「顔をうかがう」と「顔色をうかがう」どちらが正解?語彙力クイズ5つ

日本語には似た表現、まぎらわしい表現が多くあります。

誰しも、勘違いしたまま覚えている言葉があるものです。

自分ではこう言うのが当たり前だと思っていても、他の人に違和感を抱かせているかもしれません……。

この記事では2択形式で、ふさわしい表現を選ぶ問題を用意しました。クイズで語彙力アップを目指しましょう!

 

(1)「うかがう」のは?

A:店長の顔色をうかがう。

B:店長の顔をうかがう。

「顔色」の「色」は、赤い顔をしているとか、土気色をしているとか、そういう本当の色のことだけを意味しているのではありません。

様子や表情というニュアンスを持っています。

機嫌がいいかどうかを探っている意味では、顔に表れている雰囲気を見ようとする「顔色をうかがう」が適切です。

 

正解:A(「顔色=様子」に注意を払う)

(2)「満面の」につながるのは?

A:あの子は満面の笑顔を浮かべた。

B:あの子は満面の笑みを浮かべた。

「満面」は顔じゅう、顔全体のこと。

だとすると、「笑顔」をつなげると、「面」と「顔」が同じ意味で重なってしまいます。

「頭痛が痛い」「上を見上げる」のような重複表現です。こういうのを「重言」(じゅうげん・じゅうごん)と呼びます。 話し言葉の中ではつい出てきてしまうものですが、文章の中では避けましょう。

 

正解:B(満「面」の笑「顔」だと重複する)

(3)「腫れ物」扱いの意味はどちら?

A:彼に対しては、皆、腫れ物に障るよう、よそよそしく接する。

B:彼はすっかり腫れ物扱いで、誰にも相手にされていない。

「腫れ物に触るように」「腫れ物扱い」という表現は、炎症を起こして腫れてしまった部分、いわゆる「できもの」を恐る恐る触るような態度をいいます。

「どうだろう?痛いかな?大丈夫かな?」とビクビクしながら触れるのです。

ですから、よそよそしく、気を遣って接する状況のことで、完全に避けてしまったり、無視したりする意味ではありません(その意味で使う人も増えてきてはいますが……)。

 

正解:A(腫れ物にはビクビクしつつも「触る」のです)

(4)「顎が落ちる」のはどういう時?

A:彼の話に笑い過ぎて顎が落ちる。

B:料理が美味しくて顎が落ちる。

美味しい時、「ほっぺたが落ちる」という言い方があります。

それと同じように、「顎が落ちる」も、美味しさを強調する慣用句です。 大笑いし過ぎて顎が、という場合には「顎が外れる」という表現を使う方が一般的です(一部方言を除く)。

 

正解:B(美味しいときに顎が落ち、笑い過ぎると顎が外れる)

(5)「予防線」の使い方、どちらが正解?

A:変な期待を持たれないよう、予防線を引く。

B:変な期待を持たれないよう、予防線を張る。

もとは戦いに関係する言葉。見張りなど、敵の攻撃や侵入に備えた手立てのことでした。

そこから転じて、失敗したり責められたリしないよう、あらかじめ備えておくこと全般をいうようになりました。

「予防線を引く」と使ってしまうのは、「一線を引く」(近付かれないよう距離を置く)など他の言いまわしとの勘違いでは?

 

正解:B(予防線は「張る」もの)

 

細かい違いですが、そこをしっかり理解していれば、自信を持って言葉を使うことができます。

今ならスマホのWEB検索で、簡単に意味を調べられる時代です。

他の人の使う言葉に「ん?」と違和感を抱いたら、こまめに意味を調べてみて!

語彙力をアップしていきましょう。

 

文/吉田裕子 
国語講師。塾やカルチャースクールなどで講師を務める他、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK Eテレ)に国語の専門家として出演するなど、メディアでも活躍中。東京大学教養学部卒。

画像/Shutterstock(miya227、 Selenophile) 参考書籍/吉田裕子『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)