共働きカップルの『ペアローン』のメリット・デメリット<安心返済、住宅ローン減税etc.>

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まわりに家を買う人がちらほら出始めてくると、気になるのが住宅ローン。「共働きならペアローンがいいよ」とは聞くけれど、リスクや気をつけておくべきことは?『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』の著者に今の状況を聞きました。

\ペアローンで買ってよかった!/
メリットは?

住宅ローン減税がふたり分で大きい!

中古を購入し10年間、住宅ローン控除をフル活用。住民税の減税にも繋がり、夫婦でメリット大。住宅ローンの金利は低いので、控除期間が終わっても借り続ける予定。(Y.Kさん/IT会社勤務・30歳)

都内で理想のマンションに手が届きました

「一生で一番高い買物だから」とこだわるあまり予算オーバー。ひとりでは到底手が届かない物件でしたがペアローンで無事成約。月々の返済は家賃とさほど変わっていません。(A.Mさん/証券会社勤務・32歳)

単独ローン→ペアローンに変更してスムーズに

夫が独立したタイミングで理想の物件が見つかったのですが、夫単独のローンだと審査が下りず、ペアローンになりました。私自身は会社員だったので審査もスムーズでした。(S.Aさん/メーカー勤務・33歳)

ペアローンを組む前に
お互いの意見のすり合わせを

物価高と円安の影響で、今はペアローンが主流になりつつあります。単独ローンかペアローンか、選択できる人はごく少数です。個別相談を受けていると「両親にペアローンを反対されている」と話すCLASSY.世代の方もいますが、親の時代は今よりも金利が高く、長く借金をしないほうがいいと考えられていました。現在は金利も不動産価格も、購入する人の感覚もすべてが変わっています。特に都心では、金銭的にペアローンでなければならない状況の人がほとんど。不動産業者がペアローンを勧めるケースもよく聞かれます。

ペアローンはそれぞれが債務者で、お互いの連帯保証人となり、ふたりで全額の返済義務を負うものです。単独ローンよりも借入可能額が上がり、スペックのいい物件を狙えます。
また、ふたりで住宅ローン控除を受けられるのもメリット。新築は13年間、中古は10年間、年末時のローン残高に応じて所得税や住民税が控除されます。共働きでお互い収入があるカップルにとって減税の恩恵が大きい制度です。

デメリットは、夫婦関係が破綻してもローンは残り続けること。ペアローンは夫婦の協力態勢が大前提にあります。なので、最大のリスクは離婚です。そうなった場合は、家を売って完済するのが一番ですが、離婚後もどちらかが住み続けたい、など夫婦間で合意が取れないと面倒な事態に陥るケースも多々。
そして、このまま不動産価格が上昇し続ける場合、売却できたとしても、購入当時の価格帯で同じスペックの物件を購入するのはかなり厳しくなります。家を買う段階で離婚を想像する人は滅多にいないと思いますが、今は3組に1組が離婚する時代。がんになるよりも離婚する確率が高いと言われているので、他人事と捉えずに、ペアローンのメリットとデメリットをきちんと知った上で選択することが重要です。起こりうる事態をわかっていることで取れる対策もあります。
最近は、お互いの収入を把握していないカップルも増えていますが、住宅購入においてお金の話は避けて通れません。夫婦間でうやむやにせず、ローンを機にお互いのお金やライフプランについて意見をすり合わせるきっかけにしてほしいです。

ペアローンを借りる前に、チェックしておきたいこと4つ

今や当たり前の選択肢になっているペアローン。〝家を買う〟という、ふたりにとって大きな決断をするその前に、話し合っておくべきこと、知っておくべきことを千日さんがレクチャー。

①お互いのキャリアプランは知っていますか?

ローンを組む前にお互いのキャリアプランについての話し合いは、必ずしてほしいです。購入した後にどちらかが会社を辞めて独立や転職、キャリアダウンし、収入に変動が生じて返済が難しくなったケースもよく聞きます。それぞれのキャリアプランを知っておけば、それを見越した額で設定できます。また、銀行は安定した収入がある属性の人を優遇するので、家を買う前に独立したり転職したりするとローンが組みにくくなる可能性大。ペアローンとふたりのキャリアプランを並行して考えることが大事です。

②収入格差がありすぎませんか?

ペアローンは連帯保障なので、収入格差があって相手より収入が少なくても、もしもの場合はふたり分の返済を負担しなければなりません。そういった部分では、収入が低いほうが不利でリスクも高まります。どちらかが仕事を辞めたり、子どもができてキャリアダウンするなど、収入が減ることが想定できる場合は、年収を下げてローンを組むのもひとつの方法です。ペアローンの割合は、夫6:妻4が一般的。8:2のように大きく差がつく場合は、ペアローンを避けたほうがいいかもしれません。

③ケンカしたとき、話し合いはできますか?

ペアローンは協力態勢が大前提なので、夫婦関係が崩れるのが一番のリスク。なかでも厄介なのは、どちらかが離婚後も家を売らず住み続けたい、と主張したとき。子育ての環境や学区の関係でよく発生する事態です。そうなると、ローンをどちらがどのくらい負担する?、家の名義は?、財産分与で清算する?などかなり複雑な手続きと話し合いが必要になります。面倒なことや重要なことをきちんと冷静に話し合えない相手だと、揉めやすく問題が長引くケースも多々あるため、ペアローンのハードルは高いと思います。

④頭金は1割入れられますか?

ペアローンに限らず住宅ローン全般に言えることですが、最低でも1割の頭金を入れられないと、返済計画が厳しくなります。頭金次第でローン返済の難易度が下がるので、「将来、高く売却できれば頭金は返ってくるもの」と捉えて、保証金感覚で支払っておくのがベター。お互いフリーランスでローンが組みにくい場合は、フラット35がおすすめですが、こちらは最低1割の頭金が必要になります。また、今後金利は上がっていくことが予想されるので、変動金利を選ぶと返済の難易度が上がる可能性もあります。

教えてくれたのは...千日太郎さん

公認会計士
千日太郎さん
企業財務コンサルの専門家として、大企業や官公庁の経営財務コンサルや研修講師として活躍。住宅ローンにまつわる情報を発信するブログが口コミで広がり、住宅ローンセミナーや個別相談も行っている。近著に『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』(日本実業出版社)がある。

撮影/水野美隆 取材/坂本結香 編集/小林麻衣子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2025年2月号『「お金のこと」と「体のこと」』より。