戦慄かなのちゃんが語る! アイドル、アーティスト、プロデューサー、次の展望は?
心に響く歌詞に、耳に残るメロディー。楽しいときは気分を高めてくれて、落ち込んだときは助けてくれる不思議な魅力を持つ音楽を発信するアーティスト達は、どんな人間なんだろうか? 少年院出身アイドル、プロデューサーなど音楽を通じて独自の世界観を発信する戦慄かなのちゃんにこれまでの経緯やこれからの目標を聞きました。
自分よりも下の世代の才能が生まれる瞬間を見たい
ビスチェ(参考商品)/ルス(ベルミニョン) 中に着たキャミソール¥4,620/ぽこ・あ・ぽこ スカート¥74,800/MSGM(アオイ) 帽子¥10,230/カンゴール(カンゴール ヘッドウェア) イヤリング¥27,500/シトロンビジュー
――少年院出身アイドルとして注目を浴び、現在はセルフプロデュースアイドル「femme fatale(ファムファタール)」として絶大な人気を誇る戦慄かなのちゃん。もともとどのような考えでプロデュースを始められたんですか?
少年院を出たら地下アイドルという文化が生まれていて自分でもできそうだなって思ったんですよ。昔は大きい事務所ありきでやるものだって思っていたけれど、これって自分でライブに出たり、人気を集めたりして、自分で売っていくことができるんじゃないかなぁみたいな。作られた曲でアイドルをするというところから、徐々に自分がやりたいことや理想としているものが明確に見えてきたんです。その理想に近づくためにDTMやダンス、ボイストレーニングなど10個ぐらい習い事をしながら、妹の頓知気さきなと「femme fatale」を結成しました。曲も、振付も、歌詞も自分で作ったし、衣装も妹と一緒に考えて。コンセプトやMVの企画、ライブのブッキング、グッズの手配などの業務もしながら、コツコツと地道にライブ活動をしていましたね。自分が思う“可愛い”を突き詰めたくて、ゆっくりでもいいから妥協せずに納得できるものを出そうという思いで活動していました。生まれてからずっとアイドルになりたかったから、客観的に考え続けてはいたんですよ。“どういうアイドルになりたいか?”“どういうアイドルがいないのか”っていうことを模索していて。そこで妹とふたりでしか出せない雰囲気や空気感とかあるだろうなと思っていたので、それをいちばんよく見せるのはどんなアイドルか、ということを考える期間はすごく長かったです。アイドルにはなりたいけど、実際、自分がアイドルになりたいという気持ちとは違うところから見ていたのかもしれないですね。
――歌詞を書くときも、客観的に見て作ることが多い?
実体験は自分の思想が乗りがちです。でも、自分の中にある感情や共感できるものしか歌詞にはしないかな。私、言葉をめっちゃ考えるので、かなり時間をかけて作詞をするタイプなんですよ。曲の雰囲気を聴いてまずは想像を膨らませるところから始まって。そこからはワードを探すモードになります。常にアンテナを立てた状態になるので、日常生活で面白い単語を見つけたり思い浮かんだ言葉があればすぐにメモして。今、スタジオの壁に貼ってある“土足厳禁!”っていう言葉にも反応しちゃう(笑)。インパクトがあって、なんか変だろ! みたいなワードを考えるのが好きなんです。どの曲にもパンチラインのような歌詞は絶対に入れるようにしています。
――今まで書いた中で、特にお気に入りのフレーズはありますか?
“大喜利大会しとけ”。「femme fatale」の『恥晒し』っていう曲のサビ頭がこの歌詞から始まるんですけど、ちょっと喧嘩腰の曲なんですよ。そもそも自分を励ますために書いた言葉なんですが、SNSであることないことを推測で言われるのが大喜利に見えて、それをオブラートに包んだのがこのフレーズ。毎回、自分が書いた歌詞をアウトプットすると忘れるので、この曲を聴くと毎回「あ、がんばろう」って気持ちになります。あとは、『after light』の中にある“少年院以上のゴシップネタ持ってこい”(笑)。妹に歌ってもらって、炎上したとき用の予防線を張りました。基本、私が歌詞を書くと喧嘩腰になったり、メッセージ性が強くなりすぎてしまうんですよね。だから最近は、「水曜日のカンパネラ」のケンモチさんに歌詞をお願いしてて、曲も作ってもらっています。
――何も考えずに聴ける曲みたいな?
そうそう! 音楽って聴くときのメンタルで、いいほうにも悪いほうにも引っ張られるじゃないですか。だから、思い入れが強すぎて、曲を聴くのが億劫になってほしくないんです。例えば、失恋したときにめちゃくちゃリピートして聴いていたから、1年後に聴いてもなぜか悲しくなる、なんてこともあるじゃないですか。そういう負の曲ばかりになってほしくなくて。私自身、嫌な思い出に音楽でスイッチを切り替えられたくないんですよ。シャッフルで流したときに、いきなり重たい曲が流れて気持ちを落としたくない(笑)。昔は私が伝えるメッセージを受け取ってほしいって思っていたけど、ファンの方が増えてくるにつれて、それって野暮なことなのかもって思えてきたんです。私の伝えたいことは本当にそれを受け取りたい人が受け取ればいいから、全世界にそれをわかって! ってやるのは違うなって。もっとライトで手に取りやすいものを作らなきゃなってすごく思ったので、最近は考えがシフトしてきていますね。もちろん定期的に自分が作詞した曲もやろうと思っていますが、たまにでいいかな。
――本当に、細かい部分までしっかり考えられているんですね。アイドル、アーティスト、プロデューサーなどさまざまな発信者として、今後どんな存在になっていきたいですか?
自分を高めていきたいというよりは、みんなのモチベーションを上げられる存在でありたいです。今も、ダイエットや美容のモチベになるって応援してくれている人がいるんですけど、そういうふうに誰かのためになれたらうれしいですね。あとは私が持っている経験や知識を、次の世代に与えていきたいです。私を踏み台にして、この世にいいクリエートが増えてくれることが理想。アイドルが大好きですし、もっとセルフプロデュースするアイドルが増えて欲しいと思っています。本当にいいクリエートが増えてほしくて。見たことがないものに触れたり、新しいものが生まれる瞬間を間近で見ていたいです。おばあちゃんみたいですけど(笑)。
Inspired me
電子音にエレクトロダンスミュージック……やっぱり自分が初めて選んで聴いた「Perfume」の音楽から受けた影響は計り知れないですね。エンドレスで聴き続けて一夏終わったこともあります(笑)。
My song’s partner
スマホとヘッドホンがないと無理です。日々インプットしている言葉や頭の中に浮かんだものをメモにバーって出し切ったら、深夜におうちで体操座りしながら、集中して歌詞を書くことが多いです。
Fills my heart
犬! ウクくんとチャムちゃん2匹飼っているんですけど、私が夜辛くて泣いているときとか、トトトって寄ってきてなぐさめてくれるんですよ。本当に可愛すぎていつの間にか涙が引っ込んでいます。
Profile
戦慄かなの kanano Senritsu
1998年9月8日生まれ、大阪府出身。NPO法人「bae-ベイ-」代表理事。2018年、実の妹・頓知気さきなとセルフプロデュースアイドル「femme fatale(ファムファタール)」を結成し、SNSで話題に。2021年からはソロ活動も始める。
Information
2023年1月には戦慄かなのソロアルバムリリース&ワンマンライブが決定。
あわせて読む
Photo_Yuzo Touge Styling_Hitomi Imamura Hair&Make-up_Kurumi Komatsu(ROI) Model_Kanano Senritsu Edit&Text_Natsumi Takahashi(Spacy72)