ファンケル大学学長 田中淑子さん~「世の中の“不”を解消しよう」理念を掲げるこの会社が本当に大好き

女性としてこれからのキャリアについて悩むSTORY世代。’22年に女性活躍推進法が改定されてからはますます女性の活躍が期待され始め、徐々に女性管理職比率も高くなってきています。個人として評価され活躍される女性リーダーの方々には、キャリアの狭間で自身の生き方を見つめ、可能性を信じてチャレンジする姿がありました。

今回ご登場いただくのは、株式会社ファンケルの教育部門であるファンケル大学にて学長をされている田中淑子さんです。母として妻として、そして学長として。様々なシチュエーションで多くの学びを吸収しながら常に前を向き続ける。そんな彼女のSTORYをご紹介します。(全2回の2回目)

記事前編はこちら


 

田中 淑子さん(50歳)
ファンケル大学 学長

STORY編集部(以下同)――田中さんが株式会社ファンケルに入社を希望、もしくは選択された理由とは?

私が入社した‘96年当時は上場前で会社も小さく、まったく名前が知られていない状態でした。ちょうど就職活動中に、実家から割と近いところで会社説明会を開催する企業があると友人から聞き、参加することに。それがファンケルでした。説明会では創業者である池森賢二自身が話をしていました。その話に、ものすごく感銘を受けてしまったんです! そして、なんて素晴らしい会社なんだ、絶対入りたい! って(笑)。

――田中さんを虜にしてしまった、池森さんのお話の内容、気になります!

当時、ファンケルは肌荒れで苦労している女性たちのため、その当時「表示指定成分」と言われていた成分を無添加にした“無添加化粧品”を製造し、通信販売で全国の女性達に届けていました。説明会では、この化粧品によって多くの方々が助けられ喜んでいるという沢山のお声を紹介。なかでも、どんな化粧品を使用しても肌トラブルが解消されなかったのに、ファンケルの無添加製品は安心して毎日使っていますというお声には、まだ会社に入社もしていないのに胸が熱くなりました(笑)。池森は、「自分の会社は化粧品に限らず“不”の解消をしている会社です。みんなで、一緒に“不”の解消をしていこう!」と私たちに語り掛けました。それを聞いた私は、なんていい会社なんだ! って思ったんです。お給料をもらいながら世のため人のために何かできる。単純ですよね(笑)。でも本当にそう思ったんです。

――入社後は、開発や販売企画業務、そして人事部での採用、企画、労務などの社内での様々な経験を経て、現在のファンケル大学学長というお立場になられましたが、最初に“学長”というお話を聞き、どう感じられましたか?

最初聞いたときは、正直、私に務まるのだろうかという不安がよぎりました……。しかし、反面、ワクワクしている自分もいたんです。前任の学長が本当に素敵な方で、私自身、強く影響を受けていると感じます。その方が、「淑子、こうだよ、ああだよ」って、本当に丁寧に色々と指導・指南してくれたんです。ワクワク感も感じられたのは、前学長が職務を楽しんでやっていらっしゃったのを間近に見ていたからだと思います。

――前学長からいただいた助言で、今も心がけていることはありますか?

職務のことはもちろんたくさんの助言をいただきましたが、心がけの面でも、色々あります。一つだけ挙げるならば、「人前に立つことが多いお仕事だからきちんとした格好で」など、セルフプロデュースの大切さを教わりました。仕事柄ジャケット着用をする場面が多いのですが、紺や黒では顔色も印象も少しトーンダウンしてしまう。なので、常にジャケットは明るい色を選び着用しています。我が家の私のクローゼットには明るい色のジャケットがずらっと並んでいます。

装いだけでなく、ペンや小物類も使い捨てのボールペンなどは使用しないようにとアドバイスをいただきました。そんな中で、私なりの小物のこだわりは“赤い小物”を持つこと。革製のペンケースから携帯、そして手帳も全て“赤”で統一しています。

――入社後すぐに入られた部署は?

研修期間を経て、店舗の営業本部に配属され、半年間は売り場に立ちました。そこで直接聞こえてくる愛用者の皆様のお声。商品自体が敏感肌の方でも安心してお使いいただけるものだったので、「良くなったわ、本当にありがとう」とか「これじゃないと駄目なの」と言ってくださる方が多く……。接客していても、感謝されるんです。直接そういうお声が聞けることが本当に嬉しく幸せでした。目に見えて綺麗になってくると本当に嬉しいんですよね。

――今年で入社26年目の田中さんですが、会社の規模は勿論のこと、会社のカラーや働き方などの“変化”は感じられますか?

元々は通信販売から始まった会社ですが、入社後は直営店舗も少しずつ立ち上がっていきました。その当時、私は直営店舗の開発部隊で、日本全国にお店を広げていく最前線のところを担当していました。お店を出したら出したところで、「待ってたのよ~」と、お客様が言ってくださるんです。人様から喜ばれる、そんないい環境で、やりがいもある。その喜びを間近で感じることができて……本当に素晴らしい経験でした。

――働き方に関してはいかがですか?

