【伊原六花さん】最新映画で雑誌編集者を熱演『何事も主体的に学ばないといけない』
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関西のダンス強豪校のキャプテンとして結果を出し、上京して芸能界入りした伊原さん。着々と夢を叶えているように見えますが、「小さな嘘をよくついていました」と語るその訳は…?どんどん成長を遂げるその秘密が、少しわかるインタビューです。
苦手なものもとりあえずやってみる。気になったものはやってみる。そこから取捨選択します。
私、昔はカッコつけがちなタイプだったんです。部活でキャプテンを務めていたので、できない姿を見せると部員が不安になってしまうだろうからと、できるだけコソ練していました。周りに中途半端な自分を見せることがずっと苦手でしたが、大人になるにつれ、できない自分を隠さない人ってカッコいいなって思うようになって。できそうにないことを「できます!」と言う人よりも、「できるかな…。まずやってみます!」って正直に向き合う人のほうが魅力的に感じます。私はまだ、恥ずかしい気持ちが勝ってしまって、100%そうはできていないけれど、がむしゃらに頑張る人をカッコいいと思う。張り切っていて、カッコ悪いな…と思いたくないんです。思い返せば、デビューしたての頃はよく小さな嘘をついていました。「知ってます」とか「全然できます」とか。でも必ずしわ寄せがきて、それがしんどかった。例えば、「この絵を1週間で仕上げられる?」と聞かれて、絶対無理だけど快諾したり。後から「言わなきゃよかった。でも言ったからには守らないと」と頑張っていた時期もありました。「1週間は厳しいかもです、2週間欲しいです」って素直に言えたほうが楽だし、いいものを出せる気がしつつも、小さい嘘をついていました。最近は、できない自分を認めて、それを伝えられるようになって楽になってきましたね。舞台の現場で、作品についてディスカッションするテーブルワークが行われることがあって。そのなかで、たとえ相手と違っても、自分の意見をきちんと伝える大切さを知ったことも、NOと言えるようになったきっかけです。
誰もレールは敷いてくれないけれど今こそ自分から勉強しなくては、と思っています
2021年に舞台「友達」に出演した際、現場で共演者のみなさんがお話しになる、好きな戯曲や演出家の話がまったくわからなくて、悔しい思いをしました。俳優を始めてから、意識的にたくさんの作品を観てきたけれど、自分は何も知らないんだなと感じて。その舞台では、山崎一さん、キムラ緑子さん、林遣都さん、有村架純さんといった錚々たる先輩方とご一緒していて、みなさん貪欲にインプットされている中で、私は勉強する・吸収するっていう意識が足りなかったことを痛感しました。この仕事は学ぶべきことが多いけれど、明確な勉強の仕方があるわけじゃない。みなさんの話に入れなくてかなり悔しかったのですが、ただ舞台を観に行くだけでなく好きな演出家や芝居を明確にしていく、という勉強法を見つけられた貴重な出来事でもありました。芝居へのアプローチもみなさんそれぞれで、正解はひとつではないことも知ることができた。俳優業をもっと深めていきたいと改めて実感した作品でした。悩んだときは先輩にどう乗り越えたかを聞きます。作品でご一緒した方だったり、その繋がりでできたサウナ部とT(大衆)演劇部の40〜60代の先輩方に相談することが多いです。私が「稽古が上手くいっていなくて…」と切り出すと、「私も切羽詰まっていて、出口が見えていないんだよね」と話してくださることもあって。「大丈夫だよ、できるよ」みたいに何となくの慰め言葉ではなくて、ご自身の体験談も隠さずに教えてもらえると、自分も頑張ろうという原動力になるんです。年齢問わず、壮大な夢を掲げている人は素敵に見えます。変に現実を見て「こんなもんだろう」と自分で勝手に限界を決めるより「絶対スターになる」とか「あの賞を獲る」と口に出せるほうがカッコいいし、私もそういう生き方を選びたいです。
周りと比べないことは難しい
