【井上芳雄さん】舞台『メディア/イアソン』で初めてギリシャ悲劇に挑戦!【スペシャルインタビュー】
広く知られている「王女メディア」の伝承をベースにした新たなギリシャ悲劇『メディア/イアソン』。メディアの夫でありタイトルロールのイアソンを演じる井上芳雄さんがCLASSY.ONLINEに初登場! 2回にわたりお届けするスペシャルインタビュー前編では、意外にも井上さんにとって初のギリシャ悲劇作品という今作への意気込みについてお聞きしました。
――今回の舞台『メディア/イアソン』のオファーが来たときの気持ちをお聞かせください。
まず、「演出の森 新太郎さんとご一緒できる!」と喜びました。一度お仕事をさせていただいたことがあるのですが、その時にまたいつかご一緒したいと思っていました。次に、「ギリシャ悲劇は初挑戦だぞ」と少し不安が過りました。ギリシャ悲劇というと蜷川幸雄さんや大竹しのぶさんの舞台のイメージが強く、「僕があのような大きな渦に巻き込まれてやっていけるのか?」と思ったんです。でも、今回は新たなギリシャ悲劇を構築するということなので、やってみようと思えました。わからないことだらけですが新しいことに挑戦できることは嬉しいことだなと思い、オファーを受けさせていただきました。
――演出の森 新太郎さんの印象や心に残っているエピソードを教えてください。
『謎の変奏曲』という橋爪 功さんとの二人劇で初めてご一緒したのですが、森さんはとてもエネルギッシュなのでくらいついていかないと。僕はあまり集中力が長く続かなくて、稽古期間中は開始時間ギリギリに行って、終わったらすぐに帰るタイプなんです。でも、森さんは誰よりも早く稽古場に入って最後まで残っているんです。あれは脅威でしかありませんでしたね(笑)。稽古も森さんはどんどん進めたくなるのですが、僕はその日の稽古予定の台詞しか覚えていかず、「すみません、僕の台詞はここで打ち止めです」ということもありました。今回は予定範囲よりも多く台詞を覚えていこうと思っています。とにかく、森さんも、僕たち出演者も、たくさんエネルギーを使うと思うので、体力をつけて年明けからの稽古に臨みたいと思います。
――井上さんが演じるイアソンについて教えてください。
現時点で台本は前半のイアソンとメディアが出会うところまでしかできていないのですが(※取材は11月)、現代を生きる自分たちとギリシャ悲劇の登場人物であるイアソンたちとの距離を感じないんです。すごく昔の遠い国の物語ですが、現代まで受け継がれている名作はどれもそうなんですけれど、違和感なく感情を投影できるのが面白いです。でも、この先はどうなるのかな? 前半はメディアと楽しい時をすごしていますから、それが覆って、結末は予期せぬ展開になってほしいんですけど、無理かな(笑)。メディア役の南沢奈央さんもやわらかい優しい感じの方なのでこのままでいてほしいのですが、女優さんですから変わってしまうんでしょうね(泣)。でも、変化していくのが今回の舞台の面白さだと思うので、覚悟して読み進めたいと思っています。
――タイトルロールのおふたり人に加えて3人の出演者、全部で5人です。少人数で演じることについてはいかがですか?
出演者が足りないので、増やしたほうがいいんじゃないかと思っています(笑)。少なくとも倍は必要なんじゃないかなというくらい登場人物がたくさんいる台本なんです。公演までにまだ時間がありますから追加のキャスティングを進めてほしいです(笑)。若い演者ばかりなのですが、おじさん役や重鎮のキャラクターも登場します。僕と南沢さんは一人一役だと思いますが、他は残りの3人のキャストがすべて演じるのかな? 闘いのシーンもあって、蜷川さんだったらコロスを30人くらい登場させると思うんですけれど(笑)。森さんはどんなことをたくらんでいるんだろう?! とても楽しみです。3人が大変なことだけは確かですが、力のある俳優さん達なので信頼しています。
――今回の舞台で目標にしていることや楽しみにしていることはありますか?
僕の勝手なイメージなのですが、ギリシャ悲劇というとコロッセオみたいな野外劇場で朗々とやるものだと思っていたんです。皆さんの中にも、少しはそんなイメージがあるのではないでしょうか? でも今回はそうではないギリシャ悲劇ができたらいいなと思っています。このカンパニーで新しいものを作るわけですが、大変なこともたくさんあると思うけれど、最終的にいいカンパニーだったよねと言えるようになりたいです。
――最後に今回の舞台を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。
ギリシャ悲劇と聞くと自分とは縁がないように感じる人が多いと思いますが、今回は新たなギリシャ悲劇という、いい意味での驚きがある作品です。構えることなくカジュアルな気持ちで観に来ていただけたら、何か受け取っていただけるものがあると思っています。新しい舞台をこのカンパニーとお客様が作り上げるという、ワクワクした気持ちでいらしていただけたら嬉しいです。
『メディア/イアソン』
【原作】『アルゴナウティカ アルゴ船物語』作:アポロニオス 翻訳:岡道男 『メデイア』作:エウリピデス 翻訳:中村善也【脚本】フジノサツコ【演出】森新太郎【出演】井上芳雄 南沢奈央 三浦宏規 水野貴似 加茂智里【日程】3月12日(火)~3月31日(日)世田谷パブリックシアター 4月4日(木)~6日(土)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
井上芳雄
‘00年にデビュー以来、高い歌唱力と存在感でミュージカルや舞台を中心に活躍。コンサートや音楽・バラエティ番組への出演ほか、近年ではMCを務めるなど活動の場を広げ『美しい日本に出会う旅』『はやウタ』『行列のできる相談所』などにレギュラー出演中。近年の主な出演舞台は『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』『ジェーン・エア』『エリザベート』『ガイズ&ドールズ』『ベートーヴェン』など。
撮影/平井敬冶 ヘアメーク/大和田一美 スタイリング/吉田ナオキ 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)