プロサーファー【五十嵐カノア】さん、重圧との向き合い方「安心できる場所があるから、負けるのが怖くない」

数多くのタイトルを獲得し、トッププロサーファーとして活躍する五十嵐カノアさん。オリンピックという最高の舞台でも素晴らしいパフォーマンスを発揮できる強いメンタルの根底にあるのは、家族からもたらされる安心感と、自信につながる圧倒的な努力。これから受験の大舞台に飛び出す子どもたちへのヒントにもなるカノアさんのメンタル術、STORY読者必見です!(第2回/全3回)

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五十嵐カノアさんprofile

1997年生まれ。木下グループ所属。カリフォルニア州ハンティントンビーチで父親のサーフィン姿を毎日眺めて育つ。3歳でサーフィンをはじめ、2016年史上最年少、アジア人で初めてプロサーフィンの最高峰WSLチャンピオンシップに参戦。2021年東京オリンピックで銀メダルを獲得。2023年アジア最上位枠を獲得し、パリ五輪に。文武両道に優れており、英語・日本語・ポルトガル語・スペイン語・フランス語を操り、飛び級をして15歳で高校を卒業、さらに、パリ五輪の代表争いが本格化する2023年の5月、世界最難関校であるハーバード大学ビジネススクールに合格し、スクール生活をスタートさせた。

結果に関係なく、戻れる場所があるから負けるのも怖くない

僕はプレッシャーを感じないタイプで、メンタルが強いと言ってもらえますが、それは家族や仲間たちのおかげ。たとえ大会で勝とうが負けようが、家族や周りにいる友達は、何も変わらない。何があっても普通なんです。勝ちたいとは思いますが、勝たなければいけないというわけではない。そもそもプレッシャーを与えられたこともなかったですね。海から出ても、僕を迎え入れてくれる皆が変わらずそこにいることに安心感があり、負けるのが怖くないから、また次に向かっていくことができるんだと思います。僕にとって一番大切なのは、家族であり、友人であり、そして健康!自分のなかにある大切なものが分かっているから、それが力となり、自分の自信に繋がっているんです。

<span style="background:linear-gradient(transparent 87%,#FDB86D 87%)"自分がコントロールできることだけに意識を向けるように

サーフィンは自然相手、思い通りにいかないことばかりです。なんであっちに波はあるのに、こっちには来ないんだろうとか、イライラもしてしまいます。気持ちのコントロールはまだ課題ですね。競争相手に対しても、コントロールできないことがいっぱいあるから、そこにばかり気持ちを向けて、自分を疎かにするのはNGだと思っています。周りのことは考えないようにして、自分のことに集中、自分にエネルギーを注ぎ、自分への準備を万全にする…そうすれば、自信が出ると思っています。こうして言うのは簡単ですが実際は難しい。どうしても人のことを考え始めちゃう時もあるので、あ、関係ない、と自分に意識を戻します。海の中だけではなく、毎日いろんな場面で起こりうることで、思い通りにいかないこともしばしば。両親から「人には優しく自分に厳しく」と言われているので、自分がコントロールできることだけに集中しています。

予想がつかないことが起こる…だからサーフィンそしてオリンピックは面白い

自分では、どのオリンピックも似ているのだろうと思っていましたが、東京もパリも全然違っていました。練習の仕方も、気持ちや背中にのしかかるプレッシャーも。サーフィンも成長しましたし、いい経験でしたね。パリオリンピックの結果は思ったほど良くなかったのですが、大会が始まる前からこれ以上準備できないと思うくらい100%の状態でいけたのは自分にとっては嬉しいことでした。特に今年のパリは波に左右され、海との戦いにもなり、面白いチャレンジでもありました。東京オリンピックは、自分の努力で結果を出さなきゃいけないという感じでしたが、パリでは、頭で考えてパフォーマンスに集中するよりも、波と同じリズムでいい波を探して面白いチャレンジをするという感じ。今年金メダルを獲ったのは地元の選手でワールドツアーにも入っていない選手…。それがサーフィンの凄さですよね。トップのサーファーじゃないけれど、いい波につながることで、得点できる、普通のスポーツでは考えられないことが起こるんです。2度のオリンピックの経験は僕に力を与えてくれたと思いますしパフォーマンスも上がりました。これを糧に、ロサンゼルスオリンピックへもチャレンジしていきたいですね。

自分のことを信じられるように、努力しておきたいんです

自分に負けそうなとき…まぁ、ありますよ(笑)。トレーニングも勉強も毎日やるのですが、朝5〜6時に起きて、最初の5分は、きついなー、面倒だなーと感じます。やりたくないことだから今やっちゃおう!と動き出すと、すごく楽しくなってきます。つらいときこそ、今をちゃんと頑張らないといけないという気持ちが生まれるのかもしれません。前日に決めておいたスケジュールをこなしていくことが多く、このルーティンも、自分の自信につながる力になっているんじゃないかな。大会のとき、プレッシャーを感じたり緊張したりするときもありますが、その何日か前にサーフィンをやりたくない日でも頑張って準備を怠らなかった自分がいて。トレーニングもやりたくない日だって頑張って、いろいろ努力したのに、なんで今こんなに緊張しているの?と自分に問うんです。そうすると、そうだ、大丈夫!と思えて、良いパフォーマンスを発揮できるんです。だから、大事な日のために必ず努力をしたくなるんですね。その努力は実を結び、繋がっていくもの、そういう成功体験の繰り返しが自分を動かし、より高みに導いてくれるのだと思っています。

撮影/森脇裕介 ヘア・メーク/RYO 取材/竹永久美子

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