【東京アートパトロール】石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか
映画やオペラ、衣装デザインから広告デザインまで幅広い分野で世界的に活躍した石岡瑛子。
彼女の名前を知らなくても、作品を見れば誰もが「あ、知ってる!懐かしい!」となるはず。と、同時にその作品を見た当時のなんともいえない、心がザラつく、モヤる、嫉妬するような感情が思い起こされるのでは?
私はまさにこのパターンでした。
ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されているのが、石岡瑛子が広告やキャンペーンでのグラフィックデザインの仕事に注目した展覧会。
藝大卒業後に入社した資生堂で初期に手がけた「ホネケーキ」の雑誌広告からはじまり、パルコや角川書店などの一連の広告キャンペーンまで。主に1960年〜70年代の〝原点〟とも言える作品が一同に集められています。
入り口を入ると最初に飛び込んでくるのが赤と黒のインパクトの強い空間。そこに様々な石岡語録が示されていて、一気に石岡ワールドへ。
特に生前にマントラのように唱えていたという「ORIGINARITY(私の底から湧き上がる何かを)」、「REVOLUTIONARY(革新的なマインドで)」、「TIMELESS(時代を超えて)」の3つのワードが響きます。
「鶯は誰にも媚びずホーホケキョ」
PARCOポスター(1976)
Creative Director, Art Director, Designer: 石岡瑛子 Designer: 成瀬始子・乾京子 Photographer: 横須賀功光 Copywriter: 長沢岳夫 Stylist: 三宅一生・中村里香子 Makeup: 川邊サチコ
「伝統と現代技術」
展覧会ポスター(1984)
Art Director, Designer: 石岡瑛子 Photographer: 鋤田正義
石岡は1938年生まれだから、ちょうど私の母と同世代くらい。母世代の日本人女性が社会に出て、これだけのキャリアを残すということがどれだけ突出したことだったのか。
軋轢も反発も偏見も山積みだったと思うので、凡人の私はそのパワーにひれ伏すばかりでした。
2月3日から始まる後期展示では、グラフィック・アートを展示予定。こちらも襟を正して見に行きたいと思います。
告知ポスター(前期)
デザイン:永井裕明
写真:藤原新也/PARCOポスター「あゝ原点。」(1977)より
告知ポスター(後期)
デザイン:永井裕明
グラフィック・アート作品「Crystal Silence No.3」(1974)より
【DATA】
会期:前期<広告・キャンペーン> 〜2021年1月23日(土)
後期 <グラフィック・アート>2021年2月3日(水)〜3月19日(金)
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F/B1
入場無料
開場時間 : 11:00am-7:00pm
休館日 :日曜・祝日休館
https://www.dnpfcp.jp/foundation/
text:安西繁美
女性誌やカタログで主にファッション、食関係、アートの企画を担当する編集・ライター。流行には程よく流されるタイプで、食いしん坊、ワインと旅行好き。東京日本橋出身、よって下町気質。家族や友人に美大出身が多いのに私は画力ゼロ。描けないけど書けるようになれたらいいなと。石岡瑛子展であまりの仕事っぷりの激しさに自分を省み、軽く落ち込みましたが。で、帰りに同時期(〜2021年1月25日)有楽町阪急MEN’S TOKYO タグボートで開催されている「ヘタうま展 ヒロ杉山キュレーション」へ。こちらは80年代のサブカル視点の展示。一気に気分が中和されて、家路につきました。