作家・新川帆立さんインタビュー!仕事も結婚も諦めない主人公の物語【着回しDiary】
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小説雑誌『SFマガジン』編集部からの持ち込み企画がきっかけで実現した、人気作家・新川帆立さんと「着回しDiary」のコラボレーション。脚本執筆と撮影に関わった感想、そして物語に込めた想いを伺いました。
”結婚は「安心して自分らしくいられる装置」と
捉えるのもいいんじゃないかなと”
――新川さんはCLASSY.の「着回しDiary」ファンとお聞きしました!脚本執筆と、撮影にも参加した感想を教えてください。
そうなんです!なのでお話をいただいた時は「本当に私が書いていいんですか?」という喜びと畏れ多い気持ちと気合いが交互に押し寄せました(笑)。CLASSY.の着回しはいい意味でベタでありながら、ウェルメイドじゃない感じが良くて。シナリオって「話をきれいに閉じよう」とか「上手いって思われたい」という色気を出すと読者にバレてしまうものなんですが、CLASSY.はベタなことも思い切り振り切る勢いがすごいなと…!だから私も、大人しくならないように気をつけて書かせていただきました。
さらに今回は『SFマガジン』とのコラボ企画ということで、SFファンの人たちにも楽しんでもらえるように意識しました。しかも、ずっとファンだった山本美月さんに演じていただけて感激!撮影中の皆さんはテキパキしていてまさに〝シゴデキ〟そのもの。勢いとエネルギーに圧倒されました。ファッション誌なのに「服は見えなくていいです」なんて言いながら進めているのも面白かったです(笑)。現場もちゃんとエンタメしているというか…!作り手が楽しんで作っているから、読み手側にも伝わっているんですね!毎回話題になる「着回しDiary」はこんな楽しい現場から発信されているというのを目の当たりにしました。
仕事と結婚、両方手に入れる主人公と
優しいだけじゃなく、ソリューションを提示する彼
――物語の結末は、月と地球で遠距離婚!という驚きのラストでした。
CLASSY.世代は、人生の変化に戸惑い悩む時期だと思うんです。仕事も楽しいけど、そろそろ結婚も…?と考えたり、人生を左右する出来事が多いですよね。そして、何かを選択したら何かを諦めなければならないような気持ちになってしまいがち。選択に必ずケチが付くというか…。仕事を選ぶと、「家庭はいいの?」、家庭に入ると、「仕事はいいの?」といったように。まるで100点が取れないゲームみたい!だから「やりたいことはひとつも諦めないでほしい」という願いを込め、人生に対して前向きなCLASSY.世代の弾けるようなエネルギーに乗せて、全部叶えられたらいいな!という気持ちで書き上げました。まさに超新星爆発の圧倒的なパワーがイメージ。
――みづきとタツキ。どんなカップル像をイメージしましたか?
タツキはみづきの研究熱を応援していたから、通信システムの開発を頑張っていたんだと思います。今の時代のパートナーは、ただ優しく慰めたり寄り添ってくれるだけじゃなく、ソリューションを提示してくれる男性像がいいなって。愚痴や話を聞いてくれるだけで、実際に頑張るのは女子!みたいなのは嫌だなと。二人で一緒に暮らしていく上で、女性側が関係維持を頑張るだけでなく、男性側も参加したり責任を持って動いてほしい…という私の願望が反映されているのかもしれません。
――新川さんはパートナーと事実婚をされているそうですが、そのお話を伺えますか。
夫とは大学時代からの友人で、大学も院も就職先も同じなんです。ずっと同棲していたのですが、夫がお互いの関係を〝同棲している恋人〟ではなく、オフィシャルなものにしたいと。それで結婚を考えました。
ただそこでひとつ問題が…夫の苗字と私の名前の組合せがすごく悪くて(笑)。自分の小説の主人公には絶対につけない名前だなと思い、その姓になったら自分の人生の主人公を降りちゃう気がしたんです。また、夫も弁護士なので法律の知識があったことも大きいです。結婚というのは〝法律上の制度のお得なパッケージ〟みたいなものだから、それを自分たちならカスタマイズできると思いました。
女性も仕事を続けたり、お財布も別なら事実婚はデメリットが少ないと思います。結婚制度のメリットの多くは金銭面であって、専業主婦という選択をするならすごくメリットがあります。夫がいてよかったなと感じるのは、仕事などで気持ちの浮き沈みがある時も常に肯定してくれる存在がいるということ。特にコロナ禍では、夫のいるありがたみを感じました。自由に外出できない時も愚痴り合えたり、二人で感染対策を工夫したり、体調が悪い時は助け合ったり…ウイルスという見えない敵と戦っているような日々だったので、戦友みたいな絆ができました(笑)。
――働く女性にとって結婚のメリットが問われる時代。今後、「結婚」はどんな存在になると思いますか?
これは私の個人的な話なのですが…結婚して楽になったことがひとつあります。それは好きなファッションを楽しめるようになったこと。当時は気がつかなかったのですが、独身の時は「とりあえずワンピースやスカートを着ておこう」というふうに男性ウケファッションを意識していたんです。
それが結婚後は、いい意味で世間を気にしないようになり、カジュアルなファッションやヘアメークを堂々とできるようになって。オシャレに対する気持ちがすごく楽になりました。だからひとつの考えとして、結婚は「安心して本当の自分で過ごせる状態に持っていける装置」として捉えるといいんじゃないかなと。
私自身も、結婚によってキャリアが断絶したり、奥さんという役割を得ることで、漠然と自分が自分じゃなくなっちゃうような恐怖心を抱いていました。でも今振り返ると、独身の時は頑張りすぎていたり肩肘張っていたなと思うことも。私は結婚を選択した今のほうが、何も考えていなかった無邪気な子どもの頃に近いような…素の自分で楽しく過ごせています。自立している女性が増え、結婚しなくても幸せになれる時代。それでも結婚のいいところを私が挙げるとしたら――生活面というより〝心の面〟での安心、それが一番かもしれません。
作/新川帆立 撮影/北岡稔章(えるマネージメント)〈人物〉、清藤直樹〈静物〉 モデル/山本美月、前田拳太郎 ヘアメーク/室橋佑紀(ROI)〈女性分〉、佐藤 建行(HAPPʼS.)〈男性分〉 スタイリング/児嶋里美〈女性分〉、中西ナオ〈男性分〉 コーディネート/佐藤かな子 編集/月田彩子 撮影協力/AWABEES、EASE、PROPS NOW 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2024年10月号「季節と二人をつなぐ9月の着回しDiary」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。