比べるとか羨ましがるのはプラスにならないってよく聞くし、もちろんわかるけれど、情報化社会の現代で1ミリもそう思わないって難しい。だからこそ、映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』で演じたファッション雑誌の編集者・相田陽子に共感する部分は、めちゃくちゃありました。陽子は「希望する部署に行きたい」とか「理想に近づくために頑張りたい」と前向きな欲望を抱いていたにもかかわらず、周りからの評価やSNSの反応に左右されてしまう役どころ。私自身、「自分が持っていないものをたくさん持っている方だな」と感じる人に出会うこともあるから、銭天堂やたたりめ堂に向かう陽子の動機にも共感できました。一方で応援してくれる方が「ここが素敵でした」と伝えてくれたり、好意的なメッセージをくれるのもSNSのいいところ。だから、比べちゃうのは仕方ないと受け入れつつ、自分の自信になったり、ハッピーになれる言葉に多めに触れることは意識しています。インスタもXも全部やめるってきっと無理だから…。あとは、ブンッて集中できるものがひとつあると、SNSのもやもやから解放されると思います。私だったら、絵の世界に没頭したり、絵のアイデアを得るために画集を調べたり。そういう使い方でSNSのいい面と悪い面をトントンにしています。
苦手だと思っていたことが、意外と好きだったりします
舞台の現場で、キャリアを重ねた素晴らしい先輩方でもインプットをし続けていると知って、学び欲が高まりました。この仕事をしていると、ちょっと負荷をかけないと学ぶことにならないと思っていて。学生の頃は授業があったし、ダンスも教えてもらって練習して大会に出る、みたいに与えられるものをインプットして、結果に辿り着いていました。でも今は、何事も主体的に学ばないといけない。学ぶ意識がないと、持っているものでやりくりしている感じがあるんです。持っているもので賄えるほど私は何も持っていないから、自分でインプットする機会を増やしたい。そう思って最近、久しぶりに踊ることをしています。知り合いのダンサーの方がアップしていた動画を見て、「これを踊りたいです!」って連絡して、マンツーマンでレッスンしてもらいました。自分の中で20代は、苦手なものにもとりあえず向き合う時期と設定しています。その中で得意だったり、続けたいものを取捨選択して30代を迎えたい。それを見極めるためにも、気になったものはトライして吸収できたらいいかな、と。自分的に向いていないかもと思い込んでいたものが、意外と好きだったりすることもあるんです。正直YouTubeも企画ものは苦手だから、ダンスをゆるく上げられたらいいなと考えていましたが、実際に企画ものに挑戦してみたらすごく楽しくて。ひとりで喋ることにも慣れてきたり、そこから広がるものも多かったので、何事もポジティブに向き合うことが大切だと思っています。
【衣装クレジット】ジャケット¥59,400スカート¥37,400(ともにテラ/ティースクエア プレスルーム)ニット¥16,500(スタンバーグ/アダストリア)ブーツ¥42,900(ALM.)イヤリング¥26,400(エテ)チョーカー¥62,700(プリュイ/プリュイ トウキョウ)リング¥36,300バングル¥75,900(ともにイー・エム/イー・エム アオヤマ)
奥行きのある音を楽しみたくてレコード集めにハマっています
この仕事を始めて、様々な趣味を極めている人に出会う中で、自分も“好き”を突き詰めるようになり、年々趣味が増えています。レコードもそのひとつ。音の重なりをよりいい音色で聴きたくて、ジャズやクラシックを中心に集めています。料理も好きで調理器具も買い揃えている途中。食材を賽の目切りできるフードプロセッサーのような便利グッズから、土鍋やせいろの本格派まで揃えています。とにかく気になったものは取り入れてみる派。その中で続けたいと思ったものが趣味として残っています。
伊原六花さん
1999年生まれ。大阪府出身。大阪府立登美丘高等学校のダンス部キャプテンとして、センターを務めた「バブリーダンス」が注目を集め、多数のメディアに出演。2017年から本格的に芸能活動をスタート。代表的な出演作に、NHK連続テレビ小説『なつぞら』『ブギウギ』、TBS系『マイ・セカンド・アオハル』、日本テレビ系「肝臓を奪われた妻」などがある。YouTube「伊原六花のSTEP & GO」も開設。12月13日公開の映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』では、おしゃれに疎いながらもファッション雑誌の編集者として四苦八苦する、相田陽子を演じる。主な出演者は、天海祐希、上白石萌音、大橋和也ほか。
撮影/水野美隆 ヘアメイク/面下伸一 スタイリング/椎名倉平 取材/坂本結香 編集/小林麻衣子 再構成/Bravoworks,Inc.
CLASSY.2025年1月号「私たちの取捨選択〜伊原六花さん」より。
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