【LIFE STYLE】パリ近郊 花とともに暮らす 番外篇 #旅の断片
フランスで2020年3月末から2カ月続いたロックダウン。第一回目はマスクもなく食料品店が開いているだけで外出、移動も禁止。パリの街は嘘のように人がいなくなり……。それから1年半後、3回目のロックダウンが5月初めに緩和された時、一番最初に家族と考えたのが旅に出ること。海が見れる、そんなことがとても貴重に思えたのです。
旅はいつもその土地に吹く風を感じさせてくれます。
当てもなくそんな時間を過ごすことはきっと、とても人間らしいこと。
ふと目に映った風景、植物……その瞬間にぱたっと、扉が開き何処かに続く。
旅の中で拾い集めたその土地の空気、インスピレ–ションの綴りです。
海とその町
海へ出かけた。
陸の真ん中に住んでいると時々海が見たくなる。陸地が途切れてしまうことを確かめてみたいのかもしれない。その為には、ここの海に来るのが一番だ。断崖と海。日常と非日常が出会う場所 。
海と空が溶け合う時。
空を見ているのか海を見ているのかが分からなくなる。
陸の端っこ。
今日は風が吹いている。
岩山が雲を見上げ、草が凛と海を見下ろす。
海辺の町で出合った植物たち。
塀の向こうを思わずジャンプして覗いてみたくなるようなクレマチス。
溢れるってこうゆうこと。
廃墟の住人は閉ざされた戸から陽を求めて。
はみ出すっていい。
クレソン。
おじさんがクレッソンを売りにやって来た。回りに人がぽつぽつと集まりだす。
この土地の人の営みはずっとこの水の流れと共に続いているのだろう。
そして、
海辺の建物の壁に見つけた三日月とてんとう虫たち(les coccinelles)。
ふらふらと歩いた、あてもない一日が終わる。
紫の夕暮れ。
また今度。
【PROFILE】
西田啓子:ファーマーズフローリストInstagram@keikonishidafleuriste
フランス・パリ近郊花農園シェライユ在住。パリの花のアトリエに勤務後、自然を身近に感じる生活を求め移住。以来、ロ-カルの季節に咲く花を使いウエデイングの装飾や、農園内で花を切る事から始める花のレッスンを開催。花・自然・人との出会いを大切にする。
https://keikonishida-fleuriste.jimdo.com/