【アラサー女子のお悩み相談】「子供は欲しいけどキャリアが心配です」プロの回答は?

子供を持つ将来を考えつつも、産休や育休期間、そして育児によって積み上げてきたキャリアが崩れてしまうかもしれない…そんな不安を抱えているCLASSY.世代。子供を育てながら自分の人生を自分で動かすために、今からできることを考えてみませんか?

不安が絶えない産休・育休・子育てのこと…

復職したら元いた場所に戻れるのか、まわりは子供を持つママに寛容なのか、保育園に預けられなかったら…。未知なる仕事と育児の両立についてそれぞれが考える不安を聞いてみました。

    復職したら元いた場所に戻れるの

    育休明けに自分のポジションが誰かに奪われているかも
    「復職後、後輩にポストを取られていた人がいて…頑張って手に入れた席を誰かに奪われるなんて絶対に嫌だと思ってしまいます」(A・Yさん)

    復職したら元いた場所に戻れるの

    「子供がいるから」という理由で、責任のある仕事を任せてもらえない?
    「ママになると、今まで参加できていた大きなプロジェクトや責任のある仕事を任せてもらえないイメージがあります」(R・Cさん)

    復職したら元いた場所に戻れるの

    時短勤務になると月々の給料が下がるけどそれでやっていけるのか…
    「子供の送迎を考えると、時短勤務は致し方なし。収入が落ちることも覚悟しているけど、本当にやりくりできるかな…」(N・Kさん)

    復職したら元いた場所に戻れるの

    「保育園が見つからない」とよく聞くけど、本当に預け先がなかったらどうなるの?
    「保育所の待機児童が増えているニュースを見るたびに、預け先がなかったらどうしようという漠然とした不安に襲われます」(N・Hさん)

実際、今の日本で出産・育児で女性のキャリアは止まってる?

コンサルタントとして多種多様な企業を見てきた経験から働く女性のキャリア構築を研究されている山田さんに日本社会における出産とキャリアの考え方について取材しました。

今は、「男性が働いて女性が家庭に入る」ことで回っていた従来の社会から、新しいフェーズへの転換期。新しいシステムを作るのは私たちの「声」です

第一子を出産した女性の産後復職率は?

産後に復職している女性が増えて

産後に復職している女性が増えているものの、有職者のうち約3割が出産を期に退職をしていることを表すデータも。復職率のうち、育休利用者は約4割。
出典:2021年国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」(結婚と出産に関する全国調査)2021年
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/doukou16_gaiyo.asp

〝正解〟はない社会の転換期会社に残るか、転職するのか「決断」できる自分になろう

今いる会社に子供を持つ女性向けの制度が整っていなくても、それはあなたのせいではありません。そこで出てくる選択は、会社に残るのか、制度が充実している会社に転職するか。
まずはその会社にどのような制度があるのかを自分でしっかりと確認しましょう。外部から見たら育児をしながら働くための制度が揃っているように見えても、実は社員が制度を使えておらず、形骸化してしまっているケースも多くあります。わからないことをそのままにして産休に入り、復職してから後悔する方が本当に多いという現状もあり…人事担当者だけでなく、実際に働く現場の人たちのリアルな声を聞くなど、決断に必要な情報は自分で取りに行く姿勢が必要です。
また、属している会社をつい絶対的なものとして捉えてしまいがちですが、会社はあくまでもあなたのキャリア形成の手段の一つに過ぎません。自分の持つ資質や可能性を発揮できるのは今所属している会社だけではないということを忘れずに、自分の得意分野を言語化し強化していくことで、産後のキャリアプランの幅がグッと広がります。

育児と自分のキャリアを両立している先輩は不安をどう乗り越えた?

    今いる会社に子供を持つ女性向け

    安藤藍さん(34歳・サービス関連会社勤務)
    一人で抱え込む必要なし!支援制度を活用しながら仕事と両立させています
    当初は2年ほど育休を取る予定でしたが、復職するなら母子ともに早めに社会に慣れておこうと自分のなかでの考えが変わり、産後8カ月で復職することに。実家が離れていて親に頼れないぶん、国・自治体・会社の子育て支援制度を活用しながら、フルタイム勤務と育児を両立させています。
    1歳の息子は体が弱く、週に1回は風邪を引いてしまうのですが、会社の先輩に教えてもらったシッターの育児補助を利用するようになり、生活が一変!仕事でどれだけ大事な予定があろうと、子供の体調だけはコントロールできないので、シッターさんには本当に助けられています。おかげさまで、産前の仕事への自己評価が100だとしたら、今は80くらいの状態で働くことができています。子供が3歳になる頃には元の出来高まで戻せる気がしています。

