女優・夏帆さん「20代になり自分で作品を選ぶようになったことが、転機になった」
良質な作品に出続けて、順調にキャリアを積み上げてきたように見える夏帆さん。〝ずっと、この仕事でいいのかと悩んでいます〟との言葉にとても驚きました。俳優という仕事に真摯に向き合っているからこその迷いと悩み――。その解決方法は、きっと私たちにも参考になるはずです。
基本、悩んでいますが「仕事も人生の一部でしかない」と思えるようになって気持ちがラクになりました
ジャケット¥90,200パンツ¥50,600(CURRENTAGE/MELROSE Co.,Ltd.)シューズ¥77,000(forme)ピアス¥8,900(yoaa)その他スタイリスト私物
作品を自分で選ぶようになってから、意識が変わりました
この世界に入ったのは、小学生のときに原宿でスカウトされたことがきっかけでした。声をかけていただくまで、芸能の仕事をするなんて考えたこともなく、自分とは関係のない世界だと思っていたので、とても驚いたのを覚えています。
最初は雑誌や広告の仕事がメインで、徐々にお芝居の現場が増えていき今に至ります。当時は子どもだったし、俳優を志して自分で選択したわけでもなかったので、何が何だかよく分からず戸惑うことも多かったですね。ありがたいことにすぐに仕事をいただけましたが、言われたことをやることに必死でした。自分がやりたいことや好きなものが確立される前にこの仕事を始めたので、人や作品に出会う中で自分の価値観が出来上がっていった感じです。デビュー当初から、遊びではなく仕事という意識はありましたが、20代に入ったあたりから、さらに自覚が芽生えてきました。
転機になったのは、20代になり自分で作品を選ぶようになったこと。たとえ同じ仕事でも、最終的に自分の意思で決めるかどうかで、取り組む姿勢が変わってくると思うんです。責任感も高まるし、自分でやると言ったからには言い逃れもできない。仕事に向き合う意識が変わるタイミングにもなりました。
好きを大事にしていることは変わりないけれど、20代は好みが偏っていたかもしれません
自分が好きだと思えるか、ワクワクするか、を基準に仕事を選んでいますが、20代はそこも迷っていて、試行錯誤していました。今振り返ると20代の頃は好みが偏っていましたね。これはできないって思い込んで頭が固かったし、基準も狭かったと思います。30代になった今は、だいぶ柔らかく考えられるようになりました。自分で限界を決めずに、柔軟な人間でいることは目標でもあります。
5年後も好きなものを大切にしながら、楽しく仕事を続けているのが理想。ただ、20代の5年と30代の5年は重みが違うな、と感じています。今何を選ぶかによって5年後が大きく変わる気がするので、その都度その都度で模索しながら、自分も周りも心地いい選択をしていきたいです。
夏帆さん
1991年生まれ。東京都出身。2007年、主演映画「天然コケッコー」で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数々の新人賞を受賞。以降も多くのドラマや映画、舞台で活躍。2015年には映画「海街diary」で、第39回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。最近の出演作に、フジテレビ「silent」、Netflix「First Love 初恋」、日本テレビ「ブラッシュアップライフ」がある。8月26日からは、舞台「いつぞやは」に出演。〈東京公演〉8月26日〜10月1日シアタートラム、〈大阪公演〉10月4日〜10月9日森ノ宮ピロティホールwww.siscompany.com/itsuzoya/
撮影/秋山博紀 ヘアメーク/秋鹿裕子〈W〉 スタイリング/李 靖華 取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc