【JJドラマ部】2024年本当に面白かったドラマTOP10②【ネタバレあり】
『新宿野戦病院』(フジテレビ)公式ホームページより
2024年もあと残すところわずかですが、今年放映された推定200本(!)近いドラマの中から、ドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミの二人がそれぞれベスト10を選びました!
【コラムニスト小林久乃の2024年マイベスト10】
①虎に翼(月~金曜8時/NHK総合)
②新宿野戦病院(水曜22時/フジテレビ系)
③西園寺さんは家事をしない(火曜22時/TBS系)
④光る君へ(日曜20時/NHK総合)
⑤クラスメイトの女子、全員好きでした(木曜23時59分/日本テレビ系)
⑥春になったら(月曜22時/フジテレビ系)
⑦ビリオン×スクール(金曜21時/フジテレビ系)
⑧ライオンの隠れ家(金曜22時/TBS系)
⑨おいハンサム‼2(土曜23時40分/フジテレビ系)
⑩団地のふたり(日曜22時/NHK BS)
【元JJ編集長イマイズミの2024年マイベスト10】
①虎に翼
②不適切にもほどがある!(金曜22時/TBS系)
③海に眠るダイヤモンド(日曜21時/TBS系)
④舟を編む ~私、辞書を作ります~(日曜22時/NHK BS)⑤クラスメイトの女子、全員好きでした
⑥3000万(土曜22時/NHK総合)
⑦ライオンの隠れ家
⑧アンメット ある脳外科医の日記(月曜22時/フジテレビ系)
⑨団地のふたり
⑩西園寺さんは家事をしない
ヒューマンドラマとクライムサスペンスをそれぞれが支持
イマ:さて、ランキングも後半の6位となりますが、小林さんは『春になったら』を選んでますね。
小林:ドラマに没入するかどうかって、その時の環境に左右されると思うんですが、私の幼なじみがガンになった時期に、ちょうどこのドラマが放映されたんですよ。
イマ:それは大変でしたね。今、そのお友達は?
小林:手術も成功して快復したから観ることができたんですけど、命の尊さを実感した後だったので、本当に心に染み入りました。
イマ:ノリさん(木梨憲武/椎名雅彦役)をはじめ、俳優陣も良かったし、映像も美しかったですよね。
小林:この前、とんねるずの武道館ライブに行ったんですけど、青春時代のスターだったノリさんが、還暦超えてるのに精力的に芸能活動してるのを見てると、私も元気が出てきます。
イマ:ノリさんとか所(ジョージ)さんは、男子全員がなりたい人ですね。
小林:『奥田民生になりたいボーイ』みたい(笑)。
イマ:そして、私の6位は『3000万』なんですが、さっき環境に左右されるって話がありましたが、ちょうどこの頃、子供たちの受験やなんやかんやで我が家に全然お金がなくて…。
小林:3000万盗ったの?
イマ:そんなわけないでしょ!(笑)。でも、3000万って絶妙な金額設定だなと思いました。1億だと絵空事すぎるし、100万だと一瞬で使っちゃいそうだし…。
小林:このドラマ、最初から最後までずっとハラハラする展開でしたよね。私はずっとホラー気分で観ていました。
イマ:ラスボスの穂波悦子(清水美砂)が普通の主婦っぽかったのも怖かった。
小林:縛られてるのにも関わらず口八丁で洗脳しようとしてましたもんね。あの演技も凄かった。そして、最終回の信号を待つシーンは視聴者に結末を委ねるラストでした。
イマ:警察に行って自首するのか、自首しないで家族の元に戻るのか、はたまた詐欺集団のボスに取って代わるのか(笑)。
小林:ラストひとつ取っても、本当に脚本がよく練れていたドラマだと思います。チームで脚本を書くシステムはこういうサスペンスドラマに合ってると思うので、第2弾もやって欲しいですね。
新感覚の学園ドラマと強い絆で結ばれた兄弟のドラマが涙腺を刺激
イマ:小林さんの7位『ビリオン×スクール』はランキングには入れませんでしたが、私も面白く観ました。
小林:これも最初はノーマークでした。山田(涼介)くんがイケメンぶりを消していて、ちょっと世間とズレてる御曹司&教師の加賀美零役にうまくハマってました。木南晴夏(芹沢一花役)とのコンビも相性が良かったし。
イマ:職員室での先生たちのわちゃわちゃをはじめ、全体的にコメディータッチなんですけど、不意に泣かせるエピソードがぶっこまれるんですよね。
小林:松田元太をはじめ生徒役を演じていた若い俳優たちの勢いも感じました。こういう学園ものって『3年B組金八先生』(1979年/TBS系)が源流だと思うんですが、先生が全部お金で解決するという切り口が新鮮でしたね。
イマ:シリーズ化しても面白そう!
小林:そして、イマイズミさんが7位、そして私が8位に入れたのは『ライオンの隠れ家』。
イマ:このドラマの坂東龍汰(小森美路人役)の演技には度肝を抜かれましたよね。かつて自閉スペクトラム症の人を数々の俳優が演じましたが、彼はダントツで素晴らしかった。
小林:2024年のドラマ全体を通しても一番の演技だった思います。あとは尾野真千子(橘愛生役)のエイジレスぶり。いま『カーネーション』(2011年/NHK総合)の再放送を観てるんですけど、見た目が全然変わってないんです!
イマ:13年も前なのに…! ライオンくん(佐藤大空)も可愛かったなー。
小林:『西園寺さん』の倉田瑛茉ちゃんもそうですけど、こまっしゃくれた子役とは一線を画す、自然な演技でしたよね。もはや演技してるのかどうかもわからないくらい。
イマ:この作品、途中までサスペンス要素が強かったんですが、最終回でぐっとヒューマンドラマに傾きましたね。貞本(岡崎体育)のパーティーで洸人(柳楽優弥)がスピーチするシーンは号泣したし、三羽のウミネコのカットで終わる演出も最高でした。
小林:あの3人がハッピーエンドで終わってホントに良かったです。
令和のホームドラマと俳優が印象的だった医療ドラマ
イマ:さて、二人のランキングが割れたのは『アンメット ある脳外科医の日記』と『おいハンサム‼2』です。
小林:気楽に見られるホームドラマって最近少ないから、『おい、ハンサム‼』は貴重なんですよ。私も伊藤家のリモート会議に参加したいもん(笑)。
イマ:一家の大黒柱は一応、伊藤源太郎(吉田鋼太郎)ですが、決して威張っていないところが令和っぽいですよね。
小林:寺内貫太郎(ドラマ『寺内貫太郎一家』で小林亜星が演じた下町の頑固親父)は怒るとすぐちゃぶ台をひっくり返してましたからね(笑)。
イマ:今だったら完全にDVですね…ってたとえ古っ!
小林:基本的にシュールなコメディーなんだけど、源太郎が説教するにしてもちゃんと家族への愛を感じられるのがいい。このドラマ、サザエさんみたいにずっと続けてほしいなー。
イマ:なかなかこじらせてる三姉妹の今後を見守りたいですね。
小林:イマイズミさんは『アンメット』のどこが良かったですか?
イマ:こんなにボソボソ喋るドラマ初めて観たっていうか(笑)。ハキハキしてるのは野呂佳代(成増貴子役)くらいでしたよね。
小林:セリフの音量が良かったって話?
イマ:俳優の演技バトルが凄かった点ですかね。ボソボソ声だからバトル感はゼロですけど(笑)。演劇ファンの間では「若葉竜也が世間に見つかった」って話題になってましたけど、原作漫画を読んでいた私から見ても、三瓶先生(若葉竜也)が実在した!って感じでした。
小林:杉咲花(川内ミヤビ役)も素晴らしかったですよね。『夜行観覧車』(2013年/TBS系)で親にぶち切れるシーンが印象的で、そこからずっと注目してるんですけど、彼女には底知れぬ女優魂を感じます。今年は『海に眠るダイヤモンド』や映画『52ヘルツのクジラたち』など評価の高い作品にも出演し、GQメン・オブ・ザ・イヤー・ベストアクター賞をはじめ、数々の賞を受賞しています。
イマ:この作品は『舟を編む』同様、主人公を原作と変えているのに、世界観を壊さず、新しい視点で物語を再構築した成功例でしたよね。
50代独身女性の理想の生き方に共感の嵐
小林:そして、最後は二人がかぶった『団地のふたり』。私が10位で、イマイズミさんが9位です。
イマ:私が幼い頃、団地みたいな社宅に住んでたので、この風景がたまらなく懐かしくて。もちろん、やたら人口が多い団塊ジュニア世代なんで、このドラマと違い、社宅には老人より子供のほうがたくさんいましたけど。
小林:大波小波もなく、ずーーっと小波しか起きないドラマでしたね。網戸の張替えとか更年期で体調おかしいとか、せいぜいそのくらいの(笑)。このドラマの記事を別の媒体で書いたら結構ヒットしたんですけど、独身の中年女性で気の置けない友人がいるのって、実は憧れの世界なんだなって思いました。
イマ:50歳を超えると、老後の不安や親の介護とか気が重くなっていくばかりだけど、ちょっとしたくだらないことを話せる友だちがいることがどれだけ幸せか、身に染みてきますよね。
小林:幼馴染のノエチ(小泉今日子)となっちゃん(小林聡美)の関係性は、ホント理想だと思います。自分の未来のあるべき姿を見せられた感じ。
イマ:それでいうと、私はベンガル(東山徹生役)みたいになりそうで怖いです(笑)。クレームを言うことでコミュニケーションを取る、面倒くさいジジイ的な。
小林:男性は孤独な老人になりやすいから、こういう団地に住んだほうがいいですよ(笑)。
イマ:こうやって一通り選んでみると、NHKはやっぱり民放にはできないジャンルのドラマを作ってますよね。
小林:今回ランキングには入っていませんが、障碍者を扱った『%(パーセント)』(NHK総合)というドラマは、感動ポルノに陥らずに「こうすればいいのでは?」という、ガイドラインを示すような新しい試みを感じました。
イマ:いくら配信が回るからって、ドロドロの不倫ものや考察系のサスペンスばかりになると、正直、観るほうもしんどいです…。
小林:来年も今年以上にいろんなジャンルのドラマが楽しめるといいですね。
イマ:お正月は2025年冬ドラマの予想をしながら過ごしたいと思います!
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小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp
元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。
イラスト/lala nitta