【中学受験④】「中高一貫校は思春期を過ごすのにうってつけの場所」
今回は中学受験の先にある中高一貫校生活について語ってみたいと思います
★ 題して「哲学のススメ」
皆さん、こんにちは。教育ジャーナリストの鳥居りんこです。
中高時代は“思春期”という沼にドップリとハマる時期です。この“思春期”は子どもが大人へと成長するための移行期間。例えるならオタマジャクシがカエルになろうとしている段階ですが、このオタマジャクシでもない、カエルでもないという、どっちつかずの時期は本人にとっても大混乱の時代です。
イメージとしてはエラ呼吸が肺呼吸になり、手足が生えてきちゃうような大変態の渦中。体もそうですが、脳内も迷走しております。
「何故、自分の主張だけが通らないのか?」「自分は何者か?」「何故、生まれてきたのか?」などという「哲学」をするようになる頃合いですね。何故ならば、飯の心配をせずにいられる(=生活のために働く必要がない)時期だから。
★「哲学」とは「真理を探究する営み」
この語源はギリシア語にあり、もともとは「知を愛する」という意味の言葉だと言われています。何やら難しそうですが、つまりは物事の「本質」を考える思考を指します。
この「哲学する」は、中学に入るとすぐに発揮されるでしょう。顕著に出るのは英語の定期試験前夜でしょうか。
「あ~、俺はなんで英語圏に生まれなかったんだ?」→「神はどうして、多種多様な言語を生み出したもうた?」→「世界の共通語は英語って誰が決めた?何故、日本語じゃない!?」→「そうだ!今からでも遅くない!俺が日本語を世界の公用語にしてやる!そうすれば、英語なんか勉強しなくていいんだ!今すぐ、俺が~!」
ってな思考を繰り広げる午前2時。
「そんなことより【change】を【チャンゲ】って読むのを止めてくれ!」とため息をつく親にとっては、非常にメンドクサイ時期でもあるんですね。
「勉強したくないから、理由をつけて駄々をこねているだけだろう!?」ですか?(笑) でもね、それこそが「哲学」。日々【changeしている】この時期だけの特権です。
やりたくないことをやらなければならない。
それは、勤労・納税・教育が日本国憲法の国民の義務だからなのか?
それとも、己の人生のためか?
やりたくないことをやらないという選択は是か非か?
などを無意識下でも考えていくことが素晴らしいのです。
自分を分かってくれない他人のことが嫌いで、自分のことはもっと嫌いで、容赦のない自己否定の中で、どうにか息を吸おうともがいている時期。誰もがここを通過して大人になっていきますが、中高一貫校で過ごすということは、実はすごく贅沢なことであると思っています。
「数学なんて、何の役に立つ?」を考えることが、まずは幸せで、やがて、これが大人へのステップに繋がっていきます。このような“青臭い時代”。もし、その学び舎が自分に合っている場所であれば、色んなことを安心して考えられる毎日になるでしょう。
それができる一番大きな理由は先生方が「思春期」の扱いに慣れていることでしょうか。
創立百年越えの学校も多いですが、大抵の学校に歴史があり、来る日も来る日も、この“愛すべき青い子たち”に向き合っているのですから、その“辛抱強さ”といったら伊達ではありません。
「入学した時は自分よりも背が遥かに低かったのに、卒業時には見上げないといけなくなる(笑)」と目を細める先生は多いです。
特に、今年の卒業式はコロナ禍を経たものだったので、生徒の体と心の大きな成長を改めて目にして、万感の思いに浸り涙される先生のお話を沢山、伺っております。
ある先生は「アイツらには本当に手こずって・・・。『先生、お世話になりました』って親御さん共々、頭を下げてくれたんですが、ホントにね『お世話しました、君らは世話した・・・』って思ったら、もう泣けて泣けて・・・」と軽口を叩く振りをしながら、立派に反抗期を潜り抜けて巣立っていく教え子たちを称えておられました。
「お母さんたち、お子さんのことは我々に任せてください」と自信を持って告げる学校は多いです。親には我が子が異星人にも思える思春期の時代、親、特に母親に対して「子離れ」を促しているのです。「6年かけて、徐々に大人にしていくので、家庭では温かく見守っていてくれ」というメッセージと言えば、分かりやすいでしょうか。
中高一貫校は同じ学び舎、同じ先生方の中、つまり“ホーム”と呼べる環境で人生において最も多感な6年間を過ごします。合う環境に身を置いた子どもは、ゆっくりと色んなことを考える時間が持てるでしょう。
このように、じっくり、ゆったりとその子、その子の成長を促しつつ、じっと待っているのが中高一貫校の長所のひとつであるのです。中学受験に参入する親御さんは、お子さんのそのままを認めてくれる学校を選んで、来るべき「嵐」に備えてくださいね。
次回のテーマは「わが子そのままを認めてくれる学校をどう選ぶのか」について。4月15日(月)配信予定です。
鳥居りんこ・・・作家、教育・介護ジャーナリスト
003年、長男との中学受験体験を赤裸々に綴った初の著書「偏差値30からの中学受験合格記」(学研)がベストセラーとなり注目を集める。
その後シリーズ化され、悩める保護者から“中学受験のバイブル”と評され、中学受験を辛かった思い出ではなく、子どもとの絆を感じられ、子育てが楽しくなる内容に、心救われ涙する保護者が続出しました。
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