医師でエッセイストの海原純子さん「44歳は、50歳から幸福度をUPさせるための準備スタートです」

新聞のエッセイやお悩み相談でお馴染みの海原純子さんは、長年にわたり「ポジティブサイコロジー」幸福についての科学的研究を続けるとともに、多くの女性たちの心の悩みに寄り添ってきた心療内科医。72歳にして女性としても輝き続ける海原さんに、44歳からの幸せの見つけ方をお聞きしました。

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海原純子さんprofile

海原純子さん医学博士・心療内科医・エッセイスト。日本初の女性クリニックを開業。ハーバード大学客員研究員、日本医科大学特任教授を歴任し昭和女子大学客員教授。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。読売新聞「人生案内」回答者、毎日新聞・日曜版「心のサプリ」連載執筆中。

44歳は、50歳から幸福度をUPさせるための準備スタートの時期

人は「〝年をとるのが怖い〟と感じる人ほど老ける」という事実を知っていますか? それは、意識が「老ける」という点にフォーカスしてしまうためです。最近のスタンフォード大学の発表「人は44歳と60歳で一気に老化する」という事実は確かに衝撃的でしたが、一方で「人は50歳から幸福度が上昇する」というアメリカの研究機関の発表も、40代を生きる女性たちに注目していただきたいニュースです。

44歳以降は50歳から幸福になるための準備期間。老いを受け入れた後、新しい自分を作っていくためのスイッチ時期です。そう、44歳からフォーカスすべきは、〝老い〟ではなく、新しい自分へのスイッチなのです。

ブルッキングス研究所のシニアフェロー、ジョナサン・ラウシュの研究による「ハピネス・カーブ」。国や職種で多少異なるものの、年齢ごとの幸福度は世界共通して40代で下降し50歳頃上昇する。

「幸せ」へのカギは自身の強みを知ること

44歳から49歳にかけての年齢は、家庭では「いい妻」「いい母」であったり、仕事をしている方なら責任ある仕事を任されたり、役職に就くなど確固たるポジションを獲得している時期です。しかし、外見の変化を感じ始めると共に、子どもの成長に伴うライフスタイルの変化や夫婦関係の変化、さらには仕事の立場も変わり今までのポジションが崩れることから、内面の変化を迫られます。

それは、〝老い〟が教えてくれる「そろそろ脱皮の時期ですよ」というサイン。今こそ、自分の人生を考え直し、新たな自分の居場所を見つけるために、今いる場所から一歩を踏み出す年齢なのです。

私は心療内科医として長く「幸福」について研究していますが、最近では自分の居場所を見つける方法として、「自分の強みを知る」という理論が注目されています。

皆さんは、冷蔵庫の中に何があるかしら、と点検して食事を作りますよね。でも、自分の内側に何があるかを点検したことはありますか? 44歳を過ぎたら、自身の「強み」を知るために、内面にあるものと向き合ってみましょう。「強み」とは、損得や苦を感じることなく自然とできることで、誰もが必ず持っているものです。その「強み」をベースに社会と繫がることができれば、メンタルはHAPPYへと導かれていきます。

お化粧やオシャレを武器に、女性であることを一生楽しんで

幸福感には「へドニア」と「ユーダイモニア」の2種類があります。「へドニア」は美味しいものを食べる、ショッピングをするなどの短期的な幸福感で、これに対し「ユーダイモニア」はその行為自体に喜びがあり、自分が自分らしくいられると実感できる長期的な幸福感のことです。先に述べた〝強み〟を知り、社会と繫がる行為は「ユーダイモニア」の幸福です。でも、見て、食べて、単純にワクワクできる幸せ、「ヘドニア」も欲しいですよね。この2つをバランスよく持っていると人生が豊かになり、幸せが持続するんです。

悩んでいる方の中には、「メイクをしなくなった」という方も多くいます。メイクやオシャレは、自身のモチベーションをUPし、ヘドニアを高める行為。女性は、それが簡単にできるから得ですよね。逆に、メイクやオシャレをする気が起こらなくなったら、要注意です。

私は、「好きなコスメブランドの新作が出た」というニュースを耳にすると、デパートに飛んでいきチェックしますし、ドライヤーで自分流の巻き髪を短時間でチャチャッと仕上げるのが日常です。日本の社会では「女性は若い方がいい」という考えが根強くあるので、特に女性は年齢に対するこだわりが強く、老いに対してネガティブになりがちです。しかしながら、年齢を重ね自分を知った大人の女性が、若作りではなく、自分の強みを知り自分を活かすメイクやオシャレをすれば、若いコとは全く異質の素敵な魅力を纏うことができます。

40代の後半に入ると、更年期など体が変化し、「閉経すると女でなくなる」と感じる人もいるようですが、「生殖能力=女」という考え方は、女性を子どもを生む道具などと発言する昭和のおじさん思考じゃないかしら、と、私は不思議に感じています。女性は一生女性です。「女」であることを一生楽しむことができるのです。

シャネルやSUQQU、アディクションは大好きなブランド。新作はいち早くチェックします。使い勝手のいいキャンメイクやセザンヌのプチプラも愛用中。

今、72歳を生きる私から40代の妹たちへ

私は医師として40代はすごく大変でしたし、周りから認めてもらえずに悔しい思いをしたこともありました。50代になってから、〝女性だから〟という周囲の目を超えて日本の大学の教授に就き、さらには58歳でハーバード大学の客員研究員になり日々研究を深めました。そのおかげで、60代から医学部の教授になって人生で一番忙しくなり、自由に仕事ができるようになりました。ボランティア的な仕事も多く、金銭的に豊かとはいえませんが、自分の居場所を知り、社会と繫がる今は幸せです。

また、50歳になる目前、49歳の時に「自分を表現する場所がない」と感じ、約30年ぶりにジャズ歌手としての活動を再開しました。幸せのカタチは人それぞれ。私のように好奇心のままにジェットコースターのような人生が幸せと感じる人もいれば、日々花や鳥の声を愛で、幸せと感じる人もいます。

幸せを見つけられずにいる人は、ふと心に抱いた思いをノートに書くのがオススメです。私はそれを「天使のささやき」と呼んでいるのですが、例えば、「お茶を飲みたい」とか「本屋に行きたい」とか、そんな小さな心のささやきを、お気に入りのエルメスのノートに書き留めています。多くの方は、忙しさのあまり、「天使のささやき」を無視してしまっているのかもしれません。

人に認めてもらうことを求めて生きていると、一生幸せにはなれません。44歳を過ぎた今からは、自分自身で「ここだ!」と思える場所を探し始めてください。決して簡単ではありませんが、その先に「幸せ」は、きっとあるはずです。

医学生時代に学費を稼ぐためにしていたジャズ歌手活動を49歳で再開。2021年にはコロナ禍で音楽と医療をコラボレーションさせる試みとして2枚組のアルバム『Then and Now』をリリース。定期的にライブを開催中。

撮影/田頭拓人(海原先生)取材/山崎智子 ※情報は2025年3月号掲載時のものです。

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