女優・桜井ユキさん「年齢を考えて諦めたほうがいいのかなと思ったこともあったけれど」

今回の衣装と同じようなベージュのセットアップに、マルジェラのブーツを履いて現場に現れた桜井さん。とてもオシャレなので「普段どこでお買い物するんですか?」と伺うと、青山からココとココに行って…と詳しく教えてくれました。「でも普段撮影があるときは上下ジャージです!オシャレも毎日じゃ疲れちゃうので」という言葉に共感。ファッションも中身も、しなやかな方でした。

自分も周りも幸せにするウェルビー女子な生き方、教えてもらいました

仕事も家庭も、大切だからこそ全部を抱え込まず“手放すこと”を意識しています

ベスト¥35,200パンツ¥2

ベスト¥35,200パンツ¥29,700(ともにMURRAL)ブラウス¥49,500(Sea New Yark)(すべてBRAND NEWS)ブーツ¥75,900/AKIRANAKA(Harumi Showroom)ピアス¥13,000右中指リング¥18,000右薬指リング¥9,800(すべてyoaa)

根拠のない想いだけで上京しました

役者を志したのは小学校3年生のとき。ドラマや映画をたくさん見ていたわけではないのですが、急に「女優さんになりたい」と思ったんです。小6の頃には親に内緒で地元・福岡の芸能事務所に応募したことも。当たり前ですが、面接で親の承諾が必要と言われ、家に電話をされてしまい、親にバレて怒られました(笑)。
中学、高校と進学する中でも、「女優さんになる」という夢は変わらず、根拠はなかったけれど、ならなきゃいけないという感覚がずっとあって。とはいえ、ドラマを見て研究したり、演技の勉強をしていたわけでもなく。本格的に芝居を学び始めたのは二十歳を過ぎてからでした。上京して仕事を始めた当初は苦難の日々でした。やるべきことをやらずに「なりたい」という感覚だけで進んできたから課題が山積みで、自分の甘さを思い知る羽目に……。
初仕事は舞台だったのですが、発声の仕方も台本の読み方も知らず、何もできなくて演技指導の先生にずっと怒られていました。それまでの人生でこんなにも自分を否定されたことはなかったので、悲しい、辛い、悔しいの感情でいっぱいでしたね。
でもきつい状況になっても辞めたいと考えたことは一度もなかったから、役者になりたいという自分の想いは嘘じゃなかったと気づくこともできた。たくさん否定される中でも「先生に認めてもらいたい」という気持ちが強かったので、心が折れることもなかったです。当時はすごくキツかったけれど、あの経験があったからこそ、キャリアを重ねてこられたと思います。

年齢を考えて諦めたほうがいいのかなと思ったこともあったけれど

この仕事をスタートした頃は、同世代の役者が表に出て活躍している現実が常にありました。周りを見て焦りを感じたこともありましたが、そこと比べていたら同じ場所には辿り着けない、と思いました。
私の場合はスタートが遅く、役者として積んでおくべき経験もしていないし、課題もたくさんある。活躍されている方々が私にないものを持っているのは当然で、そもそも同じラインに立っていないのに戦おうとしても負けるなって。自分の現状を卑屈に捉えるのではなく、同じ土俵で戦えるようになるまで頑張ろう、と鼓舞していました。
自分の年齢を考えて「ここまでにした方がいいんじゃないか」と考えることもありましたが、その度に「次までやってみよう」という自分なりの目標を設定して…。誰に言うわけでもなく、「来年は舞台を踏む」とか「映像作品のオーディションに受かって映画に出る」という目標を胸の中に置いて、クリアできたら次のビジョンを考える、ということを繰り返してきました。どんな状況でもへこたれずに続けてこれたのは、「自分を変えたい」という想いもあったから。
実は学生時代まで人と上手く話せず、笑っても顔が引きつっていて、人に対してどう接したらいいかわからなかったんです。高校を卒業したあたりから、そんな自分でいるのが苦しくなり、殻を破りたいなと思い始めて。
実際に芝居の稽古場で「そんなんじゃ役者なんてやっていけないよ」と自分を否定されたときは、悲しくて悔しかったけれど、すごく刺さったんですよね。自分すらも上手く生きられない私が他人を演じるなんて無理だなって。生きづらかったし、自分を変えたかった。それを芝居に託していた部分もありました。

桜井ユキ
1987年2月10日生まれ、福岡県出身。24歳のデビュー以来、演技派女優として注目を集め、話題のドラマや映画に多数に出演している。2019年に放送された主演ドラマNHK「だから私は推しました」では、第46回「放送文化基金賞」演技賞を受賞。4月から放送するカンテレ・フジテレビ系ドラマ「ホスト相続しちゃいました」(毎週火曜23:00~23:30)では民法連ドラ初主演を務める。

撮影/永峰拓也〈SIGNO〉 ヘアメーク/岡田知子〈TRON〉 スタイリング/李靖華 取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc