発達心理学者に聞く、コロナの説明をすると子どものストレスが和らぐワケ

ーー園に行けない、お友だちにも会えない、外で思い切り走り回れない毎日。「うちの子、ストレス溜まってる……」と感じる瞬間はありませんか? 未就学児の自粛生活によるストレスに今、何をしてあげられるのか。40年にわたり育児ストレスの研究に取り組んできた発達心理学を専門とする恵泉女子大学学長・大日向雅美先生に、聞きました。

 

 子どもたちがストレスを感じる今こそ、大人はどーんと構えてあげて

 

大人より感受性が強い子どもたち。今の社会の異常な状況を、彼らなりに「何か大きなことが起こってる!」と肌で感じ取っています。新型コロナウィルスとの戦いが長期戦になってきた今、私たち大人と同様、子どもたちも不安や疲労感が溜まっているでしょう。

イライラと不機嫌なことが増えたり、いつもより聞き分けがなくなったり、下の子に意地悪をしたり、前よりママ・パパに甘えん坊になったり。子どもなりに、ストレスを解消しようとしているんですね。

だからといって「子どもがストレスを溜めてる!」と、親御さんが慌てる必要はありません。多少ストレスがあっても、子どもはちゃんと、育つ力を持っています。そういう反応は自浄作用のようなもの。この状況が続く限り、多かれ少なかれ起こり続けます。

大事なのは、大人がそれに振り回されるのではなく、ゆったり穏やかに、どーんと構えてあげること。ワガママや癇癪も、「今、この子なりにストレスを解消してるんだな」と思って、受け流してあげましょう。

 

もし、子どもたちが感じる不安やストレスを和らげるおすすめの方法があるとすれば、それは、コロナウィルスについて、時間をとって子どもにきちんと説明してあげる機会を持つこと。すでに、お話されている方も多いと思いますが、もしまだでしたら、一度だけで構いませんので、ちゃんと時間をとって落ち着いて話しましょう。

「ウィルスは目に見えないバイキン。“新型コロナウィルス”は、新しくできたウィルスで、お口やお鼻から入ると熱が出て息が苦しくなって病気になる人もいるんだよ」

「たくさんの人が移動すると、ウィルスがどんどん広がって病気の人が増えてしまうから、今はお外に行くのをみんな我慢しているんだよ」

と、真摯に言葉を尽くして話しましょう。

 

ちゃんと説明していることで子どもは安心感につながります

 

わかりやすいように話せればベターですが、大人に話すように多少難しくなっても大丈夫。

たとえ、すべてを完璧には理解できなくても、分かったような納得感は得られますし、ママやパパが、自分を信頼して正確な情報を伝えてくれているということも、子どもは理解して満たされます。それが大きな安心感につながるんです!

ひととおり話したら「わからないことある?」と聞いてあげるものいいでしょう。

そして大事なことは、怖い情報だけを伝えるのではなくて、最後に、

「ちゃんと手を洗ったら病気にならないからね」

「世界中のお医者さんが今ウィルスをやっつけてくれているよ」

など、子どもが今の状況に納得して前向きにとらえる方向に持っていくこと。

“マスクや手洗いをちゃんとしなきゃ”“外に行くのを我慢するぞ”と、親がきちんと説明することによって、子どもの中に、今の状況に自分で立ち向かっていこうという力が出てきます。

また、ウィルスに感染した人=悪い人といった偏見・差別意識を持たないよう教育することも大事。感染した人が悪いのではなく、あくまで悪いのはコロナウィルスであることを伝えて。

家庭でできる絶好の社会科教育のチャンスと捉えて、ママもパパも、子どもに真剣に向き合って話す時間を持ってみてくださいね。

 

取材・文/北山えいみ

 

大日向先生に聞く「今、ママのひとり時間を作るには“親子で1日の計画を立てる”が有効!」はこちらから!

大日向雅美先生プロフィール

恵泉女学園大学学長。専門は発達心理学(親子関係・家族問題)。 40年余り、母親の「育児ストレス」や「育児不安」の研究に取り組む。2004年より、NPO法人あい・ぽーとステーション代表理事、子育てひろば「あいぽーと施設長を務め、社会や地域の皆で子育てと家族を支える活動にも力を注いでいる。