【レシピ】いつもの料理を10分で ⑨蕪蒸し
しっかりと時間をかけて作る日もあるけれど、それでは毎日がまわらない……。
とはいえ、時短料理は溢れているけれど、
ただただ短い時間で料理ができればいいと思っているわけではない……。
「なぜ」このやり方なら、10分で作れるのか?
「どこ」さえおさえていれば、味の要が守れるのか?
理由を知っていれば、レシピを見続けなくてもサッと作れるようになる。
料理研究家の上田淳子さんに、(ほぼ)10分で作るための、省いていい部分・守るべき部分、そして”発想の転換方法”を教えていただきました。
もちろん、時間をかけて作るレシピは素晴らしいけれど、
日々の小さな幸せには、こういったレシピも必要だなと感じるのです。
この作り方は、”本物じゃない”と思われる方もいるかもしれません。
ですが、名前のついた料理の”想像する絵”にこだわりすぎなくてもいいのではないでしょうか?
定番料理を作る際の、
こういう方法にしてもありなのでは? という
振り幅の広さを紹介していきます。
Vol.9
蕪蒸し
今回作るのは、蕪蒸しです。家で作って食べるひと皿というよりも、ちゃんとしたお料理屋さんなどでいただく冬のご馳走というイメージが強いですよね。本来は、贅沢な具材(白身魚、焼き穴子や海老、ぎんなん、ゆり根など)を使って、丁寧にすりおろした蕪と卵白で”作るもの。卵白を使用するのは、蕪の”白”を生かして、白いひと皿に仕上げるためです。
もしも、蕪蒸しをほぼ10分で作るとしたら…。
さて、私たちが蕪蒸しに求めたいのは、
*蕪の甘い味わい
と
*熱々、とろとろ、ふわふわの食感
これらを基に、工程の取捨選択を。ほぼ10分で作る方法を考えていきます。
春とは言え、ほっこり温かい一品が欲しいときにぜひ作ってみてください。
ほぼ10分で作れるのには、理由がある…!発想の切り替えポイント
POINT1 短時間でも風味を出すために全卵で作る!
先にも述べたように、本来蕪蒸しを作る際は卵白を使用して、ふんわりとそして白く仕上げていきますが、短時間で風味豊かに仕上げるために、卵黄の旨みを利用していきます。
POINT2 だしは簡単に取る
お茶を淹れる感覚と同じ!
コップに入れたおかかパック(鰹削り節)に湯を注いで即席だしを
だしを丁寧に取る場合は、
鍋に水を入れて沸騰したら、一度火を止め、鰹削り節を入れて、数分待つ。ざるにキッチンペーパーや布などを敷いて鰹削り節を漉して…。と行っていきますが、
10分で作る場合は、 いちいち鍋を使う必要はありません。ボウルやマグカップに鰹削り節をワサッと入れて、熱湯を注ぐだけ。それだけで十分だしは取れます。鰹の粉が少し混じっていてもOK。それもまた美味しさと思いましょう。
POINT3 具材は最低限の種類でOK
具材はおいしさとして必要な最低限の種類でOKです。
・肉の旨み
・キノコの旨み
・野菜の食感
この3つを意識して具材を考えていきましょう。
POINT4 電子レンジをフル活用!
本来、蒸し器で蒸しあげていきますが、電子レンジで加熱をしても、蕪の旨みは十分引き出せます。
■蕪蒸し
【材料】2人分
- 蕪…2個(約300g)
- 鶏もも肉…80g
- 椎茸…2枚
- スナップエンドウ…3〜4本
- 卵…小1個
- 塩…適量
- だし汁…200㎖ → だし汁は茶碗蒸しの回を参照
- 薄口しょうゆ…大さじ1
- みりん…大さじ1
- 水溶き片栗粉(片栗粉:小さじ1、水:小さじ2)
【作り方】
1.蕪は、皮ごとおろし金ですりおろし、ざるにあげておく。鶏肉は小さめの角切りにする。椎茸は5mm程度の薄切りにする。スナップえんどうは筋を取り、斜め切りにする。
2.ボウルに卵を割りほぐす。この中に水けをある程度絞った蕪を加える。塩 小さじ1/4を加え、均一になるまで混ぜる。さらに1の具を加えざっくり混ぜる。
3.耐熱容器に2を2等分にしてこんもりと盛る。(レシピの分量で器2つ分の量になります。)ふんわりとラップをかけて600wの電子レンジで6~8分(器によって差があり)かける。
4.電子レンジで加熱している間に、小鍋にだし汁、薄口しょうゆ、みりんを入れて中火にかける。煮立ったら、しっかりと混ぜた水溶き片栗粉を入れて素早く混ぜ、沸々と煮立ててとろみをつける。
できあがった蕪蒸しに4をかける。
【バックナンバー】
【PROFILE】
上田淳子:料理研究家。スイスやフランスのレストランで修業を積み、現在の道へ。食育の活動も行う。著書多数。新刊は『ごちそうしたい、ほめられたい 実は簡単! ハレの日ごはん』(NHK出版)、『上田淳子のチキンスープ − 鶏肉=具材、スープ。簡単、本格的。』(グラフィック社)
撮影/大森忠明 文・構成/松本朋子