真矢ミキさん・還暦を迎えた今話せる裏話「44歳で結婚しましたが、実は…」

宝塚歌劇団の花組トップスターからテレビや映画の世界に転身した真矢ミキさん。女性が選ぶ「理想の上司」や「カッコいい女性」のアンケートでは上位の常連。明るく華やかなイメージがありますが、実はうつ病に苦しんだ時期があったとか。それを乗り越え、今に至るまでの道のりをうかがいました。

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還暦を迎えた今、周囲からの若さへの期待がなくなり見た目の美しさが一番ではなくなってラクになりました

お話を伺ったのは…俳優・真矢ミキさん(60歳)

《Profile》まや・みき
’64年生まれ。大阪府出身。’81年宝塚歌劇団入団。’95年花組トップスター就任。以降、写真集や 武道館コンサートを成功させるなど、「宝塚の革命児」と呼ばれた。’98年に退団後、テレビ、映画、舞台など幅広い分野で活躍。 本年は、ドラマ「TOKYO VICE Season2」(WOWOW)、「ブルーモーメント」(フジテレビ系)、 映画『九十歳。何がめでたい』など話題作に出演 。エッセイ『いつも心にケセラセラ』(産業編集センター)も好評発売中。映画『室井慎次 敗れざる者』(10月11日)、『室井慎次 生き続ける者』(11月15日)、『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(11月22日)の公開が控える。

退団後精神的に不安定に。転機は映画『踊る大捜査線』

子どもの頃は、父の仕事の転勤が多く、中学生になるまで広島、福岡、神奈川など7~8カ所を1~2年ペースで引っ越しました。小学校5年生から関西に住み、沿線終点が宝塚。当時、舞台『ベルサイユのばら』が大ヒット中で、演劇好きな母と観に行きましたが、実はそんなにハマらなかったんです。

ずっと男女共学で、女性が女性に憧れる気持ちが理解できなくて。でも、母の何気ない「受けてみたら」のひと言で、母を喜ばせることができるなら挑戦しようと。それで、宝塚音楽学校主催の声楽・バレエ・日本舞踊のレッスンを行う日曜教室「宝塚コドモアテネ」に入会しましたが、ずる休みばかり。

ダメもとでの受験でしたが、なぜか合格。40人中37番で、私は相当レベルが低いと受け入れ、1年間は、洋舞・日舞・和楽器演奏・ピアノ声楽・演劇を死ぬ気で頑張りました。

それでも翌年22番。15人抜きしたけどショックで。それからは才能がないピアノは捨て、得意分野と自分の魅力を探す方向に転換。カッコつけて拳銃を回す練習をしたり、マジックを習いに行ったり。形から入りました。異端児と言われつつも、それが功を奏したのか入団3年目で初主演、31歳で花組トップスター、34歳で退団するまで約20年間宝塚に在籍しました。

退団の理由は、芝居を追求するために映像中心の俳優になりたい、大学にも行きたい、と。ファンのみなさんにも「下級生を応援してあげてください。私をこれからも応援したいと思ってくださるなら喜んで」などと言い、巨大になっていたファンクラブを解散。俳優の世界に足を踏み入れました。

でも、思うように自分を発揮できないんです。たまに仕事をいただくと緊張して、自分にプレッシャーをかけてしまう。歯車は回っているけど嚙み合ってないから前進できない状況が続きました。

渦中では気づきませんでしたが、後にうつ病をテーマにしたラジオ番組を聞いたとき、当時はうつ病だったのだとわかりました。人に迷惑をかけてはいけないとばかり考えて、人に会うのが辛く、余裕もないから疲れちゃう。気力がなく、インドアになり、ほぼベッドで過ごす日々。

突然の出来事で、元来ポジティブなのに信じ難かったですね。2年半ほど引きこもりの状態でしたが、唯一イギリス人の女性の先生を家にお招きし、英語を教えてもらっていました。私が何者かを知らない先生と触れていると心が晴れるんです。気持ちが楽になり少しずつ回復していきました。

今でも夫には飽きないし仲良し夫婦です

そんななか、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の沖田仁美役のオーディションに合格。38歳のときでした。大きなチャンスをいただけるタイミングがまだあるんだと嬉しかったですね。しかも、それまでハマらなかった歯車がかちっとハマったのです。

今思うと、当時は夢を失くし、目指すべき場所を見失っていたんだと思います。人は目指したい点を線で引いて辿っていくでしょ。それがわからなくなったんです。どんな勉強をし、何を磨けばいいかという点を描かずに退団し、漫然と俳優の道を歩き出してしまったんです。強い自分も知っているけど、弱い自分も知っている。いい経験だったと思います。

40代は覚えていないくらい目まぐるしくて、いろいろな役をやらせてもらって忙しかったですね。プライベートでも44歳のとき、バレエダンサーであり俳優の夫(西島数博さん)と結婚しました。舞台で共演する1年半前、夜中のトーク番組で彼の存在を知りました。

