書道家 紫舟さん・美の感性を磨く「書」の世界

芸術は究極の美の形が具現化されたものだから。それを生み出すアーティストたちが美しいのは、当然かもしれません。日々、美と真剣に向き合っているからこその美オーラ。美は内面から、と確信できます。

美しい人とは、最上級の道徳心を持っている人。返しても返しきれない愛を返そうとする人

都会は便利だけど、生存競争の中で自然と武装している自分に疲れることが……。便利を捨てて都会を離れてから、表情も性格も肌質も変わるように。誰しも自分一人の時間を持つだけでも最高の贅沢、人生はもっと生きやすくなると思います。私は生きるための時間も節約しません。よく寝て、体に良いものを食べ、湯船に浸かる。また自分自身を疲弊させるから“嫌い”という感情も持たないように。人のSNSも見ません。比較する時間は辛い。妬みや嫉妬、憎しみや怨みは人間が持ってはいけない感情、自分を見失い潰れてしまいます。それは美とは対局。芸術を生業とする私にとっての「美」は、“全ての存在を敬う道徳心を持てるよう努力すること”。この世で唯一無条件の愛は、親の愛だと思います。産んで育ててくれた人には返しきれない恩がある。親に頼るのではなく、親を喜ばせることを考え続けることができる人、つまり親孝行ができる人は美しいと思いますね。

お話を伺ったのは……書道家 紫舟さん(年齢非公開)

静寂のスタジオに夕陽が降り注ぎ、長らく瞑想をした後、何かが宿ったかのように目を開き、筆を動かす音だけがスタジオ内に響きます。筆は時に加速し、また止まる。呼吸を整え、また加速する。強い意志のある女性の表現するその姿は、凛として神々しく息をのむほど美しいものでした。

Profile 書家に留まらず、現代アーティストとして活躍。2014年、仏国民美術協会展にて、書画で金賞、彫刻で最高位金賞を初のダブル受賞。今夏、東急セルリアンタワーにて『紫舟展』開催。書画や彫刻、チームラボとコラボしたメディアアートを展示。2020年7月~10月(予定)

紫舟さんの作品

1:書のキュビズム「美」(び)2011年作。本来平面の書が言語の壁や国境を越えていく表現となることを願って制作。立体の彫刻となった書を見ることで、筆の動きや奥行きを理解し、書家の意図と体温を追跡する。2:2017年、天皇皇后両陛下(現・上皇上皇后両陛下)が『紫舟』展に行幸啓され、拝謁の栄誉を賜り、作品をご案内。3:NHK大河ドラマ『龍馬伝』の表題も。

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書は1300年続く最も古い文化。古い文化はなくならない

便利な世の中で、なぜわざわざ墨をすり描きにくいふにゃふにゃの筆で書くのか?高い集中力が必要となり、瞑想状態に。自己を見つめ心に寄り添う行為でもあります。

「響」「世に生を得るは事を成すに有り」美ST読者へ即興の書

決して手先で書かないため、無心になり内から湧き出る言葉を書き綴る。なぜこの言葉、文章を書いたのか?自分でも不明だとか。答えが1カ月先に理解できることも。

2020年『美ST』6月号掲載 撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/丸山智路〈ラ・ドンナ〉 取材/安田真里、山田頼子 編集/小澤博子、桐野安子

美ST