神山まりあエッセイ⑥「僕のタオタオ」
VERYモデル神山まりあさんによるエッセイ「笑うママには福来る。」。2019年2月号からスタートした連載がウェブでも読めるようになりました!
生まれた時からなぜかディーンのお気に入り。
ピンクの長方形の手拭きタオル。
ディーンは生まれた時からこのタオルがお気に入り。
不安な時や、泣いた時、眠い時、嬉しい時は必ずタオルをぎゅっと抱きしめています。
そのピンクのタオルは通称「タオタオ」。
お出かけや学校にタオルを忘れると大事件。
どんなに目的地の目の前でも一度Uターンをして引き返し、
取りに戻らないと大変なことになるレベル。
「タオタオー!!!!」と泣き叫び、タオルを握るまで永遠に求め続けるんです。
このタオルに何の魔法がかかっているんだろう。
私も小さい頃、「ねんね」と名付けたタオルケットをずっと握っていたそう。
何となーく覚えてる「ねんね」の存在。
確か黄色くてフワフワしていて、それに包まれてると安心した記憶がある。
ディーンにとってもタオタオってそんな存在なのかな。
この子がタオタオに出会ったのは生まれてすぐ。
ミルクを飲ませた後に、げっぷをさせるのにちょうどいい大きさのタオル。
何と言っても当時はこのタオルが12枚も我が家にあったのが魅力的でした。
げっぷをさせようと肩にこのタオルを置いて
背中をトントンしているとそのまま寝てしまうディーン。
それがいつしか、そのタオルが顔まわりにないと寝られないようになってきたんです。
成長する中で、どの写真にも写り込むタオタオ。
結婚式にも、学校の写真にも、公園にも、海外にも、タオタオの存在は欠かせません。
何かに集中している時はタオルの存在を忘れるので、
綺麗なタオルとするっと交換して汚い方をお洗濯。
どうやらディーンはこのタオルの香りを嗅ぐと安心するよう。
我が家の洗濯の香りと柔軟剤の香りがほっとするみたい。
うちの香りがいいなんて、可愛いじゃないか♥
しかし最近、
タオル好きがちょっと危ない方向に進んでいます。
変態性が出てきたのはご飯の時間。
タオタオが愛おしすぎて、タオルをひと嗅ぎしてからご飯を一口食べる
…という変な癖が出てきてしまった。
それはまるで、ワインとご飯のマリアージュを楽しむかのように、
タオルと納豆ご飯のマリアージュを嗅覚と味覚で楽しんでいるのです。
タオルから納豆の糸がフワフワと漂う。
そんなことお構いなしに深呼吸のように深くスウウウッともう一度ひと嗅ぎ。
柔軟剤と納豆が混じると味に深みが出るんでしょうか。
満足げな顔で食事を楽しむ息子はまるで優雅なセレブのよう。
そんな我が家にピンチが訪れました。
12枚あったタオルが、今2枚しかないのです。
1枚のタオルを引きずり続けるという恐怖が現実となりつつあります。
アマゾンで同じものを頼もうとしても、どこにもない。
同じ色、同じ形、同じ感触じゃないとダメなんです。
今は2枚のタオタオを順番に洗って使い、なんとか過ごしています。
一枚もなくなった時のことを想像すると恐ろしい。
これを良いタイミングとしてタオル離れをさせようか。
最後の一枚に辛子でも塗るか。
いや、くっさいスプレーでもふりかけるか。
断乳じゃないんだから、ほっときゃタオル離れするよ。
とママ友にアドバイスをもらったものの、
我が家はご飯のお供にするくらいのタオルフリークなんだ!とは言えず。
困った私は、子育ての大先輩である母に相談してみました。
ディーンのタオル好きが激しくなっているのに、タオルの数があと2枚しかない、と。
すると母が怒って一言。
「あなたね、あのタオルずっと持たせるのやめなさい!
独身の時からずっとトイレのお手拭きタオルに使っていたもの
でしょ! トイレのタオルなんて嗅ぎながらご飯食べさせるん
じゃない!!!!!」
知る人ぞ知る、ディーンのタオタオ出生の秘密。
だから12枚もあったなんて言えない。
可愛いピンクのタオルだね、
と周りに言われるたびに心の中で
「トイレのお手拭きタオル…」
と思っていた私。
ディーンが気に入ってるから、まあいっか!
本人は今日も食事と共にマリアージュを楽しんでいます。
【PROFILE】かみやま・まりあ 1987年2月17日生まれ。2011年ミス・ユニバース ジャパングランプリ。2015年結婚、2016年男児出産。インスタグラム@mariakamiyamaも大人気。2018年9月に初めての書籍『神山まりあのガハハ育児語録』(光文社)を刊行。
撮影/イマキイレカオリ ヘア・メーク/TOMIE〈nude.〉 イラスト/natsu yamaguchi 編集/湯本紘子
※VERY2019年7月号「神山まりあの笑うママには福来る。」より。
※掲載の内容は発売当時のものです。