塾に行くことは、子どもにとって本当に必要?【ジェーン・スー×HARUKOの人生相談Vol.8】
40代女性の気持ちを代弁するような明快な語り口が人気のコラムニスト、ジェーン・スーさん。新聞やラジオ、雑誌で多くの方のお悩みに答え、その胸のすくような回答には励まされる読者も多数。
一方、波乱万丈の人生経験を持ちながら、いつも前向きで飾り気がない人柄で、誰からも愛されるモデルのHARUKOさん。歯に衣着せぬ語り口で、仲間のお悩みにさっと答えてくれると評判です。
そんなおふたりに『STORY』読者の真剣なお悩みに答えていただきます!
前回は…義理の親との付き合い方のお悩み
<PROFILE>
ジェーン・スーさん
コラムニスト。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月〜木11:00〜)のパーソナリティを担当。毎日新聞をはじめ新聞・雑誌で数多くの連載を持つ。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』は、第31回講談社エッセイ賞を受賞。近著に『これでもいいのだ』。
HARUKOさん
モデル。短大時代、『JJ』にて山田明子(はるこ)の名でデビュー。以来、数々のファッション誌で活躍。’03年に結婚後、九十九里浜に移住、長女を出産。’12年に離婚。HARUKOに改名し、現在『STORY』にて活躍中。趣味はサーフィンと読書。
~ 第8回 ~
★ 子どもの塾についてのお悩み
小学校3年の息子がいます。息子の友達は、塾に通い始める子が多いらしく、放課後遊ぶ友達がだんだん減ってきています。我が家はまだ塾に通わなくてもいいかな、と思っていたのですが、息子は放課後が暇らしく、「僕も塾に行こうかな」などとつぶやいています。わたしたち親も、周りの子の動きで我が家の考え方を改めても良いのか、今塾に行くことが本当に、息子に必要なことなのか、だんだんわからなくなってきています。自分たちのスタンスをしっかりと持っていたらいい話なのですが、つい周りのご家庭の状況に左右されてしまいます。(A.H.さん/42歳/主婦)
HARUKOさん
うちは、公文にはいかせていたけれど、娘がやりたいって言うからやらせてただけで。 塾は、娘が自分から受験したいって言い出したから1年間だけ行かせた。この方の場合は、勉強にこだわらなくてもいい気がする。今ってプログラミングとか、以前はなかったような習い事がいっぱいあるから、そういう新しいことにチャレンジさせて、興味の幅を広げてあげるとか、息子ちゃんが本当に好きなものをつきつめさせてあげるとか。
スーさんは、中学受験しました?
ジェーン・スーさん
いえ、私は幼稚園から一貫校で、中学までストレートで行って、その後、高校受験しました。私は、習い事はかなりいろいろやりましたよ。1人っ子だったこともあって。ピアノ、お絵かき、お習字、パソコンもやったし、 塾もひととおり行きました。ジャズダンスやテニスもやってましたね。
HARUKOさん
おー、それはすごい。
ジェーン・スーさん
でも、何1つものになってないですけど(笑)。でも、すごくよかったんですよ。国立の小学校で、近所に友達がいなかったので、それこそ放課後ヒマなんですよ。そんなときに、なにかやることがあるのはよかったし、そこで、友達ができるのもよかった。この方の場合、受験しないんだったら、塾に行く必要はないですよね。このお子さんだって、どうしても勉強がしたくて「塾に行こうかな」って言ってるわけじゃなさそうだし。HARUKOさんの言うように、英語習ったりとか、プログラミングやったりしたほうが、将来の可能性が広がるんじゃないかな。
ところで、HARUKOさん、娘さんの受験は大変でした?
HARUKOさん
小6になる前の春休みに、急に、私の母校に入りたいから受験させてくれって言われたんですよ。「一年じゃ無理だよ」って言ったんだけど、やるだけやらせてみようと塾にいれました。最初は、私が教えようとしたんだけど、手も足も出なくて(笑)。全部塾にお任せで。もう、頑張りなさいと励ますしかできることがなかった。スタートが遅かったから、最後の最後、1月ぐらいになって、やっと伸びてきたんですよね。塾って、成績順に並ばされたりとかして、精神的にもきついじゃないですか。でも、たった一年だけだったからなんかと気持ちを保てたのかな。チャレンジすることが良いことなのでで、合格不合格は重要じゃないとは思っていた。
ジェーン・スーさん
それで結果は?
HARUKOさん
合格できました。努力が実を結んでよかったなと思うけれど、もし、失敗しても、頑張ることは身についたし、それはそれでよかったと思っているんですよね。ただ、子どもに期待しすぎないっていうのは大事だと思う。「受験しなさい」と言われて、無理やり塾に入らされて、全然成績が上がらなくて、ガミガミ怒られて。親だって大して頭良くないくせに、うちの子はもうちょっとできるんじゃないかと期待されても、子どもにとってはすごく迷惑だよね。
ジェーン・スーさん
そうですよね。でも、そうなりがちですよね。
HARUKOさん
この方は「我が家の考え方を改めなければいけないのか」と悩んでるということは、すでに、自分たち家族の意見をきちんと持っているってことですよね。うちの場合は、娘の学校から受験をする人が彼女一人だけという環境だったので、周りの考えに 振り回されずに、のびのびとできた。でも、東京で育ててたら 絶対周囲の渦に巻き込まれて、小4になったとたんに、「受験しなさい」と言い出しかねなかったと思う。
ジェーン・スーさん
周囲がみんな受験しているから、うちもさせようかな、と思っちゃう気持ちはわかります。ぶれちゃって当たり前ですよ。実際、いまのコロナだって、原発事故のときだって、何がいいのかわからなくて、大のおとなが右往左往したじゃないですか。あれを思うと受験させるか、させないか、どう育てたらいいかっていう、自分の子どもの将来にかかわる問題なら、それは惑わされると思いますよ。
HARUKOさん
だから、親がこう決めたから、絶対にこう、と決めつけすぎないで、周囲の様子を見るのも全然悪くないですよね。ただ、勉強だけっていう枠にとらわれず、柔軟に考えてあげていいんじゃないかって思いますね。
当連載は毎週金曜日配信です。
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撮影/吉澤健太 取材/秋元恵美