日本では痴漢が野放しになっているのはなぜ?|SHELLYのこれってママギャップ?
Change.orgのサイトでこの間、「法務大臣へ、性犯罪における法改正を求めます。」というキャンペーンに賛同しました。海外では明らかに有罪となるような性犯罪で、無罪が続いている日本の現実がありますよね。「誘うような服を着て、隙があった」「そんなに酒を飲むのが悪い」とレイプの被害者が叩かれたりもします。
でも本来、「不同意」のみでレイプと認められるべきだと思うんです。酩酊していてNOと言えないなら、それは不同意。日本ではなぜかレイプという言葉を使いたがらないけど、「カラオケで先輩に酔わされて、気づいたらセックスしちゃってた」というのも立派なレイプ。性的同意がないんだから。それに性的同意は両方向のもので女性だけが出すものではないですよね。男の子はレイプされたときに被害者だと思われなくて、「セックスできてよかったじゃん」となったりする。そうしたことがごく当たり前のように語られることに危機感を覚えます。これも、小さなうちから気を付けていくべきなんですよね。
例えば小さな子ども同士でも、一方がハグを求めてきたとき、もう一方に「ハグしてあげなよ」などと親が促すのはダメですよね。キスもハグも、性的同意がなければしてはいけないからです。幼いうちからそんな大げさな、と思わずに徹底したほうが、子どもたちのためになるはず。
性的同意年齢に関しても、日本は「13歳以上」ととても低い。13歳って、どう考えても子どもですよね?13歳以上と決められたのは明治時代。明治・大正・昭和・平成、今は令和ですよ。もし私の娘がレイプされて、私が加害者をボコボコにしたとしたら、アメリカなら世論としては「わかる、そりゃ当然だ」と同情的になるんじゃないかと思います。もちろん暴力は悪いけれど、子どもを犯すような人は社会的に一番底辺の人間とみなされていて、児童性虐待者が刑務所に入った場合、刑務所内で一番下に扱われることが多いとアメリカではよく聞きます。でも日本だと、〝ロリコン〞という言葉の陰に隠れて性的加害者が割と堂々としていられる風潮があるじゃないですか。「かわいい」文化に紛れて、子どもへの性的虐待が正当化されている気がしてならない。
12歳のグラビアだとか、キッズモデルの抱っこ会(!!)とか、正直あり得ないと思う。最近アメリカでは、ハロウィンなどで学生服のセクシーなコスチューム=セクシースクールガールをやめようという運動がありました。学生服は子どもである象徴なのだから、それをセクシーに見立てるのはふさわしくないと。日本でも、アイドル活動に関して法律を設けるべきだと思う。文化や産業の建前に隠れて、許されていることが多すぎる。子どものいる人でさえ、そういうのもあるよねとなんとなく見過ごしていると思うんです。これは本当にあり得ないことだと、声を大にして言いたい。
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それに例えば思春期の子どもが性犯罪に巻き込まれたとき、「どんな育て方を…」「この子派手な格好してるね…」など、親や被害者自身が叩かれることさえあるし、泣き寝入りする場合も多いですよね。でも、「性犯罪は100%やるほうが悪い」。子ども対大人の場合、100%大人が悪いということを、当たり前のようですがきちんと認識し直さないといけないと思っています。
痴漢も、立派な「性犯罪」なのに、「みんな一度は痴漢されたことあるよね〜」って当たり前に語られるこの異常さに、早く気付いてほしい。女性専用車両を作って「痴漢されるのが嫌ならそこに行けばいい」ということを暗に提案されている感じがするのも、根本的解決になっていなくて違和感があります。ここでも、「スカートが短かった」「露出が多い」とか、なぜか女性が反省させられたり、怒られたりする場合がある。長年男性優位で作り上げた都合のいい文化を、もうそろそろ疑っていかないと。
性犯罪においては「恥じらいの文化」はもういらないと思うんです。被害者が声を上げなければ、性犯罪者はのびのびやれますよね。日本の子どもたちが「NO」を言うように教育されてきていないのが、すごく心配です。性犯罪は、パワーバランスがあるところで起きているから。それに、子どもを狙う性犯罪の場合、まったく知らない人が行う場合と同じくらい、知っている人が加害者になるケースもあるんです。〝グルーミング〞といって、加害者が精神的に子どもや親の心に入り込む時期がある。だから、何かが起きても親は「まさか」と取り合わないこともあります。こういうとき、相手が目上でも親しい人でも、自信を持ってNOと言えるように育てたい。
我が家は今のところは大丈夫そうですが(笑)、日本だと、NOの言える人は、なぜか「うわ〜(こわっ)」という反応をされがちで、私なんてそんな…という控えめな人が良しとされる。とても独特だなぁと思います。文化すべてを変える必要はないし、謙遜は良い文化だけど、性犯罪に関してはもう必要ない。
男の子も女の子と同じくらい性犯罪の被害者になっているという事実もあり、全員が子どもを守るために、認識を改める必要があると思っています。
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◉SHELLY|シェリー
1984 年生まれ、神奈川県出身。14 歳でモデルとしてデビュー以後、タレント、MCとして幅広く活躍。4歳と2歳の娘の母。
撮影:須藤敬一 取材・文:有馬美穂 編集:羽城麻子
*VERY2020年3月号「シェリーのこれってママギャップ? Vol.3」より。