テレビという意識がまったくなく、女性アナと真剣にトークする姿に好感を持ちました。そして偶然にも共演することになると、想像を超える人。根無し草のようにおもしろくて楽しいけど、いい意味で地に足がついていない、シャガールの絵の中で浮遊しているような人でした。既成概念も気にしないので、結婚するまで堅い儀式はなし。しっかりしたプロポーズもなかったと思います。

今でも彼には飽きないし、仲良し夫婦だと思います。お互い相手を自分の所有物とは思ってないからかな。「うちの人がさ」というような感覚は全然なくて、今も「西島さん」と呼んでいます(笑)。彼も「妻」とは言いますが、「奥さん」とは言わないですね。

結婚したときは「男子厨房に入らず」みたいな人でしたが、コロナ禍ですっかり変わり、料理の楽しみを知ったみたい。台本が積み上がっていると何となく作り出します。おもしろいのが、夫も私も食べたいものを自分の分だけ作って、それぞれ食べていたりすることも。

私たち、大人同士の結婚でしょ?家族を持つってこういうことなのかと思うほど。彼はバレエ団育ち、私は劇団育ちで交際範囲も広く、友人が倍に増えました。結婚は個人と個人の世界だと思っていたので、こんなに広がるものなのかとびっくり。入口から胸襟を開いてくださる人のところに入って行くのは楽しいものです。人生って想像をはるかに超えることが起こる。とてもハッピーです。

周囲の方が心地いいと感じてくれる存在になりたい

今年還暦になりました。還暦、すごくいいと思っています。周囲が見た目の若さに期待していない感があってラク。今まで何に苦しめられてきたのかと考えると、自分ではなく人の年齢に対する概念だと思いました。頑張って走らなきゃと常に思っていましたが、抗いはもう必要ないでしょと思うの。

それは妥協ではなく、美の部分が一番でない年代になったってことです。どの年代も美しさと心の成長が同居しています。自分の持っているものが100%として、10代は95%が美しさで、心がなかなか追いつかないところから変化し続けて、きっと40代は五分五分。そこから美や心を超えて、周囲が心地いいと感じてくれる存在になるのが還暦という後半戦なのかなと思います。その人が生きてきたトータルなのかな。

私が追いたい本当に美しい人って、自分の軸を持った覚悟があり、誰よりも笑顔が多い方。今回映画『九十歳。何がめでたい』でご一緒した女優の草笛光子さんはまさにそう。自分をお持ちで、ぶれないカッコいい方。

デザイナーのコシノジュンコさんは、いざみんなで写真を撮るとき、今まであんなに優しかったのに、強面の表情でひとりだけぐっと前に出られるの。今はみんなが後ろに下がって小顔になる時代じゃない?逆行されてるんです。流行に飲まれない斬新さに脱帽しました。

宝塚時代からずっと憧れ続けている先輩の大地真央さんのお肌の美しさはマイセンの磁器かと思いました。でもそれだけでなく、心が柔軟で人を許す気持ちが強い、器の大きい方。いつも勉強させてもらっています。私は探求心が常にあって、暇だと思ったことがありません。来年は数カ月の留学を予定しています。違う空気に触れることはすごく意味のあることだから。

昨年からは登山に挑戦。宝塚の同期が誘ってくれたのがきっかけで自然の中を歩く心地よさに目覚めました。ひとり旅も始め、先日は茨城県の袋田の滝に行ってきました。人生の中のたった数時間かもしれないけれど、どの瞬間も良い時間だったなあと感じられる時間を多く持っていきたいです。

40代のころの私

44歳で結婚するも、「結婚しまーす」みたいに騒ぎ立てたくなかった。指輪を見せるように左手を顔の近くに当ててカメラにおさまる行為もしたくないと事務所の社長に頼み、「指輪のサイズが合わず、ネックレスにリングを通しています」と噓をついて、瞬間だけお見せしました。今初めて告白します(笑)。

真矢さんが40代に伝えたいこと

40代は心も技術も知識も得て、まだまだ美しく、あなたが思っているよりずっと若いです。50代や60代が待っていると想像して過ごすのではなく、創造力を持って各年代を冒険できたら幸せな人生なのではないでしょうか。

《衣装クレジット》
ジレ¥66,000 パンツ¥63,800(ともにサポート サーフェス)イヤリング¥154,000(キノシタパール)ネックレス¥880,000 指輪¥880,000(ともにケイテン)バングル¥1,210,000(アレッサンドラ ドナ/ラパール ドリエント)インナー、靴/ともにスタイリスト私物

2024年『美ST』8月号掲載
撮影/中村和孝 ヘア・メイク/平 笑美子 スタイリスト/佐々木敦子 取材・文/安田真里 再構成/Bravoworks,Inc.

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