「婚活パーティの年齢制限」Over40こじらせ男子の婚活奮闘記|『サバイバル・ウェディング』著者が婚活【第4回】
連続ドラマの原作となった小説『サバイバル・ウエディング』の著者が、婚活してみたら…。
Over40こじらせ男子の奮闘記をお届けします。
婚活パーティに 行ってきました
前回、結婚相談所で「変わらなければならない」とアドバイスをされた僕ですが、もしかしたら、この広い世界には、こじらせた「ありのままの僕」を受け入れてくれる人がいるかもしれません。
というわけで、今回は出会いを求めて婚活パーティに行くことにしました。さっそくネットで検索すると、たくさんのサービスがヒットします。しかしながら、どのイベントにも年齢制限が書いてあり、そのほとんどが、「男性:39歳まで」となっていて、年齢のテキストボックスに「42」という数字を入力するとヒットするのは「子持ちOK。再婚限定パーティ」です。 婚活パーティにすら参加できない歳になっていたことに愕然とする僕。深夜2時、近所のサイゼリヤで探しまくっていると、やっと見つけました。42歳までなら参加可能なパーティを。あと5カ月遅かったら、参加できません。
そのパーティは「エグゼクティブ限定 年収700万円以上」と書いてあります。今年の年収はおそらく300万ですが、去年は奇跡的に700万を超えたのでこちらに参加することにしました。
当日、面識のない女性と話さなければいけないと考えると、不安になり出発前に150円の氷結(ストロング)を飲み干します。この時点でまったくエグゼクティブではありません。しかも、冬に急に冷たいものを飲んだのでお腹が痛くなり、途中でトイレに行きたくなったらどうしよう…と別の不安を抱きながら会場に向かいます。
ホームページにはシャンパングラスを持った男女の写真が載っていて、キラキラした男女と出会うようなイメージをしておりましたが、会場には、塾の自習室のようなブースが並んでいて、エグゼクティブ感は全くありません(ラーメン屋の一蘭を想像してもらうと近いかもしれません)。そして、年収や職業を書く自己紹介シートを渡されるのですが、こっそり隣の男性のシートを見ると、職業の欄に「医者」とか書いてあります。
そうだった…。会場は一蘭風でも、このパーティはエグゼクティブだった‼
僕の職業は安定からほど遠い「作家」です。いかに魅力的な職業かを伝えて、医者と差別化しなければなりません。すでに女性はブースに座っていて、あいさつをして会が始まります。最初の相手は30歳の看護師さんで、お綺麗な方でした。「お仕事は作家さんですか?」と、さっそく職業について聞かれます。
「そうなんです。本が好きで、休みの日も読書をしております」
「どんな本を読むんですか」
「やはり漱石ですかね…」
「夏目漱石ですか?」
「そうです。漱石といえば『こころ』や『坊っちゃん』が有名ですが翻訳もしていて、『I love you.』を『月が綺麗ですね』と訳したんです(略)」
「は、はあ…」
「それに対し二葉亭四迷は『死んでもいい』と訳して…(略)」
「…」
「また、太宰治は小説家である森鷗外の娘から『女より女の気持ちがわかる』と言われるほどで、実際、太宰は女性からとてもモテたようです」(※すべてネット調べ)
「…」
「(俺の作家トークが決まった…)」
そう思った瞬間、係の人に「時間でーす。それでは男性の方、次のテーブルにご移動くださいー」と移動を命じられたのです。ちょっと待ってくれ。用意してきた芥川とドストエフスキーの話ができないじゃないか。と、こんな感じで、たった数分で回転ずしのように次から次へとブースをまわって一日で何人も話します。
これは疲れますわ…。婚活パーティってもっと楽しいものだと思っていました。だってパーティですもん。そもそも出会いって楽しいものじゃないですか。
それが年齢を重ね、目的が結婚となると、いつの間にか、苦行になっていました。漱石先生、僕は結婚という制度にふりまわされています。
この記事を書いたのは「大橋弘祐」
大橋弘祐(おおはしこうすけ)
作家、編集者。 立教大学理学部卒業後、大手通信会社を経て現職に転身。初小説『サバイバル・ウェディング』が連続ドラマ化。
『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』はシリーズ40万部を超えるベストセラーに。
撮影/小田駿一