【林遣都さんインタビュー】舞台出演に向けて“プライベートな素顔”に迫る!
ドラマや映画、舞台で活躍している俳優の林遣都さん。9月3日から上演される舞台『友達』の出演を機に、CLASSY.ONLINEで前・後編にわたってインタビューをお届けします。今回は上演に向けての思いに加え、プライベートな素顔についてお話を伺いました。
――安部公房の戯曲『友達』を、新世代をリードする劇作家・演出家の加藤拓也さんが手がける“不条理劇”。出演の決め手は何でしたか?
「舞台は、人が第一です。今作は演出が加藤さんですし、共演の方々はいつも舞台で目を奪われるような方ばかりで、ぜひ参加したいと思いました。それに加え、難解な作品には必ず学びがありますし、この作品もきっとまた自分に新しい何かを与えてくれるはずだと思いました。“不条理劇”は初めてですが、いつの時代にも日常生活に通じるものが必ずあって、今のこの世の中に生きる人たちが見ても人それぞれの解釈を持って楽しめることができるんじゃないかと感じています。全体的に不気味な陰湿な内容で進んでいくと思いますが、見る人それぞれで見えてくるもの、考えさせられるものがあると思います」
――演出と上演台本を担当する加藤拓也さんについての印象はいかがでしょうか?
「加藤さんの演出は本当に楽しみです。ここ数年、周りの方からも若くて面白くて話題の演出家がいらっしゃるとよく聞いていました。僕よりも年下の演出家さんは初めてですが、実際に加藤さん演出の作品を観劇したときは、度肝を抜かれました。今回、加藤さんの元でやれるのは楽しみすぎて想像がつかないです。加藤さんの演出でどんなエンタテインメントになっていくのか、予想できないことばかりだと思うので、今はそれに対するワクワク感でいっぱいです」
――林さんが演じるのは、ある男の部屋をあっという間に占拠する9人家族の長男です。
「9人それぞれが理不尽な人たちですが、そのなかでも僕が演じる長男はより“悪”な部分を持っていて、直接的に人を苦しめるような攻撃的な要素を持っている人物なのかなと思います。図々しい家族の話なので、舞台の上のアパートの一室で図々しく生活をするような感覚でお芝居ができればと思っています」
――“図々しい”とか“攻撃的”とか、林さんのイメージにはない役ですね。
「いやもう、むちゃくちゃ図々しくやりたいです(笑)。イメージにないことをやるのは楽しいです。俳優という仕事の一番の快楽なのかな。自分とかけ離れたところで感情を解放するような役は楽しいです」
――共演は、「ある男」役の鈴木浩介さん始め、浅野和之さん、山崎一さん、キムラ緑子さんとそうそうたるベテラン勢が並びます。
「鈴木浩介さんと初めて共演させていただけるのも楽しみですし、山﨑(一)さんは何度か出演舞台を拝見させていただいたときに目が離せなかった方なので、間近でお芝居を見られるのはすごく楽しみです。浅野(和之)さんや(キムラ)緑子さんはもはや、“舞台の神様”とか“モンスター”とか異名がついている方達なので(笑)。そんな方々が何人もいらっしゃるのでご一緒できることが楽しみです」
――‘07年のデビュー以来、俳優としてのキャリアは今年で15年めとなりますが、主に映像作品に多数出演してきた林さんにとって、舞台の魅力ってなんでしょう。
「とにかく時間をかけてお芝居というものを追求できるところに魅力があると思います。初めて舞台に出たときからそれはずっと変わらないですし、もちろん鍛錬の場だと思っています。映画もそうですが、自分が観に行くときも劇場って特別な空間だなと感じさせてくれますし、日々のいろんなことを忘れて非日常に連れていってくれる。無くなってはいけない空間だなと、コロナ禍の今、特に感じるようになりました。演じるときも観るときも想像することを楽しませてくれるというか、人間の体一つの表現と音や光、美術でいろんなことを想像させてくれる。舞台の大きな魅力だと思います」
――今年は1~2月に公演された『フェードル』以来、2作目の舞台となりますね。
「僕は舞台の稽古の時間がすごく大好きで、ずっとやっていられるなという感覚でして。『フェードル』で大竹しのぶさんと初共演したときは、決められた稽古時間を超えて、いつまでもお芝居の話、役の話、作品の話を何の垣根もなく話し続けてーー。スタッフの方々にはご迷惑をかけたかもしれないですが(苦笑)、自分が夢中になれるお芝居というものに貪欲に向き合えるのが舞台の稽古場だなと感じました」
――舞台以外のお話も聞かせてください。林遣都さんといえば、穏やかでシャイなパブリックイメージがありますが、役柄の幅広さもあって正直なところミステリアスな印象です。実際はどんな方ですか? ご自身で思う性格を教えてください。
「うーん……。って、なっちゃうような感じの考え込みやすいタイプです(笑)。でも悩んだり考え込んだりするわりには強いこだわりとか思想とかはあまりなくて。一晩寝たらいろんなことを忘れますし、結構おおざっぱです。そしてボーっとしてることも多いですね(笑)。人からは…“気にしぃ”というか、いろいろ気にし過ぎると言われるかな。人の気持ちとか様子を気にしちゃうので、優しすぎるともよく言われます。実際に、それで悩むこともあります」
――優しすぎて、厳しいことを人に言えないとか?
