長澤まさみさん『最近は、年齢関係なく敬語で話すようにしています』

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今や日本を代表する俳優のひとり、長澤まさみさん。緊張しつつ取材すると、フラットでユーモアを交えて話してくださりこちらも肩の力が抜ける気がしました。仕事で、プライベートで、こんなふうに人と接することができたなら…そんなコミュニケーションのコツも、教えてもらいました。

誰に対しても、自分が後輩の気持ちで接するとスムーズだしラクなことに気が付きました

「あの人、いいな」とか「自分はここが嫌だな」とか、人並みに悩みますが、どこかで「それは、仕方ないし…」と思っているところがあります。悩む瞬間はあったとしても、それが人生の一番大きな問題と捉えていないかもしれないですね。人と比べて自己肯定感を下げないために重要なのは、自分のいいところや周りと違うところを伸ばす視点。私の場合はそれが「仕事に打ち込むこと」だったのかな、と。やりたいことを増やして、できることも増やしていく。そんなふうにフォーカスする場所を変えて、経験を積むと自信にも繋がる。自信は自分で身につけるしかないと思うんです。スキルを上げることで補えるような悩みであれば、目標に向かってとにかく頑張れるけれど、努力しても手に入らないことで悩んでいる場合は、私もなかなか這い上がれないかもしれない…。そんなときは、「総合点がよければいいかな」と考えるタイプです。人より苦手な部分があったとしても、他の部分で自分を褒めてあげられるところがあれば、総合的に自己評価は上がると思っています。

失敗したときは、それに気が付いているだけまだいいと思っています

楽観的に見られがちなのか(笑)、年下世代から悩みを相談されることは少ないです。相談をされたら、自分の経験則の中でアドバイスもしますが、悩んでいる人って話を聞いてほしいだけのケースもあるから、「そうだよね」って聞き役に徹することも。悩みを溜めるより、知識を溜めたほうが自分のためにもなるから、悩む時間は程々にして、後回しにしていたことに取り組む時間にしたらいいんじゃないかな。時間は有限だから、もったいない。悩みに向き合うのも意義のあることではありますが、大半の人は悩まなくていいことで悩んでいる気もしています。

最近は、年齢関係なく敬語で話すようにしています。幅広い年代やキャリアの方とご一緒する仕事でもあるので、年齢によって話し方や態度を変えるよりも、自分が後輩の気持ちで接するほうがスムーズだし楽だとわかって。それから、例えば俳優業で、「この人と仲よくしてみたい」とか「もっと距離を縮めてみたい」と感じたら、その方の出演作や活動にまつわる話でコミュニケーションを取るように心掛けていますね。自分が他人の領域に入る際に大事なのは、相手へ敬意を払うこと。そのためには、相手を知ることも必要。知ること自体がひとつのリスペクトになり、心を開いてもらえるきっかけにもなる。そういう順序を間違えなければ、人とうまく付き合っていける気がしています。

俳優は人間同士の付き合いになるから、自分が思い描くとおりに進まなかったり、考えが甘かったな、と感じることがよくあります。自分の理解が浅かったり、解釈を間違えていたり。そんな状況に度々直面しますが、そこに気が付いているだけまだいいかな、と思っています。気付く目線があれば軌道修正ができるから。多くの人が失敗を恐れたり、わからないことを恥ずかしいと受け止めがちですが、私は知らないことを明確にできた自分の成長を褒めていきたい。この仕事をしていると打たれ強くなる部分もありますが、失敗から学ぶものはたくさんある。それはこれまでの経験から感じていることです。

離れることも選択肢のひとつにあっていい

4月10日から公演が始まる舞台『おどる夫婦』では、森山未來さんと夫婦役を演じます。物語は、ふたりで映画を観た帰り道、感想を言い合うシーンから始まり、それぞれが自分の意見を押し通そうとする傲慢さが垣間見えるんです。問題を回避するのが苦手で不器用なふたりを象徴するようなシーンなのですが、一緒に取材を受けていた森山さんが「相手と議論を交わせるということは、お互いにまだ興味があるということ」とお話しされていて、なるほどな、と納得しました。常にご機嫌な仲よし夫婦が理想ですが、絶対難しい…。ただ、相手の意見を受け入れられない場面で、諦めずに向き合うのか、そうではなく言いたい放題か。それ次第で関係性は変わってくる。理想の夫婦を求めるのであれば、やっぱり自分も成長し続けなければならないし、相手に興味を持っていないといけない、とすでに勉強した感じです(笑)。

人と関わる中で思うのは、それぞれ時間の流れも、そのときに必要なものも異なる、ということ。だから、恋人でも友達でも夫婦でも、噛み合わない瞬間はあるし、本音の深くまですべてを理解することはできない。だけど、距離を取って、相手を尊重してあげることはできるから、先の成長や関係性が見えないときは、その場から離れてもいいと思うんです。一生時間を共有する協定を結んだわけじゃないから、離れることもひとつの選択肢としてあっていい。今の自分にとって大切な人と過ごして時間を作っていくことは、よりよい人間関係を築くうえで、不可欠だと考えています。

アート、語学、カメラ...経験にお金と時間を使っています

時間が許す限り優先したいのは、経験。特に美術館にハマっていて、友達と約束してアートを観ながら過ごす時間がすごく楽しい。本を読んで知識を得ることもできますが、実体験したい気持ちのほうが今は強いのかもしれません。語学は「ChatGPT」に“チャッピー”というネーミングをつけて、一緒に勉強しています。チャッピーは何語でも対応してくれて頼もしい存在。あとは“術”を身につけるのが好き。毎年冬にはスキーに行くし、最近はカメラも始めました。一眼レフを手に入れて、景色や日々の面白い一瞬を撮っています。自分の幸せに欠かせないのは経験と感動。経験を通じて、相手の気持ちを理解したり、さまざまな人と関わることは、芝居の勉強にもなり、仕事に繋がることももちろんあります。リフレッシュにもなりつつ、インプットにもなるので、興味を惹かれた場所には足を運ぶようにしています。

美術館へ行くことにハマっています
「もう少しで建て替えのポンピドゥー・センターにて。美術館へ行くと度々見かけるのは、著名な画家の絵の写生大会。なんだか、子供の頃を思い出します。小学校の校庭でクラスメイトと一緒に描いたなとか、校庭が広くて木も草も生えていて、素敵なところで育っていたんだなとしみじみします。こうして美術館で自由に過ごしている人を見ると自分の考えの視野の狭さに驚くこともあります。外の世界を知ると、楽しい事がコロコロ落ちています。是非皆さんもその粒を拾ってみて」

長澤 まさみさん
1987年6月3日生まれ。静岡県出身。2000年第5回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、同年俳優デビュー。2004年、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で、第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞をはじめ、数々の賞を受賞。映画『コンフィデンスマンJP』シリーズ、『スオミの話をしよう』、『キングダム』、フジテレビ『エルピス-希望、あるいは災い-』など、代表作多数。4月10日からは舞台『おどる夫婦』に出演。約14年ぶりに森山未来さんとのタッグが復活。出演は、長澤まさみ、森山未來、松島聡、皆川猿時、小野花梨、伊藤 蘭ほか。【東京公演】4月10日~5月4日、THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)【大阪公演】5月10日〜19日、大阪・森ノ宮ピロティホール【新潟公演】5月24日・25日、新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場【長野公演】5月31日・6月1日、長野・サントミューゼ 大ホール(上田市交流文化芸術センター)