千堂あきほさん(55)「キャリアを捨てた」と言われた北海道への移住で得られたものとは

移住や二拠点生活に憧れや興味があっても、いざ生活を変えるとなると躊躇し、なかなか踏み出せないものです。今月は新しい土地に根付き、自分にとって大切なことを見つけた方々の移住LIFEを取材。心地よい居場所で、輝く笑顔とともに、自分らしく生きる姿が見られました。

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千堂あきほさん 55歳・北海道在住
女優、タレント

2011年 北海道・札幌に移住

「キャリアを捨てた」と言われますが
移住で人間力を高めることができました

「学園祭の女王」と呼ばれ、女優としてトレンディドラマに出演。深夜番組ではMCなど幅広い分野で活躍された千堂あきほさん。現在は、夫と2人の娘とともに北海道の大自然の中で仕事と子育てを楽しんでいます。「夫の実家がある北海道には、いずれ来ることがあるのかもしれないという予感はありました」。

そんな、ぼんやりとした思いが確かなものへと変化したきっかけ。それは、東日本大震災と2人目の出産時でした。「当時は西宮に住んでいましたが、北海道へ里帰り出産中に震災にあいました。『一人暮らしの義母をそのまま置いて帰ることが正しいのか…』そう自問し、子育てを第一に北海道で生活していこうと移住を決意したんです」。

昔から何をするにも、流れには逆らわず受けとめてきたという千堂さん。その先に動き出した新しい発見をポジティブに捉えることが得意だといいます。

「移住したことで、その時だけしか見られない子どもの成長を目の前で見ることができました。振り返ると長い人生でいちばん良いタイミングでの決断だったと思います。知り合いもいない環境だったので、長女の幼稚園のお母さんたちが初めての友達。新しい出会いに臆することなく、関係性を作っていくことが私は苦じゃないんです。〝千堂あきほ〟でいる前に、この子たちの母であり、若くして子どもを出産している人は先輩ママ。歳やキャリアは関係なく、子育てや近所のゴミ捨てについても『何でも教えてください』という気持ちで接してきました」。

北海道に移住して今年で13年。「人の手が加えられていない雄大な自然が北海道の魅力。一歩外に出たら四季を五感で感じられます。食べ物も美味しく、魅力がいっぱい! それなのに、地元の人たちはその北海道ブランドにあまり気づいていないんです。都内にいれば広い公園は有料が多い。でも、北海道では広い空間に子どもたちを『行け~』と放牧できる(笑)。私から見て新鮮に思うことも、地元ではそれが当たり前。だからPRできないんですよね。そこで、私が立てた目標は良さを外部発信するための仲間作り、そして北海道を客観的に見て、日常的に感じていることを受けとめて次に繋いでいくこと。目下、私のいちばん楽しい時間は北海道ブランドとして、開拓余地のある商品開発を考えることなんです」。

移住をしたことで増えた取材で「キャリアを捨てること」に関しての質問をされることが多いという千堂さん。「自分が積み重ねてきたキャリアは人に取られるものではありません。むしろ『子育てを第一優先にシフトチェンジすることがプラスになる』と思うと、キャリアを温存することに焦りや迷いはありませんでした。それよりも『子育てをしながら人間力を高めていくことが自分の財産になる』と思ったんです。それはお金では買えないし、東京で働き続けていたら得られるものではありませんでした。雪かきをして『雪キツい!』と感じ、目の前で起こることを楽しんで子育てしてきたことが、今は間違いではなかったと心から感じています」。現在は東京の仕事が入ると、「東京に行けるんですか」と思い、北海道へは帰る感覚だそう。「13年前は時代的に東京から離れたら都落ちしたと思われていましたが、移住前の自分には『なるようになるよ』と言いたいですね。偶然この環境になりましたが、今は広い場所を探して家を建てたいんです。ゼロからコミュニケーションを取ることでできた仲間たちと一緒に野菜を育て、バーベキューをしながら心地よく過ごせる場所を作っていくことが理想です」。

’19年に北海道漁協女性部応援大使に。「漁港のお母さんたちに『浜めし』のおいしい魚料理の作り方を教えていただいています」。
大漁旗のリメイクワンピースで式典に参加。
バッグも大漁旗のリメイク。「浜のお母さんが作ってくれた一点ものです」。
家庭菜園で青首大根を収穫。「収穫は家族の大切な年間行事。土いじりや収穫の時間を共有できたことは財産です」。
北海道を代表する風景が望める「幌見峠ラベンダー園」で。
「平野ノラさんが、テレビで私のモノマネをやってくれました(笑)。娘たちはそれをネタに笑っています」

<編集後記>千堂さん発信の北海道ブランドに期待しています!

若い時と変わらない姿の千堂さん。ナチュラルな魅力がプラスされ、取材中には素敵な家族と仲間に囲まれる日常が目に浮かびました。「前例がない」という言葉に敏感で、時に自分を客観的に見て冷静に判断してきた千堂さんだからこそ、移住に辿りつけたのかも。「もう私も道民(笑)」と笑う千堂さんは北海道に溶け込んでいました!(ライター 孫 理奈)

撮影/BOCO 取材/孫 理奈 ※情報は2024年5月号掲載時のものです。

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