店舗立ち上げの時などは、ものすごく忙しかったです。新入社員2年目頃でしょうか、「業務時間外だけど、これから打ち合わせするよ~」なんてことも。今は勿論NGですけどね。会社の規模が大きくなるにつれ、様々なことが整備され、理解も促進されていきました。

――変化の流れには柔軟に対応できましたか?

従業員の立場としては、良い世の中の風潮だなって感じていました。私自身のライフイベント、結婚や出産もあり、働きやすくなってきたという実感もありました。私は産前産後と育児休暇は取得しました。もう20年位前ですね。元々女性が多い会社なので、当たり前のように、このような制度は社内でしっかりと活用されていました。他の企業さんですと、未だになかなかまだ活用が難しいという様子をお伺いしますが、当社では創業当初からきちんとした制度が存在し、産休育休などは取得するのが普通だったので、何か改めて聞かれると、何で? いまさら? みたいな感覚になります。

――他社さんでは制度はあるけれど、周りの感覚がついていっておらず取りにくいという声が聞こえることも……。そんなこともあまりありませんでしたか?

ないですね。入社当時から男性社員もそれが当たり前っていう風土になっているので、もしあるとしたら、転職で入社されたメンバーにはあるかもしれないです。私の入社当時は本社が横浜市栄区にあり、最寄り駅のJR大船駅から離れていたので、シャトルバスが運行していました。入社後、毎朝そのバスを利用していましたが、そのバスに、小さいお子さんを連れて乗ってくるお母さん社員が多くいました。本社の近くに社内保育園があったので、そこに通わせるお子さんを連れてバスに同乗していたんです。なので、子育てをしながら働く女性が身近にいることは、入社の時から当たり前の環境でした。この「当たり前」にしてくださった先人の社員の皆さんには、本当に感謝しています(現在は本社移転のため、保育園はありません)。

――20年以上前に、既に子育てをする女性達の働く環境がかなり整備されていたんですね!

弊社の女性社員が育児と仕事の両立が難しいから、辞めざるを得ないとなったら……それこそ、まさに、企業に対して女性社員の“不”ですよね。それを解消しようというのが当社の企業理念なんです。働きたい女性が出産のことで仕事を断念したりすることなく、仕事に対しての不満や不安を解消するために社内保育園を作ったり。女性の働き方に対してはかなり先駆け的だったのではないでしょうか。

――働くママに対する制度は整備されている中で、産後、お子さんを持ってから、記憶に残っている大変だったことはありますか?

仕事復帰して、周りがすごく配慮してくれる分、仕事はしっかりしなきゃという風に逆に思うので、もう必死でしたね。

――旦那様の協力はいかがでしたか?

ありましたね。食事作り以外は基本何でもやってくれました。PTAや行事も出てくれました。時短勤務をさせてもらっていた時、その時間内に終わらないなんてこともあったので、その場合のルール決めを主人としたんです。それは、週に2回は、“猛残業デー”を設定したんです。猛残業デー(笑)。猛烈に仕事する日です(笑)。そのときは悪いけど、まとめてやらしてって。残りの3日はもちろん早く帰って家事や育児をする。そのルールって主人と決めたものなので、会社のメンバーからしたら勝手なわけじゃないですか。でもそれを周りのメンバーが、「そうなのね」っていう風に理解してくれたのが良かったし、ありがたく感じます。

気づいたら集まっていたガラス製のおちょこ。これはほんの一部なんです(笑)。お気に入りのグラスで飲むお酒は最高なんですよね~。

――子育ては少し落ち着いてきたものの、まだまだ忙しい毎日を過ごす田中さんの癒しの時間とは?

私の至福の時間は帰宅後の夕食の準備をしながらの晩酌タイム。お気に入りのガラスのおちょこで美味しいお酒を飲むのが大好きなんです。

――大切にしている言葉はありますか?

「感謝」ですね。1人では何もできないし、できなかった。先輩や先人、色々な方があっての、今であり、これからだし。その気持ちや意識がないと、人はついてきてくれないと思いますし、切り開いていくこともできない。

――今後のご自身の展望ややりたいこと、目標などありましたら教えてください。

今、会社はグローバル展開しようということで動いているんです。先ほど理念の話をしましたが、私、本当にファンケルという会社が好きなんです(笑)。その大好きな会社をもっと広げていきたい! そうしたときに、やっぱり理念に共感する人じゃないと仲間になれないと思っています。理解を広げるべく、グローバルで理念を語り、集ってもらえるようにしたい。そのためには語学を学びたいんです。TOEICを定期的に受験し、自分の力を確認しています。しつこいのですが、私、本当に会社が好きなんです(笑)。会社がグローバルに広がり、たくさんお客様に喜んでもらいたいですし、ファンケルで働く幸せな社員を増やしていきたい! 今でも、あのとき、会社説明会に行って本当に良かったな~って思います(笑)。

撮影/BOCO 取材/上原亜希子

おすすめ記事はこちら

3Mジャパン社長・宮崎裕子さん~40代はまず「選択」をして、その選択を自分で正解にしていくこと~

NTTデータ部長・黒崎佳子さん~10年目まではとことん働く!と決めていました~

”アラ還”でもいつもステキな君島十和子さんが欠かせない「元気の素」とは?

STORY