され、雅子さまも愛子さまも、全力で守られている。その絆が写真からわかります」

皇族方の装いからもさまざまな思いが読み取れます。つげさんは、こうした装いも、両陛下と国民のコミュニケーションに一役買っているといいます。

「雅子さまは、私たちには想像できないプレッシャーを感じながら国民とどうやって信頼を深めていこうと考え模索するなかで、装いにメッセージをこめるというのが方法の1つだと考えてらっしゃるのだと思います。ご公務ではコメントを発される機会は限られていますし、万葉の昔から皇室の方は、短歌などに想いをこめるなど自分の想いを直接伝えない奥ゆかしさがいいとされてきましたので、その名残ではないでしょうか」

教えてくれたのは…
放送作家・皇室ライター
つげ のり子さん

テレビ東京系『皇室の窓』の放送作家。2001年の愛子さまご誕生以来、皇室番組の構成を担当し、皇室研究をライフワークとしている。ワイドショーから政治経済番組、ラジオまで様々な番組の構成を手掛ける。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)『素顔の雅子さま』『素顔の美智子さま』(河出書房新社)などがある。

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