“あの子”の「麦味噌カルボナーラ」とウイスキー【クリス-ウェブ 佳子さんとお酒】

【Episode.03】
喫茶店で教わったカルボナーラのレシピ

文=クリス-ウェブ 佳子
Yoshiko Kris-Webb

 

「100グラムに対して1個が目安です」とポツリ。お会計の最中に突然小さな声でそう言ったのは、私の行きつけの喫茶店で働いて6年目になる男の子、ではなく男の人。いつまでたっても拭えないのが第一印象とは言え、30歳になる男性を“男の子呼ばわり”するのはいい加減やめなくちゃ。

それはつまり、“100グラムのパスタに対して卵1個”という意味で、カウンターで私が投げかけた質問を覚えていてくれた彼が親切にも帰り際に教えてくれたカルボナーラの基本レシピでした。

数年前に仕事で愛媛県宇和島市を訪れたとき。取材先を探しがてら、カメラマンと二人して椰子の木が生い茂る宇和島駅周辺を散策していると、住宅街の一角に味噌屋を発見。突然の訪問にもかかわらず、快く取材に応じてくださった井伊商店のご主人の人柄とお世辞抜きに美味しい麦味噌に感動した私は、定期的に1キロ入りの麦味噌を10袋取り寄せては、近しい人たちに布教活動のごとく配っています。

17年来の付き合いになる喫茶店のオーナーにはもちろん、そこで働くスタッフにも配り済み。そして、前出の彼がその井伊商店の麦味噌を使って試作したのがカルボナーラというわけなのです。

カリカリに揚げたパンチェッタと茹でたてのパスタが入ったフライパンに、あらかじめ少量の湯で溶いておいた大さじ1杯の麦味噌を投入。全体に麦味噌が馴染んで香りがたったら火から下ろし、全卵1個とパルメザンチーズ大さじ2杯と黒胡椒を混ぜ合わせたものを回しかけてよく混ぜる。麦味噌の甘みがカルボナーラをより濃厚に、そして風味豊かに仕上げてくれる一品です。

そして麦味噌カルボナーラに合わせたいのは、やはり同じ麦を原料としたお酒。“とりあえずビール”も良いけれど、本気でおすすめしたいのは大麦麦芽(モルト)のみを原料としたシングルモルトウィスキー。

シングルモルトは同一の蒸溜所で瓶詰めされるため、蒸溜所ごとの個性が色濃く出るので自分好みを探る楽しさがあります。フルーティーさ、甘み、スモーク感のバランスが絶妙なベンロマック(BENROMACH)10年をハイボールで。もしくは世界で最もピーティー(泥炭の香り)でスモーキーなアードベッグ(ARDBEG)をロックで。この組み合わせはまさに罪。ウィスキーをロックやストレートで楽しむ際には、クリスタルガラス最高峰のメゾンブランド、ラリックの滑らかなサテンクリスタルのタンブラーが出番です。

ちなみに、ウィスキーにとってニンニクは天敵だと個人的に思っているので、カルボナーラはニンニク抜きが鉄則。最近ウィスキーを嗜むようになったあの子に、今度それを教えてあげよう。っと、“あの子”って呼ぶのもよくないな。

Profile

クリス-ウェブ 佳子

VERY専属モデルを経て、現在はジャンルを超えて執筆業、ラジオDJ、インテリアコーディネーターなどマルチに活躍。ワインから日本酒、そしてウィスキーなどハードリカーも嗜み、それに合わせて世界を旅して出会った味をヒントにささっと作るセンスのいいおつまみが家族や友達から大好評。著書に『TRIP with KIDS―こありっぷー』(講談社)、『考える女(ひと)』(光文社)。

Illustratied by Przemek Sobócki (プシャメク•ソブツキ)
プロフィール撮影/YUJI TAKEUCHI〈BALLPARK〉

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