    今いる会社に子供を持つ女性向け

    金澤唯さん(36歳・外資系IT関連会社勤務)
    産休中のキャリアへの不安は〝努力した〟経験で解消しました
    新卒で入社した会社では、当時の自分の年齢や環境的にも結婚や出産というイメージは持てていませんでした。27歳の時、キャリアアップのため転職した会社でバリバリ働くママたちに出会い、長期目線でキャリアを育てていくという感覚に変わっていきました。ただ、なかには出産した翌日から働くような超人的な方も多くて。もともと自己肯定感が高くなかった私は、仕事と育児の両立に対して漠然とした不安もありました。
    でもなんとかして頑張りたい自分もいて、妊娠した際にずっと考えていたMBAにチャレンジしたい!と夫に相談。「受験に合格できたら育児も全力でするし、応援する」と言ってもらい、産休前から全力で勉強し、出産後に合格を勝ち取りました。MBAを取得したのはスペインの大学院で、コロナ禍ということもあり基本的には自宅から授業を受講し、スペインにはどうしても出席が必要なタイミングに計4回ほど出向きました。途中復職もしたので、育児、仕事をしながらの勉強はハードでしたが、この時期に培った「努力した経験」は今でも自分の糧になっています。まわりがキャリアを積み上げていくなか、産休に入る自分に焦る気持ちもありましたが、その期間を逆手に取ってMBAを取得したことで産前よりパワーアップした自分に自信が持てたし、その後の転職活動にも大きく役立ち、今もやりたい仕事ができています

誰もが子供を産んで育てながらキャリア形成を続けるために私たちが今できること

自身も出産とキャリアの葛藤の経験がある社会学者の富永先生と女性のキャリア構築を研究するコンサルタントの山田さんに出産未経験のCLASSY.世代が今できることをお聞きしました。

私たちは会社や社会に対してもっと図々しくなっていい!

富永先生(以下、敬称略):大学の教員として働く私が妊娠・出産を秘匿していた理由は、誰かにポストを剥奪されてしまうのではないかという恐怖と、母になることで、仕事上自分の見られ方が未来永劫変わると思い込んでしまっていたからでした。
山田さん(以下、敬称略):女性はこれまで積み上げてきたキャリアが一気に崩れてしまうかも…と不安になってしまいますよね。
富永:でも、いざ復職してみると、自分が思っていた不安はさほど現実にならなくて。私は自分が積み重ねてきたものをあまりに軽く見ていて、自分自身を取り替え可能な存在だと思いすぎていたのかもしれません。
山田:日本の女性にはまだまだ「私にはこの程度の仕事しかできない」と一歩引いた状態で働いている方が多く見受けられます。それは、女性自身が働く上での強みをきちんと理解していないことが原因になっていて。自分の存在意義を知り、まわりにも認識してもらうことで、女性がもっと働きやすい環境に変えられると思っています。
富永:社会学者としては、本来会社や社会が制度をきちんと整備して不安を解消するシステムを用意していないといけないのに、なぜ産む側がここまで気にしないといけないんだという憤りもありますが、たとえば会社員は労働力をもって会社に貢献しているわけですから、「自分は会社の役に立ってやってる」くらい図々しく思ってもいいと思っています。休む権利、働き続ける権利を求めることが、結果として自分も後続の人々も大切にすることにつながると思います。
山田:誰かに認めてもらうために必死に頑張るよりかは、自分がなぜそこで働くのかという目的を重視して優先しつつ、それをちゃんと実現できる自分であることも大事です。

連帯感を持つことで私たちはもっと強くなれる

富永:一人で戦ったり頑張ることには限界があるので、同じ属性の人と不安を共有し、不安を声にしていくことが新しい制度を作る一歩になりますよね。
山田:あとは、励まし合える仲間を持つことも大切。今の日本社会は個人評価だけではなく、チームで新しい価値を生み出そうという「共創」の思考を重要視しています。お互いに気づいたことを伝え合える関係が女性のキャリアに関する悩みを改善すると考えています。
富永:たとえば産休に入る同僚にも「いつでも戻ってきてね」など、優しい言葉を掛けると、その言葉が未来の自分を救うことになります。連帯できる環境を自ら作ることも大切なのかもしれません。

撮影/杉本大希 取材/岸本真由子 再構成/Bravoworks,Inc.