『Endless SHCOK -Eternal-』ジャニーズ観劇レポート|辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン2020 vol.19
東京ほか一都三県の緊急事態宣言は延長になってしまいましたが、エターナルプロデューサー・ジャニー喜多川氏の「Show must go on」精神を受け継いだ堂本光一率いるカンパニーにより、舞台『Endless SHCOK -Eternal-』は今日も幕を開けています。『Endless SHCOK -Eternal-』について、また過去に観劇したジャニーズの舞台について、コロナ禍の今だからこその感想を辛酸なめ子さんに語っていただきました。
まさにSHOCKがendlessな舞台…!
人生は不測の事態に満ちています。平和だった頃は、舞台で繰り広げられる様々な悲劇からは距離を置いて安全な客席で楽しむことができたのですが、コロナ禍の今は、試練や困難に立ち向かい、前を向いて進んでいく青年たちの姿に励まされます。
帝国劇場で、現在『Endless SHOCK -Eternal-』が上演されています。本編の『Endless SHOCK』と同じく KinKi Kidsの堂本光一が作・構成・演出・主演を務めます。『Endless SHOCK』は上演回数1500回以上という記録を持つ大ヒットロングラン舞台。1500回も階段から落ち続けたコウイチ役の堂本光一の人間離れした体力にも驚かされます。
今回上演されている『Endless SHOCK -Eternal-』は、スクリーンに投影された映像を交えて『Endless SHOCK』を振り返るという多重的な構成。『Endless SHOCK』本編自体も劇中劇なのでさらに設定が複雑になり、過去と現在を行き来するので、把握するために脳が鍛えられる舞台です。パンフレットの堂本光一インタビューによると、本編の3年後という設定だとか。
「タツヤがコウイチの墓参りに行けるとしたら、どれくらいの期間が必要だろう? そう考えた結果、出てきた答えが3年後でした」
3年前、コウイチ(堂本)やタツヤ(KAT-TUN・上田竜也)が所属していたカンパニーの舞台では、ある事故が発生。コウイチに嫉妬と尊敬が入り交じった思いを抱いていたタツヤがコウイチの「Show must go on」精神を試すため、舞台で使う刀を真剣にすり替えてしまいます。舞台で本物の刀で斬られたコウイチは血しぶきをほとばしらせ、階段から転げ落ちます。入院して幽体離脱してステージに現れたりしますが、結局亡くなってしまう、という悲劇的な事件です。
『Endless SHOCK -Eternal-』ではスクリーンに凄惨な事件が大きく映し出されていて、まさにショックがエンドレスでした
過去のジャニーズの舞台を振り返ると…
『DREAM BOYS』も事故や病気で入院、死亡、といった保険金をかけたくなる設定ですが、ジャニーズの舞台は過酷な人生や試練がテーマになっていることが多いように思います。
同じく帝国劇場で上演されている、2012年以降シリーズ化された大人気の舞台が『ジャニーズ・アイランド』(『JOHNNYS’ World』から改名)。平和の大切さや地球環境について考えさせられる深い内容です。おそらく、作・構成・演出を手がけたプロデューサーのジャニー喜多川氏が、若い女性たちに平和の大切さを教えたかったのでしょう。何度か観させていただきましたが、歴史の勉強にもなる舞台です。歌やダンスでおくるポップで楽しい世界観と、人類の悲劇の歴史に着目したシリアスな世界観が共存しています。
2019年から2020年にかけて上演された『JOHNNYS’ IsLAND』の主要キャストはKing & Princeの平野紫耀、永瀬廉、髙橋海人という豪華なメンツ。ストーリーは、ジャニーさんの天才ぶりが発揮されていてかなりシュールなので説明が難しいのですが、ショーを作り上げようとしている青年たちが「13カ月目を探したい」という思いで宇宙に飛び立ちます。1月から12月までのカレンダー的なパフォーマンスが繰り広げられ、最初はお祭りや和太鼓など賑やかな演出なのですが、4月頃から雲行きが怪しくなっていきます。4月の場面ではタイタニック号の沈没シーンが演じられ、下等船室の少年たちが船とともに沈んでしまいます。「人類の歴史は悲劇的な災害の歴史といってもいい」というセリフが重く響きます。5月はヒンデンブルク号(飛行船)の水素爆発。炎を上げる飛行船の悲惨な光景に耐えきれず逃げていくレポーター。何度もこのシーンを観ているので水素発電が内心、心配になっています……。6月は大空襲、7月は学徒出陣……と戦争の色が濃厚に。「父様母様、笑顔でお見送りください!」という少年兵の叫びが忘れられません。こんなに美しい日本男児が戦地に散ってしまうなんて耐えられない……と戦争の非道さと平和の大切さが胸に迫ってきます。
そんなシリアスな演出から一転し、宇宙に飛び出したジャニーズのフライングやポップな曲で空気が変わります。2019年の舞台では後半、ジャニーさんの思い出の品と思われるアイテムが展示されていて、それぞれ思い出を語るシーンに胸が熱くなりました。「Youは10年に1度の逸材だ」と言われたとか、「俺のダンス、ほめてくれて嬉しかった」「誕生日にちゃんちゃんこをプレゼントしたらリハーサルで着てくれて嬉しかった」「覚えてもらおうとして稽古で毎回ロンTを着てました」「いつもちゃんとごはん食べろって言ってくれました」「Youはもう心配ないって言われた」など、キャストが競い合うように生前のジャニーさんとの交流について語っていました。『Endless SHOCK -Eternal-』で亡きコウイチについて皆が語っているシーンではコウイチ霊が話を聞いていたのと同じく、ジャニーさんもこの場にいらしていたような気がします。
そして「自分を信じることが大切だ」「俺たちは無限の力を持っている」という思いに至った出演者たち。ポジティブなメッセージで締めくくられていました。ジャニーズの舞台は、死や災害、戦い、事故などシリアスなテーマでも、観終わった後には不安も霊も消えていくようで、心身が軽くなります。イケメンたちの無限のパワーの浄化力は半端ないです。
辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「辛酸なめ子の世界恋愛文学全集」(祥伝社文庫)、「女子校礼賛」(中公新書ラクレ)など
構成/CLASSY.編集部