地方を旅行するうち、その土地に惹かれて「移住してみたいな」と思ったことはありませんか? 今回は東京から実際に移住した人に取材。
そのきっかけや住み心地、なかでも食の変化や充実ぶりについてたっぷり聞いてきました。
山に通ううちに自然の近くに住みたくなった
中山宇宴さん(37歳)、宏美さん(37歳)、桜ちゃん(9歳)、咲春くん(7歳)、蕗ちゃん(0歳)の5人家族。
日々自然に触れて旬の味を楽しみます
中山宏美さんの仕事は、「鉱石採集家・装身具作家」、夫の宇宴さんは、古民具スピーカー作家です。
「夫婦で山に入って土から鉱石を採集し、自然の形を生かして装身具に仕上げています。自然と対話するように仕事をするうちに、東京で作業をすることに違和感を覚えるようになって。昔から田舎暮らしに憧れていましたが、身近な人が移住したことで影響を受け、現実のものになりました」(宏美さん・以下同)
移住先は決めていなかったそうですが、佐久に好きな作家さんが多かったのと、知人から佐久によい小学校があると教えてもらったことで、移住を決意しました。
移住してすぐおめでたになり、夕飯づくりを宇宴さんが行うようになったそう。
「最初は頼れる人がいなくて、両親は東京で遠いし、心細かった。あまり弱音を吐いたことはなかったけど、初めて大変な状況をインスタグラムで発信したんです。すると地元の人が助けてくれて。ごはんづくりがしんどいときにおかずを持ってきてくれるなど、親切が身にしみました。おかげで地元のみなさんとの距離がぐんと縮まりました」
移住してシンプルな味を求めるようになったそう。
「目の前の山の色や景色が変わっていくのを感じる日々。もともと添加物などを気にするほうだったけど、旬のものをシンプルに味わう喜びを素直に感じるようになりました」
桜ちゃん、咲春くん、蕗ちゃんの3人きょうだい。佐久に来てからよくお手伝いをしてくれるように。
お米は佐久の「だいちゃんのお米」。「とにかく手間暇がかかっていて食べたことのない味。娘が炊いてくれます」
庭で摘んだものと地元の野菜でごはん
庭で摘んできたよもぎとこごみの天ぷら、しいたけ、まいたけの天ぷら、大学いもは子どもたちの好物。Maru Cafeのにんじんのピクルス、庭から摘んできたミントとレモンでつくったお茶、ほうれん草、もやしとどんこの味噌汁は宇宴さん作。ご飯は佐久の無農薬栽培「だいちゃんのお米」。庭に生えているものを摘んできて食す、ぜいたくな時間を過ごしています。
みんなで摘んだよもぎとこごみをキッチンに運んでくれた咲春くん。
「佐久はじゃがいもの産地で、収穫シーズンになるとよく玄関先に地元の友人が置いておいてくれたりしますね」
山菜やハーブが植わっていて、子どもたちが存分に走り回れる広い庭があります。今の住まいは家を探しているときに偶然紹介を受けて、住むことになったのだそう。
土地の恵みを組み合わせた、季節に寄り添う料理やお菓子がお気に入りのカフェ
柳澤 零さん、真理さんが運営するMaru Cafe。極力地元の旬の素材を仕入れ、地域の循環をつくることを大切にしているそう。生産者さんの考え方まで把握したうえでひとつひとつ説明してくれるので、安心して食事&買い物ができます。
代表的なお菓子は12km圏内で採れた素材だけでつくるボウロ。
毎週土曜のawai marketでは、地元の旬の野菜や焼き菓子などを販売。
Maru Cafe(@marucafe____)
長野県佐久市平賀5341-1
●食事と喫茶 金・土・日曜11:00~16:00
●毎週土曜awai market 8:00~11:00(カフェも朝食営
業) おまかせランチ(前菜、サラダ、本日の一皿のセット)¥1,650は、その季節と体に寄り添う丁寧な味が楽しめます。ケーキやパフェなどのスイーツも充実。
自宅の工房で、夫婦でものづくり
採集した鉱石は窓辺で光を当てて確認し、装身具にします。「自然光のほうが石の本当の姿が見えてくるんです」(宏美さん)。元オーディオ誌の編集者だった宇宴さんは、2階の作業スペースで古民具を使い、スピーカーをつくっています。展示会の詳細はインスタグラムで発信。(@setsu_hiromi、@uen______)
撮影/中林 香 取材・文/湊谷明子 編集/小松伸司