【東京アートパトロール】佐藤可士和展
ジャニーズ好きの友人に誘われて、国立新美術館で開催中の『佐藤可士和展』に行ってきました。
佐藤可士和さんは、日本を代表するクリエイティブディレクター。奥様でマネージャーの佐藤悦子さんも女性誌で取材を受けてらっしゃるのをよくお見かけするので、それでご存知の方も多いかと思います。
そもそも、クリエイティブディレクターって、どんな仕事なのか?
その概念はアメリカで誕生したと言われています。
広告制作には視覚を担当するアートディレクター、文章を書くコピーライター、カメラマン、モデル、ヘアメイクなど多数のスタッフが介在しますが、それらの専門スタッフを一手に束ねて、広告の企画立案から最終的な表現まで全体を「監督」するのがクリエイティブディレクターです。
日本では2000年代から、広告だけでなく企業の商品のブランディング全般に携わるクリエイティブディレクターが少しずつ現れてきて、その筆頭が佐藤可士和さんというわけです。
主な仕事はユニクロや楽天グループのグローバル戦略、セブン–イレブン・ジャパン、本田技研工業「N」 シリーズのブランディング、国立新美術館のシンボルマークデザインとサイン計画とビッグプロジェクトが目白押し!
そんな佐藤可士和さんの30年に渡る活動の中から50以上のプロジェクトを取り当て、多彩な展示方法で紹介しているのが今回の展覧会です。
会場に入って、真っ先に目に飛び込んでくるのが2000年の「SMAP」のポスター&キャンペーン。
あの年の秋の日、一見「これなに?」って思うポスターが東京中に掲出されたのを私は今でもよーく覚えています。
あちこちから「懐かしー」「これ持ってた!」の声があがっていた SMAPのグッズ。
SMAPのグッスを見てお分かりのとおり、佐藤可士和さんがすごいとされているのが「デザインを通じたメディアの拡張」を展開したこと。
テレビ、ラジオ、雑誌、新聞が4大メディアとされていた2000年頃に、飲料のパッケージやラッピングバス、ショッピングバッグ、駅貼りのポスター、街で配られているポケットティッシュまでをメディアとして捉えて、統一性のある明快なデザインで貫いたことです。
展覧会では、企業の概念や商品・サービスの価値などをシンプルでインパクトの強いデザインに落とし込んだクリエイティブワークが、圧倒的なボリューム感で展示されています。
「世の中こんなに佐藤可士和だらけだったのか……」と改めて感じさせられます。
立体化した巨大なロゴを用いたインスタレーションの展示。
クリック拡大してみてください。セブン-イレブンのオリジナル商品のパッケージも佐藤可士和さん作。
浅草のくら寿司のグローバル旗艦店はロゴや食器、制服など店内のアプリケーションまで一気通貫したブランディング。
グローバル旗艦店 「ユニクロ ソーホー ニューヨーク店」
屋外広告(工事中店舗の仮囲い)、2006年
「日清食品関西工場」 トータルプロデュース、2019年
「八代目中村芝翫襲名披露公演 祝幕」2016年10月 歌舞伎座
他にも、病院・幼稚園・文化施設・服飾ブランドなどありとあらゆるブランドに携わってることが分かります。
圧巻でした。
私は日々無意識のうちに、佐藤可士和さんの仕事を通じてブランドを認識して、理解して、消費してるのだなぁと、思い知らされました。
「第一線で活躍する現役のクリエイティブディレクターが何故にして国立の美術館で展覧会?」と思ったのですが、佐藤可士和さんの表現手法そのものがアートということなのかもしれません。
買えるまでがアート。
そして、我が家のアホ娘が、自宅のリビングに置いてあった佐藤可士和展のパンフレットをいち早く見つけて「これ、友達と超行きたいって話してたヤツ!!!」と熱弁していたのも意外でした。
たしかに、今や80年代の広告界のヒーローは大学の教授とか学部長レベル。
高校生は「ユニクロ」や「SMAP」はリアルで体感として知っているけれど、「INFOBAR」は知らない世代でした。
私は雨の平日に伺ったのですが、それでもかなりの混雑。これから見に行かれる方は早めの事前予約がおすすめです。
ミュージアムショップはオリジナルのUTたちがズラリ。
三輪山本の佐藤可士和展限定スペシャルパッケージの素麺「白龍」をお土産に。
「あ、私また佐藤可士和さん消費を促されてた」と思ったのはお会計後。
佐藤可士和氏。1965年生まれの56歳。
<DATA>
佐藤可士和展
会期:~5月10日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
東京都港区六本木7-22-2
開館時間:10:00~18:00(毎週金・土曜日は20:00まで)
観覧料金:一般¥1,700
事前予約制(日時指定券)についてのチケット情報の詳細は展覧会HPまで。
公式サイト
TEXT: 安西繁美
女性誌やカタログで主にファッション、食関係、アートの企画を担当する編集・ライター。流行には程よく流されるタイプで、食いしん坊、ワインと旅行好き。東京日本橋出身、よって下町気質。家族や友人に美大出身が多いのに私は画力ゼロ。描けないけど書けるようになれたらいいなと。3月は学生の卒展があちこちで開かれているので、そのパトロールにも出没。どれも開催期間が短いので、こちらでは紹介することが難しいのですが、プロとは違う熱量を感じられて涙モノなのでおすすめです。