【小泉進次郎環境大臣インタビュー】|環境のためにまず“何か一つ”、行動を起こしてほしい
今、世界では地球温暖化、海洋汚染、大気汚染など、環境問題が大きく取り上げられ、日本でも“SDGs”という言葉がかなり身近な存在に。実は私たちの毎日のワードローブとも関係の深いファッション業界も環境負荷が非常に多い産業だと言われています。小泉進次郎環境大臣インタビュー第2回目は、ファッション分野にとどまらない環境問題全体についての課題や、次世代のために私たちにできることについてお話をお聞きしました。
−−前回はファッションとSDGsについてのお話を中心に伺いました。もう少し幅を広げて環境問題について考えた時に、読者の皆さんに知ってもらいたいことは何でしょうか?
「環境問題って難しいイメージだけど、取り組んでみると楽しいし、身近な私たちの暮らしの中に生活をより豊かにするヒントがいっぱいあることを知ってほしいですね。身近なところから国レベル、世界レベルの環境問題に繋がっているのが環境問題ですから。ファッションロス、食品ロス、エネルギーロス…。多くのモノやエネルギーを海外に依存する日本は海外に巨額の支払いを重ねているのに大量に捨ててしまったり、無駄遣いをして大量のロスを生んでいる。1回目のインタビューでお話した“クリーンなエネルギー”への思いに繋がりますが、再生可能エネルギーの導入を増やして海外から輸入する化石燃料を減らし、海外にお金を支払い続けるのではなく、もっと日本国内で次世代への投資が循環するような経済、社会を作っていきたいと思っています。それはエネルギーやファッションだけでなく、食など私たちの生活に密接な分野に繋がる話でもあります」
−−食の分野でいうと、どんなことが問題なのでしょうか?
「日本では食材、食料品も大量に輸入し、大量に廃棄されています。WFPという国連の食料支援団体が貧困国の子どもたちに1年間に支援している食料の総量は約400万トンです。日本はなんと、年間約600万トンもの食料を廃棄しています。世界全体で1年間に食料支援されている量の、実に1.5倍の食料を日本は廃棄しているんです。これが、食品ロスの問題で、環境省でも対策を強化中です」
−−日本だけでなく世界中で気候変動による大災害が頻発しており、2030年までにどれだけ温暖化を食い止めるられるかが非常に重要だと言われています。「温室効果ガス削減」「脱炭素化」という言葉もよく耳にします。環境問題に関して個人で意識できること、貢献できることはなんでしょうか?
「たとえば、皆さんのご自宅の電力契約を再生可能エネルギーに変えることを検討してほしいです。再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出しない、クリーンなエネルギーです。1回目のインタビューでも“何か一つ行動を起こしてほしい”と言ったのは、一つ行動を起こすと、次の行動に繋がるからなんです。自分自身も環境大臣になってから、生活のスタイルを相当変えました。マイボトルやマイバッグを持つようになり、次はマイカトラリーを弁当と一緒に持つようになりました。あとはスタッシャー(編集部注※プラスチックフリーで繰り返し使えるシリコンバッグ)も愛用しています。レンジでも冷凍庫でも湯煎でも大丈夫だし、何度も使用できてとても便利です。今日はスイカを入れて持ってきました(笑)。なるべく使い捨てのものはやめたい、という意識に変わりました。使い捨てのものをやめるというのも、個人で貢献できることの一つですよね」
−−やはり“一つの行動”、がキーワードですか?
「自分自身と環境問題への取り組みを考えても、最初の“一つ行動を起こす”ことがきっかけでした。私は一つ行動を起こしたことで、“次に何ができるかな”と考えるようになりました。もっと環境に負荷のかからないことをしたいと思うようにもなり、一つ一つ切り替えていくことが楽しくなりましたね。私たちの生活が環境に大きな負荷を与えている事実を突きつけられ、大臣として大きな課題を抱え、世界とも向き合う中で、まずは自分自身が変わらなくてはいけないと強く実感しました。なので、皆さんにも何か一つでも行動して、変化を起こしてもらいたい、そして、自分自身の変化も楽しんでもらいたい、そう思っています」
−−自分の子どもたちや次の世代のために環境問題を解決したい、という読者層にもアドバイスをお願いします。
「どんなことも“自分ごと”としてとらえ、考えることが重要だと思います。私自身、環境問題が自分ごとに変わった一つのきっかけは、自分が生まれ育った神奈川県横須賀市の街と環境問題が繋がった時でした。私は横須賀の海を身近に感じて育ちました。学生時代はサーフィンもやっていたし、海の恵に生かされていると感じて、海からものすごく力をもらっていました。今でも自分にとって息抜きになったり、嫌なことがあったときに救われるのは、浜辺で潮風を浴びている時です。
でも、地球温暖化で海面が上昇し、今世紀中に日本の80%以上の砂浜はなくなると言われています。“自分の息子や次の世代は、もしかしたら砂浜のない横須賀の海を見ることになるのでは”と思うと、そんな未来を少しでも食い止めなければならないと強く感じました。生まれ育った街の海と、気候変動、海洋汚染、海洋プラスチックといった環境問題が全部繋がったときに、自分ごととしてとらえられました。皆さんそれぞれ、自分の趣味や生まれ育った街…日々の生活の中や人生の中で、きっと何かと環境問題が結びつく物語があるはずです。私の場合は横須賀の海でした」
−−最後に、“一つ行動”した後の、さらにもう一歩先のことについてはどうお考えですか?
「自分が起こした行動について発信することです。そうすることで周りにも行動を起こす人が広がっていきます。SNSでも、クチコミでも、家族や友人との会話の中でも、ぜひ話題にしてみてください。『日本で売っている服の98%は輸入だって知っていた?』『ファッションロスって知っている?』。そんな小さなきっかけが一人一人の行動の連鎖を巻き起こし、大きな変化に繋がっていくと信じています。『一人の百歩より、百人の一歩』。一緒に行動し、発信していきましょう」
小泉進次郎
環境大臣 気候変動担当、内閣府特命担当大臣(原子力防災)、衆議院議員 (4期)。1981年神奈川県横須賀市生まれ。関東学院大学経済学部卒業後、2006年米国コロンビア大学院政治学部修士号取得。米国戦略国際問題研究所 (CSIS)研究員を経て、衆議院議員小泉純一郎氏秘書を務めた後、2009年8月衆議院議員初当選し現在4期目。2019年9月、環境大臣 兼 内閣府特命担当大臣(原子力防災)に就任。翌年、環境大臣 兼 内閣府特命担当大臣(原子力防災)に再任。2021年3月より気候変動担当大臣を兼務。
環境省が制作した「サステナブルファッション」についてのサイトもぜひチェックにしてみてください。
撮影/平井敬治 取材/中津悠希 構成/中畑有理(CLASSY.編集部)