英仏を代表するスターダンサーたち夢の競演【王子様の推しドコロ】vol.23 マシュー・ボールさん&アントワーヌ・キルシェールさん

イギリスとフランスを代表する2つの名門バレエ団の才能あふれるダンサーたちを、真夏の東京で一気に見られるという贅沢なガラ公演『バレエ・スプリーム』。それぞれの注目ダンサーをおひとりずつご紹介します。推しドコロをチェックしてみてください!

Matthew Ball

PROFILE

Matthew Ball/1993年、イギリス・リヴァプール生まれ。ダンス教師の母と芸術分野に携わる父のもと、6歳でダンスを始め、11歳で英国ロイヤル・バレエ学校に入学。2013年の卒業後は「英国ロイヤル・バレエ団」に入団、すぐに頭角を現し瞬く間に昇進。2017年にはファースト・ソリストに。転機が訪れたのは2018年3月。『ジゼル』にて1幕で負傷したスターダンサー、デイヴィッド・ホールバーグの代役として2幕から登場。見事に踊り切り大喝采を浴び、同年7月に最高位であるプリンシパルに。近年はカンパニーの映画配信「英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ」での主役を飾ることが多い、団を代表する押しも押されぬ人気ダンサー。

すらりと舞台映えする長身、アイドルのような甘いビジュアル、観客を惹きつける“華”とダイナミックな“テクニック”は、マシュー・ボールさんの代名詞。ドラマティックな演劇バレエの本拠地である英国ロイヤル・バレエ団らしい演技力もさらに磨かれ、踊るたびに新たな魅力を振りまく唯一無二な存在です。

一期一会の瞬間を逃さず、グローバルなダンサーへと成長

英国ロイヤル・バレエ団『ジゼル』より Photo: Helen Maybanks

26歳という若さでプリンシパルになったボールさんですが、その華麗な経歴は、あらゆるチャンスを最大限に生かしていくアグレッシブな姿勢真摯な努力からなるもの。突然チャンスが巡ってきた主役代役では、大先輩の相手役、一度しか踊ったことがなかったという役へのプレッシャーにも負けず大絶賛される結果を残し、プリンシパルに昇格。その地位に甘んじることなく「常にやりたいという強い思いがあった」という『マシュー・ボーンの「白鳥の湖」』(男性だけの『白鳥の湖』として有名な、伝説的人気を誇る鬼才マシュー・ボーン氏率いるニュー・アドベンチャーズの演目)で主役を踊る32回公演のために、カンパニーを休団したことも。来日公演もあり日本のバレエファンも魅了し、確固たる地位を築き、若き“スターダンサー”になりました。今年で32歳。肉体的にも表現者としてもピークを迎え、今やカンパニーを代表する世界的にも有名な人気ダンサーです。

Antoine Kirscher

Photo: Mary Brown

PROFILE

1995年、フランス・リール生まれ。バレエ教師の母のもとで7歳からバレエを始める。地元のバレエ学校で学んだ後、2006年にパリ・オペラ座バレエ学校に入学し、2013年にパリ・オペラ座バレエ団に入団。順調に昇進を重ね、2023年にはプルミエ・ダンスールに。コンテンポラリー作品への出演が多いが、クラシック全幕でも経験を重ねている、期待を集めるダンスノーブル。公式Instagram @antoine_kirscher

作品によってがらりと変わる演技力、そして音楽性に富み、猫足着地の軽やかなジャンプ……。オペラ座のダンサーの中では小柄ながら、類いまれなる表現力で注目を集めるダンサー、アントワーヌ・キルシェールさん。

ベジャール『火の鳥』より Photo: Julien Benhamou

2019年には、パリ・オペラ座バレエ団の将来有望な24歳以下のダンサーに贈られる「カルポー賞」を受賞し、クラシック演目はもちろんのこと、新進気鋭の振付家の新作での大活躍は目を見張る存在です。キルシェールさんの憧れは、パリ・オペラ座バレエ団で芸術監督も務めた伝説のダンサー、ルドルフ・ヌレエフ氏。今回の公演では、パリ・オペラ座らしさを体現する伸びやかで美しいつま先キレのある足さばきがいかんなく発揮される『ラ・バヤデール』のブロンズ像のソロ、『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』を踊る予定。超絶技巧の中にも若々しさと気品を織り交ぜた彼独自のパフォーマンスに期待が高まります。

マシュー・ボールさん、アントワーヌ・キルシェールさんの姿が見られるのは……『バレエ・スプリーム』(2025年8月1日~11日)

名門バレエ団として名高い「パリ・オペラ座バレエ団」と「英国ロイヤル・バレエ団」。この2大バレエ団で活躍するスターダンサーたちが集い競演するガラ公演『バレエ・スプリーム』。“最上”を意味するスプリームの名のとおり、ダンサーたちがそれぞれのカンパニーを背負い、誇りをかけて踊る本公演は、バレエ界の現在、そして未来の最上の才能を体感できる公演です。また、特別出演としてパリ・オペラ座バレエチームには、イタリアの至宝と呼ばれるスターダンサー、ロベルト・ボッレ氏も出演が決定。英国ロイヤル・バレエ団のダンサーが出演する「Aプロ」(8月1日~3日)、英国ロイヤル・バレエ団とパリ・オペラ座バレエ団の両ダンサーが出演する「Bプロ」(8月5日~7日)、パリ・オペラ座のダンサーが出演する「Cプロ」(8月9日~11日)と贅沢なラインナップ。マシュー・ボールさんはAプロとBプロ。アントワーヌ・キルシェールさんはBプロとCプロに出演予定です。すべて東京文化会館での公演。詳しくは公式HPをご確認ください。

取材・文/味澤彩子