子宮頸がんワクチン『キャッチアップ接種』って?宋美玄先生に聞いてみた
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「何となく怖くて子宮頸がんのワクチンも検診も受けていない…」という人が多いCLASSY.世代。でも、20代30代でも罹患率の高いがんです。怖がっているだけでやり過ごすより、きちんと自分で調べて考えることが大事です!
「20代30代に多い子宮頸がん。
ワクチンで防げる、数少ないがんです」
ただ怖がるだけより、
正しい知識とリテラシーを
子宮頸がんの主な原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は、性交経験のある人の約8割が生涯に一度は感染すると言われる、ありふれたウイルスなんです。外陰部や肛門などにも潜み、性交渉でうつるウイルスのため、セクシャルデビューをした人は、誰でも感染する可能性があります。セックスの経験人数が多いと感染のリスクは上がりますが、パートナーがひとりであっても感染します。一度でも性交渉の経験がある時点でHPVに感染し、子宮頸がんを発症する可能性があるということを覚えておいてくださいね。
ちょうど20〜30代のCLASSY.世代はセクシャルアクティビティの機会が多い時期。一方で子宮頸がんの罹患率が高まる世代でもあるため、予防には感染を防ぐHPVワクチンの接種を推奨します。現在、HPVワクチンが無料で受けられる「キャッチアップ接種」が実施されています。接種後の副反応報道の影響で2013年〜2021年にかけて約8年半、HPVワクチンの積極的接種が控えられていました。この間に接種の機会を逃した女性(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)に対し、公費での接種機会が設けられています。ただ、実施は2025年3月末まで。HPVワクチンは半年かけて3回接種するスケジュールなので、接種が完了していない人は、せめて1回ないし2回は公費で受けるのがベストです。
自費でも受けられますが、決して安くありません。そして、男性もHPVに感染します。男性の場合は、肛門がんや中咽頭がん、尖圭コンジローマ(性別問わず性器や肛門にイボができる病気)を引き起こす原因にもなります。だから実は、男性のHPVワクチン接種も重要です。
これまで診療に携わる中で、妊娠中に子宮頸がんが見つかったり、お子さんを残して亡くなったりと悲しいケースを目の当たりにしてきました。子宮頸がんはワクチンで防ぐことができる数少ないがんとも言えます。正しいリテラシーと知識を身につけて、早い段階でのワクチン接種を選択してほしいです。
【QUESTION】
そもそも、子宮頸がんとは?
主にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となり、子宮の入り口にできるがん。日本では毎年約1万人が新たに子宮頸がんと診断され、年間約3千人が命を落としています。子宮頸がんになる前段階の上皮内がんを含めると、20〜30代が占める割合は約38%。自覚症状がないまま進行し、発症年齢のピークが女性の出産年齢と重なるのも特徴。子育て世代の女性が子どもを残して亡くなるケースも多く、「マザーキラー」とも呼ばれています。
「教えて!宋先生」私たちの疑問と不安
「HPVワクチンの存在は知っているけれど、接種すべき?」と悩むCLASSY.世代の疑問と不安に、宋先生がアンサー。自分や大切な人のためにも、正しく知ることが重要!
11年前の報道であった、重篤な副反応のニュースが衝撃で、HPVワクチン接種をためらってしまいます...
2021年11月、厚労省の審議会でHPVワクチンの安全性と子宮頸がんの減少効果が確認され、積極的接種勧奨が再開しました。HPVワクチンは、同じ種類を3回接種しておけば、何十年も抗体が続くと言われています。当院でもかなりの患者さんが接種していますが、大きな問題は起きていません。接種して元気に過ごしている人がもっと可視化されると、接種に対する不安も軽減すると思います。SNSで偏った情報に触れるのではなく、正しい知識を身につけることが大切です。
今30歳、キャッチアップ接種の対象外です。自費で打つといくらかかりますか?
丸の内の森レディースクリニックでは、4価(4つのHPV型の感染を防ぐ)は、1回¥19,800、3回¥55,000。9価(9つのHPV型の感染を防ぐ)は、1回¥39,600、3回¥110,000。日本人の子宮頸がんの原因となるHPV型のカバー率は、4価で最大65.4%、9価で最大88.2%というデータがあるので、費用はかかりますが9価を推奨しています。
HPVワクチン接種は男性でも必要ですか?彼にも打ってもらったほうがいいのでしょうか
男性もHPVに感染し、がんや性病に進行する可能性があるので接種をおすすめします。当院でも男性の接種率が高まっています。接種するワクチンの種類もスケジュールも女性と同じです。小学校6年生~高校1年生相当の男子には助成を行う区も増えつつありますが、CLASSY.世代の男性は完全自費になります。残念ながらキャッチアップ接種も対象外です。
HPVワクチン接種が必要ないのはどんな人ですか?
生涯、性交渉をしないと決めているセクシャリティの人は、HPVに感染するリスクがないので接種の必要はありません。ただ、一度でも性交渉の経験がある場合や、これから新しいパートナーとセックスする可能性がある人は接種がおすすめ。接種の際の痛みは、ちくっとする程度ですが薬が入っていく瞬間は痛みを感じるかもしれません。横になって打つことも可能なので、心配な人は医師に相談を。
子宮頸がんになると出産できませんか?
治療はがんの進行具合や年齢などで異なりますが、ステージによっては子宮を部分的に切り取るまたは全摘出の手術や放射線療法、抗がん剤治療が必要になることもあります。また、がんになる前段階の高度異形成や上皮内がんが確認された場合でも、子宮の一部分を切除する手術を行うこともあります。部分切除で子宮を温存できれば妊娠・出産の可能性は残せますが、全摘出となると出産は望めません。
子宮頸がん検診が怖くて、行ったことがありません...
たとえHPVワクチンを接種しても、子宮頸がんを100%予防できるわけではないので、定期的な検診は必須です。自覚症状が出にくいがんとしても知られ、不正出血などの症状が出た段階では進行が進んでいる場合も少なくありません。妊娠中に見つかることもあるし、転移の恐れもあります。当院含め、最近は検査を受ける女性の緊張や不安を和らげるために診察室の雰囲気を明るくしたり、女医が担当したりと配慮するクリニックも増えています。早期発見・早期治療が肝心なので、あまり身構えずに検診を受けてください。
実際打ってみた!
下田真里衣さん/通信会社勤務・27歳
「同僚や友人と話題に上がることが増えたHPVワクチン。中学時代に2回接種済みなので、キャッチアップ接種を活用して3回目も計画中。子宮頸がんは身近な病でもあるので、未来の自分のために今できることを選択したいです。」
高梨美嶺さん/商社勤務・26歳
「友人が子宮頸がんに罹り、11月に「キャッチアップ接種」で1回目を接種。3月までに3回接種し終える予定です。子宮頸がんは子宮摘出の可能性もある病気。将来の選択肢を狭めないためにも早い段階での接種が必要だと思います。」
教えてくれたのは...
丸の内の森レディースクリニック院長宋美玄先生
大阪大学医学部医学科卒業。同年医師免許を取得し、大阪大学産婦人科入局。産婦人科医として国内の病院で診療に従事し、2017年、丸の内の森レディースクリニックを開院。メディア出演やSNS発信を通じて、女性のカラダの悩み、妊娠出産、セックスや女性の性などにまつわる積極的な啓蒙活動を行っている。2人の子を持つ母。
撮影/杉本大希 取材/坂本結香 編集/小林麻衣子 再構成/Bravoworks,Inc.
CLASSY.2025年1月号「知っておきたい!カラダのこととお金のこと」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。