39歳で出産【山口真由さん】卵巣年齢に驚いて妊活をはじめるまで

 

大学教員、コメンテーターなど多方面で活躍し、今年39歳で出産したことでも話題の山口真由さん。30代で受けた検査で自身の「卵巣年齢」に驚き、妊活を始めたものの、なかなか子どもを授かることができず、焦りや不安を感じることも多かったそう。子どもをもつことについての心情の変化や出産後の生活についてお聞きしました。

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「私の卵子の状態は?」と気になったのがきっかけ

 

──著書には、30代での卵子凍結の経験も書かれています。20代から30代にかけて、子どもをもつことに対する考え方はどう変化しましたか。

 

36歳の頃、友人たちと海外の卵子凍結事情について話していて「私の卵子はどういう状態なんだろう」と気になりました。まずは調べてみようと、卵巣年齢を知る手がかりとなる「卵巣予備能(AMH※抗ミュラー管ホルモン)」値の検査をしたんです。検査結果は、「卵巣年齢が閉経時期に近い50歳相当」という同世代の平均値と比べても大幅に低い数値でした。しかも、その数値は基本的に改善することは少ないと知ってがく然としました。当時お付き合いしているパートナーもいなかったし、結婚の予定もなかったのですが、今より状態がよくなることは見込めないなら、少しでも早い段階で卵子凍結をしておいたほうがいいのではないかと考えました。

それまでは出産についてあまり深くは考えていませんでした。「いずれ結婚して、子どもを産むだろう」くらいに漠然と考えていました。40代に入ってから出産する芸能人の話も聞くので、心のどこかで「まだ間に合うはず」と思っていたんです。

 

 

「産めないかもしれない」と不安になった夜も……

 

その後、病院のセミナーなどに通い、不妊治療の中で卵子凍結は決して妊娠率が高い方法ではないと知りました。しかし、他に有効な手段はほとんどありません。「もしかしたら、自分は子供をもたない人生を送ることになるかもしれない」と不安を感じることも増えました。夜にふと目を覚ましてそのまま眠れなくなることも。もしも「産まない」人生を選んだらこれまで何世代も昔から連綿と受け継がれてきた「繋がり」から、自分が永遠に排除されることになるのではないか。それでもいいのかと自問したんです。

今になって考えれば、自分と血の繋がった子どもをもつことだけが「次の世代に繋ぐ」ことであるとは言えないし、子どもをもたない選択をされた方も様々な方法で次世代のために一生懸命に活動されていることを知っています。あくまで、当時の私はそういう思いにとらわれていたということです。

ちなみに、現在は卵子凍結について賛成でも反対でもない中立的な立場です。女性の人生の選択肢や出産の可能性を広げる一方で、採卵する際は体に負担もかかりますし、凍結しておけば必ず子どもが持てるというわけではないので、採卵さえできれば安心とはいえません。メリットとデメリットを理解して選択したほうがいい手段だと思っています。

 

「母になること」だけがゴールではなかった

 

──今年出産されましたが、出産前と後で気持ちの変化はありましたか。

 

地球温暖化やエネルギー問題などの社会問題が、これまでよりもクリアに見えるようになり視野が広がったように感じました。自分の死後も自分の子どもやそれ以降の世代が生き、彼らの人生が連綿とつながっていくと思うと、日常生活もこれまでとは少し違う見え方になりましたね。

卵子凍結をしていた当時、なかなか採卵がうまく進まなくて、追い詰められるような気持ちになった時期がありました。街で同年代くらいの女性を見かけると、「この人はお子さんがいるのかな」といちいち気になりました。「あんなきれいな人でも、自分と同じように子どもがいないのならば親近感が湧く」というように、ものすごくネガティブに世の中を見ていたんですよ。

子どもが生まれてからは、当然ですが母親になることが唯一のゴールではないことが改めて分かりました。そこからさらに長く果てしない道があるんですよね。

できることなら、かつての私のように子どもがいるかいないかで相手をジャッジしたり、壁を作ったりするのではなく、互いの辛さや弱さをもっとちゃんと開示して分かり合える環境があるといいなと思います。不妊治療している人も、出産を考えていないのに「子どもはまだ?」と言われる人もつらいけれど、母親になった人だって異なる悩みやつらさを抱えています。様々な立場の人の気持ちがようやく分かるようになった気がします。

あのころの私も、そういうことに気付けたら、子どもを連れている母親を見るたびに恨みがましい視線を送ったりすることもなかったし、ベビーカーを押す女性に気持ちよくエレベーターを譲ることもできたと思います。当時は焦りや不安もあり、自分のことでいっぱいいっぱいで、そこまで思い至ることができませんでした。

 

預けるなんて「子どもがかわいそう」とは思わないと決めました

 

──出産後、仕事と育児をする中で感じることはありますか。

 

子供を預けて働きに出ることに心理的な抵抗はあるものの、物理的には可能です。私は母乳育児をしているので胸が張り、どうしても仕事の合間も搾乳をしなくてはならないのですが、その時間や場所を確保することがまず大変だし、心理的につらいと感じることはありますね。移動の新幹線のトイレで搾乳した母乳を捨てていると「こんなところで一体何をしているんだろう」と感じてしまうこともあります。

また、出産後の女性の社会復帰が当たり前になった現在も「まだ小さいのに預けるなんてかわいそう」という声はまだまだ多いと痛感します。私は、子どもがかわいそうとは思わないようにしようと決めているんです。信頼するベビーシッターさんにお願いして、外出時もベビー用モニターで見守りながら、働きに出ている。環境を整えた上で、子どもを預けている時間は「自分の都合で子どもにかわいそうなことをしている」とは思わないようにしようと決めました。

もちろん「かわいそう」と言う人が悪意をもって言っているわけではなく、母親と子を気遣う気持ちもあるのは分かります。でも、「心配だから」という理由で女性が働きに出ることを咎められたり、「他人任せにせず母親が育児をするべきだ」と言われたりするのは違うと思うんです。

これまでは、家庭や家族は子どもを育てる「箱」としての機能をもっていましたが、その箱の中だけで育児をするのは難しいことは多くの人が気づいていると思います。これからは子育てがもっと社会に開かれて、いい意味で子育てを社会でシェアできるといいなと思っています。

 

PROFILE

山口真由(やまぐちまゆ)

1983年生まれ、北海道出身。2006年に東京大学を卒業後、財務省に入省。その後弁護士事務所を経てハーバード大学ロースクール卒業、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。現在は信州大学の特任教授として教壇に立つかたわら、テレビでのコメンテーターとして「羽鳥慎一 モーニングショー」(テレビ朝日)、「ゴゴスマ」(CBCテレビ)などに出演中。著書に『挫折からのキャリア論』(日経BP) 『前に進むための読書論』(光文社新書)など多数。

取材・文/正伯遥子

写真/古本麻由未

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