「そうですね。ここはちゃんと言ってあげなきゃいけないことが言えなかったり。でも日々、改善しようと努力はしてます!」
――俳優としての理想像はありますか?
「俳優というより一個人として、僕自身に興味を持ってもらえるような人でありたいなと思います。仕事以外の時間も大事だと思っているので、常に日々を豊かにしていろんな経験をして、積み重ねていければなと思っています。やはり何かをやり続けている人達って、例えば役者さんなら演劇全般に詳しいように物知りな方がとても多いんです。自分も時間を大事に使っていろんなことを身に付けて、しっかりと年齢に恥じない大人でありたいと思います。深みのある人間でありたいというか、年齢を重ねれば重ねるほどそれは役にも出てきてしまうと思うので。
理想の俳優って言うのは……難しいですね。僕たちが子供の頃に見ていたテレビやスクリーンの向こう側の人という感覚からはどんどん変化してますし。SNSの存在もあって、出る側と見る側との距離がすごく近くになっている感じがしています。それはいいことだと思うのですが、僕が今思っているのは、自分の仕事であるお芝居をしたとき、その役に最大限に集中してもらえるような俳優でいられたらなということですね」
PROFILE
‘90年12月6日生まれ 滋賀県出身 血液型O型●‘07年、映画『バッテリー』の主演で俳優デビュー。同作品で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞、第81回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞など多くの新人賞を受賞。最近の主な出演作は、ドラマ「世界は3で出来ている」「姉ちゃんの恋人」「ドラゴン桜」、映画『私をくいとめて』、舞台『熱帯樹』『風博士』『フェードル』など。主演映画『犬部!』が現在公開中。公開待機作に映画『護られなかった者たちへ』、『恋する寄生虫』がある。
舞台『友達』
小説、戯曲、映像作品と幅広い分野で活躍した安部公房の戯曲『友達』を、気鋭の若手演劇人・加藤拓也が大胆に切り込む。ある夜、ひとりの男の日常に忍び寄る、見知らぬ“9人家族”の足音。彼ら家族はあっという間に男の部屋を占拠してしまう……。特異で不思議な人間関係を、ベテランから勢いある若手まで多彩なキャスト陣が演じる。
作/安部公房
演出・上演台本/加藤拓也
出演/鈴木浩介 浅野和之 山崎一 キムラ緑子 林遣都 岩男海史 大窪人衛 富山えり子 有村架純 伊原六花 西尾まり 内藤裕志 長友郁真 手塚祐介 鷲尾真知子
企画・製作/シス・カンパニー
[東京]2021年9月3日(金)~26日(日)新国立劇場 小劇場
[大阪]2021年10月2日(土)~10日(日)サンケイホールブリーゼ
https://www.siscompany.com/tomodachi/
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衣装:
ブラウンジャケット¥89,100、ブラウンパンツ¥42,900(ともにアンバー/スタジオ ファブワーク tel.03-6438-9575)サックスブルーストライプシャツ¥39,600(ヨーク/エンケル tel.03-6812-9897)ソックス・シューズ/スタイリスト私物
撮影/イマキイレカオリ ヘアメーク/竹井 温(&’s management) スタイリング/菊池陽之介 取材・文/駿河良美 編集/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)