カルティエ50周年となる2024年「より良い社会・幸福度の高い社会」とは?カルティエ ジャパンCEO 宮地純さんに聞く 

女性としてこれからのキャリアについて悩むSTORY世代。’22年に女性活躍推進法が改定されてからはますます女性の活躍が期待され始め、徐々に女性管理職比率も高くなってきています。個人として評価され活躍される女性リーダーの方々には、キャリアの狭間で自身の生き方を見つめ、可能性を信じてチャレンジする姿がありました。今回ご登場いただくのは、2020年8月にカルティエ ジャパン日本人女性初のCEOに就任された宮地純さん。彼女のこれまでとこれからのSTORYをご紹介します。(全2回の2回目)

▼インタビュー前編はこちら

宮地 純さん
カルティエ ジャパン プレジデント&CEO

京都大学法学部卒業後、外資系証券会社に入社。フランスのビジネススクールINSEADでMBA取得後、ラグジュアリー業界でのキャリアをスタート。2017年リシュモン ジャパンに入社し、カルティエ ジャパン マーケティング&コミュニケーション本部長に就任。’20年8月から現職、日本人女性がCEOに就任するのはカルティエ ジャパン初。


 

「カルティエが行う社内環境作りの様々な取り組み。私自身、その恩恵を受け、より働きやすい環境で仕事を任されていると感じています」

STORY編集部(以下略)――2020年、カルティエ ジャパン プレジデント&CEOに就任された宮地さん。就任当時、お子さんは3歳と1歳。しかも3歳は双子……。

就任が決まったと同時に、家族会議を開き、どうしたらうまくいくのかということを話し合いました。子育ては年齢によって大変さの内容も変わっていくように思います。現在は双子が7歳で下の子が5歳ですが、成長するにつれて彼らの感情と向き合うことに大変さと大切さを感じることがあります。

――感情と向き合うというと?

例えば、私が仕事で家を空ける時などに子ども達が感じる寂しいという感情。「どうして家族より仕事を選ぶのか?」という質問を投げかけてきます。赤ちゃんの時の大変さとは、違う段階に入った感じですよね。

――そういう質問をされると困ってしまうことありますよね。どのように対応されるのでしょうか?

どうしてそれが自分にとって大切かを説明するようにしています。先日もフランスでの会議がありました。すると子どもたちは、「フランスではなく日本ではだめなのか?」と、やはり海外出張はかなり多いので。「僕たちはどうしてついていけないのか?」なんて質問も。本当に色々なことを聞かれます。彼らの質問から考えさせられることもあります。

――興味深いのは、その話をされている時の宮地さんがとても楽しそうなこと。子ども達の質問に困るのではなく、楽しんでいらっしゃる様子ですね。

面白いですよね。母の背後には会社というものがある。会社というものに対して、「一体どうなっているんだ?」とか、「なぜ会社というものは家族のことを考えないのか?」と。子どもなりの見方って面白いと思うんです。本当に三者三様で面白い。子育ては多くの人の手を借りながらも、基本的には彼らとの時間をとても楽しんでいます。

――国内外を飛び回り、日々忙しくされている企業トップの立場である宮地さんが、「子育てを楽しんでいる」という姿はとても素敵で心強く感じます。

カルティエでは世界各地にある拠点のうち、私を含め半数以上が女性トップなんです。グローバル会議に参加しても半分は女性というのは心強く感じます。カルティエでは社内教育の一つとして女性幹部向けのトレーニングをはじめ、環境作りに対する様々な取り組みを行っています。私自身、その恩恵を受け、より働きやすい環境で仕事を任されていると感じています。社員も同じように感じてくれていたらいいなと思いますね。

フランス・パリで開催された2023年度カルティエ ウーマンズ イニシアチブの授賞式。女性起業家のエンパワーメントを通じた変革の推進を目的に、2006年の創設以来、63カ国297人の女性たちを支援。 2023年はテーマを「世界をよくする力」と掲げ、全世界の9つの地域別と、「サイエンス & テクノロジー パイオニア アワード」や「ダイバーシティ エクイティ & インクルージョン アワード」などからなる11のアワードの受賞者が発表された。

――こういった取り組みを行うカルティエが今後社会に示していきたいこととは?

タイムレスなクリエイションを生み出すメゾンとして、いかにクリエイティビティを醸成するような環境や組織を作っていくかというのはとても大切だと思っています。そもそも、創業当初から非常に先駆的な企業だと思うので、現代においてどういう形で私たちが作り上げていくか? ということを問われているのかなと。その上で「DEI」、「Diversity(ダイバーシティ、多様性)」「Equity(エクイティ、公平性)」「Inclusion(インクルージョン、包括性)」という従業員それぞれが持つ個性を最大限発揮できることやエンパワーメントは、とても重要な要素だと思います。

「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」 のパース©Cartier

――2025年大阪・関西万博では2020年ドバイ万博に引き続き二度目の「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」の出展をされるということですが、万博という場に出展する意義とは?

今までは、見たことのないような技術革新が万博開催の大きなテーマだったと思います。国が競って新しい技術を披露するような側面がありましたが、昨今の万博ではテーマがSDGsというような、一国・一社では解決できない、地球規模の課題に対してみんなで英知を寄せ合う、取り組む。色々な考えやアイディアを交わし、発信する場なのかなと感じています。万博の意味合いが時代と共に変わってきている中で、ドバイ万博で“ウーマン”というテーマでパビリオンを出展したことは革新的だったのではないでしょうか。世界中の官民や様々なステークホルダーが集まる万博において、新しい切り口でみんなと考える、気づきを持ってもらうというのは大きな意義があると思っています。

――2024年、日本で最初のブティックをオープンしてから50年の節目を迎えるカルティエジャパン。企業人としてでも、個人としてでも結構ですので、今年のテーマみたいなものをお聞かせください。

50周年という節目の年に考えるテーマは「繋がる」です。今までの50年を作り上げてくださったお客様、パートナーの皆さんとの繋がり。また万博においても、“ウーマンズ パビリオン”を通してどれだけの人と繋がれるかも大きなポイントです。パビリオンの大きなテーマである“ウーマン エンパワーメント”は、日本においてはまだまだ発展途上。意識を持っている人は実はたくさんいらっしゃるのですが、その人たち同士が繋がっていない。社内では、次の世代のためにみんなで繋がってモメンタム(勢い)を作っていかなきゃいけないよね! という話をよくするんです。

日本で最初のブティックをオープンしてから50年目、ブランドのアイコンのひとつである“トリニティ”誕生100周年、そして万博開催まであと一年。会社としても、ブランドとしても、様々なことに取り組み、チャレンジする機会は多いです。2024年を大いに楽しみたいと思っています。

撮影/BOCO 取材/上原亜希子

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