「自分にも人にも偽りなく生きること。最初から何も隠さないと決めました」【元宝塚スター】が卒業までを語る
退団後もさまざまなフィールドで活躍し、輝き続ける宝塚OG。今回は「宝塚屈指の歌姫」として名を馳せた元雪組娘役トップ、真彩希帆(まあや きほ)さんが登場!中学校3年以来のショートヘアにした真彩さんの新境地を伺いました。
▼あわせて読みたい
元雪組娘役トップ・真彩希帆さんの宝塚流ナチュラルメークのポイントは?
迷ったら楽しいほうを選ぶ。自分にも他の人にも偽りなく
ワンピース¥55,000(ミオズモーキー/エストネーション)靴¥192,500(セルジオ ロッシ/セルジオ ロッシ カスタマーサービス)イヤリング¥4,860(アビステ)
《Profile》 埼玉県出身。7月7日生まれ。小学校4年で宝塚初観劇。1度目は男役、2度目は娘役として受験し合格。2012年に98期生として入団、花組に配属。その後、星組、雪組と組替えを経て2017年雪組トップ娘役に就任。確かな歌唱力と繊細な演技力で、往年の名作からコメディ作品まで幅広く役をこなす。2021年に退団後も数々の名作にヒロインとして出演の他、ディナーショー、ライブと多岐にわたって活躍を続けている。
──ショートヘアが新鮮です!
私、髪が多いんですよ。今年2月、ミュージカル『ジキル&ハイド』の稽古中に頭に靄がかかった感じが続いて、頭が重いせいかも、と思い立ってバッサリ。そしたら思考がすっごくクリアになってやりたいことが明確になりました。本来の自分に戻るプロセスだったのかもしれません。 少女っぽいところ、少年っぽいところの両面があり、人生を選択するときは男の子のアグレッシブなエネルギーが強く出るのですが、退団してしばらくは女の子らしさを楽しもうかなと思い髪を伸ばしたんです。でももう2年たったし、髪型も少年の頃のような自分に戻ってみようかなと。
──宝塚娘役トップ時代とは違う解放感がありますか?
もともと誰かを支えることが大好きなのですが、在団中は相手役さんと対立するような芯の強い女性の役が多く、最初は悩みましたね。退団してからは「誰かのためではなく自分のために楽しんで生きる真彩希帆を見たい」と言ってくださるファンの方が多く、今はイキイキと生きることが元気を届ける最良の道かなと感じています。
──宝塚で培われたもの、また卒業して変わったことは?
〝真摯に役と向き合う〟モットーは変わらないですね。ただ、舞台は決まり事が沢山あります。そして宝塚の娘役にはさらに別の枠がある。セリフの言い回し、歌い方、声のボリュームなど。一役者として役と向き合い演出家の方と話し合う中で生まれたアイデアがあっても「娘役がすることではない」と言われ、真っ直ぐに役を突き詰めることを許されない場合も多くあり、匙加減に悩みました。けれど伝統も大事にしつつ、〝娘役〟として求められる姿を学び、さまざまな表現を身につけられたことは本当に貴重な経験です。
──次の『ファントム』では新たなクリスティーヌが見られますね
演出の城田さんが自然体を求める方とお聞きしましたので、宝塚で演じたクリスティーヌとはまた違った印象になりそうです。歌が変化していく様子を、さらにヴィヴィッドに表現できたら。
──今、歌やお芝居を通して伝えたいことはなんですか?
大事にしているのは、その役が歌を通して何を伝えたいのかを丁寧に考えること。歌やセリフを役から預かっている感覚ですね。闘病中の方から舞台を見て救われたというお手紙をいただくこともあります。私の歌声や演じる姿が誰かの心のともしびになっているのであればうれしいです。
──最後に、真彩さんにとって美しく生きるとは?
自分にも人にも偽りなく生きること。宝塚で何度か組替えを経験する中で、自分を取り繕ったらボロが出ると気づき、最初から何も隠さないと決めました。よっしゃ!そのままで行こう!と。あまりにからっとしているので、本当は裏があるだろうと言われたことも(笑)。小さい頃、姉に言われた「人生は短いんだから、迷ったら楽しいほうを選びなさい」という印象的な言葉も、生きる指針になっています。
『ファントム』クリスティーヌ役に再挑戦!
小説『オペラ座の怪人』が原作の名作ミュージカル『ファントム』に城田優が主演と同時に演出も手掛け話題となった(2019)新バージョンに、ヒロインのクリスティーヌ役で出演。皆が涙したあの歌声を再び! 東京8/14~9/10(東京国際フォーラム ホールC)
真彩希帆さんからのメッセージ
「自分に偽りなくニュートラルでいることで、感情を明確に感じられるようになり、視野が広がってたくさん吸収できる気がしています。そして〝ご縁を大切に笑顔で朗らかに〟をテーマに生きています!」
2023年『美ST』8月号掲載 撮影/八木 淳(SIGNO)〈人物〉 ヘア・メーク/SHIGE(HK PRODUCTIONS) スタイリスト/久保コウヘイ 取材/稲益智恵子 編集/石原晶子