理想は35歳まで?自分のため、娘のために知っておきたい最新「卵子凍結」事情
世界最大の不妊治療大国であるという日本。仕事と子育てのライフバランスに悩み、出産が高齢化することで、多くの方が不妊に苦しむという免れられない実情も。でも選択肢のひとつとして「卵子凍結」を知っておけば、自分のため、次世代の子どもたちのために役立つかもしれない。最新の「卵子凍結」事情を伺いました。
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お話を伺ったのは……
グレイスグループ 取締役社長 丸山祐子さん
日本初の卵子凍結保管サービス「グレイスバンク」を運営する株式会社グレイスグループ取締役社長。東京大学大学院修士課程修了。野村証券、クックパッドなどを経て2017年~ポピンズシッターの代表取締役を務め、2023年8月、グレイスグループに参画。7歳の女の子のママ。
日本は世界最大の不妊治療大国
STORY編集部(以下同)——最近、よく耳にするようになった「卵子凍結」ですが、実際にされる方は増えてらっしゃるのでしょうか。
はい。年々増えております。日本は、残念ながら世界最大の不妊治療大国と言われています。晩婚、共働きの増加から、妊活のスタートが遅れ、まずは自然治療→その後不妊治療へと進むため、必然的に出産が高齢化します。年間の出生数が70万人台に対し、年間の体外受精の件数は約50万件となっています。不妊治療を経て体外受精での出産の成功率は14%、7万人なので、残念ながら不妊治療の成功確率は決して高くなく、多額の治療費がかかり、精神的にも経済的にも負担を抱えた後、結果子どもを授かることができなかった……。という悲しい結果が多く見られるのが現状です。
妊娠・出産が難しくなる要因としては、若いうちからの婦人科系疾患へのケア不足や卵子の老化があります。日本では、女性の健康予防や妊よう性(妊娠する能力)のリテラシー不足があると捉えおり、弊社では積極的に啓発活動に取り組んでいます。卵子凍結という選択肢により、できるだけ卵子年齢が若い時期に凍結し、将来妊娠する可能性を残すことで、一人でも多くの女性の未来の選択肢を増やすことができたらと考えております。
「卵子凍結」を行うなら35歳までが理想
——「STORY世代」といわれる30代後半以降の自然妊娠の確率はやはり低いのでしょうか?
もちろん個人差はあるのですが、あくまでデータ的に言いますと、例えば2人お子さんを持ちたいと思った場合、34歳から妊活を始めた場合の成功率が75%と言われています。30歳までの1回の生理周期の自然妊娠率は約30%、35歳だと18%、40歳になると5%にまで下がります。ちょうど働き盛りである30代半ばから、「妊よう性」は急速に低下すると言われています。
——とてもシビアな数字ですね。妊娠って本当に奇跡なんですね。
妊娠の鍵となるのは卵子の量と質で、卵子が若ければ体外受精をすることで、40代での出産でも20代と大きく変わらないデータがでています。卵子凍結は全員にとって必要なものではなくあくまで選択肢なのですが、するならできるだけ若いうちにしておくことがおすすめです。ですから、できるだけ早く、できれば35歳までに卵子凍結をしておくのが理想的と言われています。卵子凍結をされた方からは、「30代になり将来子どもは欲しいけど、今はパートナーがいないため決断。卵子凍結したことであせらず婚活できるようになった」「現在パートナーがいるが、今しかできないため留学をしたく、渡航前に卵子凍結した」など、自身のキャリアアップやライフプランの選択肢を広げることができた、という声をいただいています。
——もしかしたら実際に使わないかもしれませんが、卵子凍結しておくことで保険というか、精神的に安定が生まれますよね。採卵はどのように行われるのでしょうか?
まずは卵巣や子宮の状態をチェックし病気がないかなどを確認します。その後、生理後に排卵誘発剤を使い卵子を育て採卵、その中から成熟卵のみを凍結し、専用のタンクで保管します。弊社の保管システムでは、ケーンと呼ばれる専用容器1本あたり卵子を最大15個まで保管することができますが、一回の採卵で取れる卵子の数も個人差があります。数年後、子どもを持ちたいと思ったタイミングで卵子を融解(解凍)し、体外受精を行う場合の融解率や体外受精の受精の確率をふまえ、10個以上保管しておくことが望ましいです。採卵自体は麻酔をするので痛みの感覚には個人差がありますが、半日程度で終わるため、休みなどは取らずそのまま出社される方もいらっしゃいます。
東京都で卵子凍結の助成金がスタート。企業の福利厚生にも
——確かに働き盛りの30代前半ですと産休&育休に踏み切れない方が多かったり、第二子が欲しくても一度職場復帰することで、また産休育休を取りづらくなってしまいつい先延ばしに……。そんな話もよく聞きます。
最近では福利厚生の一部として卵子凍結の費用を負担する企業も増えてきています。例えば、優秀な社員が妊活のために長期間苦労して退職するといったことは会社にとっても損失。優秀な人材を確保する上で、「卵子凍結」という選択は個人にとっても企業にとっても有益になるわけです。
——具体的に卵子凍結に関する費用的にはどのくらいを目安に考えればよいのでしょうか。
初診、検査、採卵凍結まででおよそ40万円。その後、弊社グレイスバンクでの保管費用が年額3.85万円※となります。東京都にお住まいの18歳~39歳までの女性は、昨年から、初年度上限20万円、次年度以降、1年ごとに2万円(最大5年)の助成金が受けられるので、モデルケースで言うと、実際のご自身の負担額は初年度が20万円強。5年間は差額の2万円が負担額となります。企業の福利厚生がある方は両方で補助が受けられるため、初年度はほぼご自身の負担はなくできる場合もあります。
※2024年4月〜の「グレイスバンク」新料金。初期費用別途5.5万円。
——今、娘さんが中高生なんていうSTORY世代の方は、子どもの将来の選択肢として大いにありえることですよね。親世代も次世代も背景と現状をしっかりと理解しておくことが大切ですね。
実際に弊社が行っているセミナーに母娘で参加される方もいらっしゃいます。ライフプランや仕事など、この先の人生を自分で決めていくために、なるべく本人が納得のいく選択を……。そのためには「卵子凍結」という選択肢もある。というような親御さんからのメッセージになってもらえたら嬉しいです。
無料ドクターズセミナー、個別相談はこちらから可能です。
https://gracebank.jp/category/seminar/
卵子凍結保管サービスGrace Bank
撮影/光文社写真室 取材/石川 恵
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