病気を持つ子どもの”きょうだい”たちが安心の中で過ごせるよう、ボランティアグループを立ち上げました

本来、大人が担うような介護や家事の責任を負っている子どもは「ヤングケアラー」と呼ばれていますが、日本では、まだ実態は把握しきれていません。子どもであるがゆえに、行政に相談したり、支援を求めたりするすべを知らず、孤独な闘いをしている子どもは少なくありません。今回は、そんなヤングケアラーを見守り、支えようと活動しているみなさんから、お話をうかがいました。

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清田 悠代さん(45歳・大阪府在住) NPO法人しぶたね理事長

「きょうだいさんたちの心の安定につながるように困ったら相談先があるよと伝えていく活動を続けていきたいです」。

病気を持つ子どもの「きょうだい」たちが
安心の中で過ごせるように「ひとりじゃないよ」と伝えたい

清田悠代さんの弟は心臓病を患っていました。「弟が入院している病院に行くと、感染予防のために病棟に入れない幼いきょうだいたちが廊下で何時間も過ごし、小さな女の子が廊下と病棟を隔てるシートの前で母を求めて何時間も泣いて過ごしていることに大きなショックを受けました」。この子が泣かずにすむためにできることはないのだろうかと思った中学生の頃の気持ちが芯になっています。

その後、弟は亡くなり、同じ立場の人に会いたいという思いからきょうだい支援の世界につながりました。心の片隅にずっと残っていた、あの小さなきょうだいたちのためにできることがあるのではという気持ちが再び歩き出す力になり、アメリカで広く行われている、きょうだいのためのワークショップ「シブショップ」のファシリテーター養成講座の中で講師のマイヤーさんが「君はひとりじゃないよ」と子どもたちに声を掛けるのを見て、日本の小さなきょうだいたちにも「ひとりじゃない」と伝えたいと思い、2003年ボランティアグループとしてしぶたねを立ち上げました。

病気のある子どものきょうだいのためのワークショップ、病院ボランティア活動、小冊子の作成配布、寄稿・講演、4月10日の「シブリングデー(きょうだいの日)」に合わせた啓発、支援者向けの研修などを通してきょうだいを応援しています。「小学生の時にイベントに来てくれていた子が大人になり、お母さまが突然倒れてしまって連絡をくれたことがあります。病院に駆けつけると私に抱きついて、ひとしきり泣いて、『やっと自分のための人が来た』と言ってくれました。お母さまは亡くなってしまったのですが、障がいのある弟くんのケアに携わることになるだろうと仕事を辞めることを決めており、その後いろいろな調整の結果、仕事を辞めずにすんだのですが、きょうだいの人生がこんなにも不安定なことに改めてショックを受けました。この時の、社会が変わってほしいと思った気持ちが法人化して活動を広げることを決めた理由のひとつです」。

社会を構成するひとりの大人として、サポートの手が届いていない状況があることを申し訳なく思っていると話す清田さん。「苦しい時、だれかに話してみようかなと思った時につながれる先が増えるように、同時に、ヤングケアラーの状況を想像できる人、必要があればサポートにつないでくれる人が増えるように…子どもたちがみんな一人の子どもとして大切にされるように、家族の人生も守られて当たり前の空気が広がるように、考え続けたいと思っています」。

いつも支えてくれているボランティアの皆さんと久しぶりに顔を合わせることができ、話も弾みます。
きょうだいさんには無料で配布している「きょうだいさんのための本」。「きょうだいさんたちが、親御さんや周りの大人の人と一緒に書き込んだり、寝る前の読み聞かせする本の一冊として選んでいただき、ちょっと甘えるきっかけになったり、愛情を伝えあえる時間につながったらいいなと思っています」。
「『しぶたね』専属レンジャーときょうだいさんたちが遊べる活動をしています。大事にされている、自分のことを見てもらえると感じてほしいです。現在は毎週金曜日にリモートで活動をしています」。

撮影/長谷友貴 取材/加藤景子 ※情報は2022年3月号掲載時のものです。

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