【子どもの読書習慣どうつける?】本の感想は「楽しかった」だけで十分!
絵本の読み聞かせはしてきたけど、“自ら読む”読書習慣ってどうやったらつくんだろう…?そんな悩みを持つ方は多いはず。そもそも習慣づけも、やっぱりママが頑張らないといけないもの?今回は青木裕子さんと一緒に、専門家の糸賀先生、「ヨンデミー」CEOの笹沼さんにお話を伺いました。
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大人も子どもも「本を読まない」が当たり前?
読み聞かせのその先
について考えよう
青木さんも悩んでいました
「長男は本の虫だけど、次男はあまり読んでくれなくて…」
感想を聞いて、「楽しかった、だけ?」とつい言ってしまいます(笑)
6歳の頃は絵本の音読を得意げにしてくれた長男。『あらしのよるに』や『エルマーとりゅう』シリーズを読んだりと本好きで、内心いいぞいいぞ、と思っていたら小学校に入って以降、アニメ・動画に目覚めてしまいまったく読まなくなってしまいました。あの頃の長男は戻ってくるのでしょうか(涙)。(7歳男の子ママ)
小学校に入り我が子の文章問題の読解力が低いことを目の当たりにし、何とか読書習慣をつけさせねば、と焦っています。関心があることへの熱量は高く、そこはいいなと思っているのですが大好きなKpopやファッションの動画で一日の余暇はほぼ終わる日も。本を読むようどう促せばいいでしょうか。(8歳女の子ママ)
息子は本に興味がありません。ただ私は書籍もコミックも雑誌も大好きで雑多に読むので、息子も読みたいタイミングに好きなものを読めばよい、と思っていて特に悩んではいません。ただ、ネットには「子どもには読書させるべき」という記事ばかり。本を読むよう仕向けるのは親の役目なのでしょうか?(4歳男の子ママ)
本の感想は、「楽しかった」だけで十分。
ただ眺めることも本の魅力で、大切な財産です
青木裕子さん(以下青木) うちは長男がよく本を読み、次男はあんまりで。長男が児童書にスムーズに移行したのはコロナ禍で、当時親子で張り切って「毎日20分読書しよう!」と決めていました。最初は大変でしたが“山”を越えると、読書って楽しい!まで持っていけて。でも次男はなかなか山を越えられず、数ページパラパラめくっては放り出す、の繰り返し。「ヨンデミー」を始めて、今の次男にちょうどいい本をお勧めしてもらって、山を乗り越えていけるかな…?というところです。
笹沼颯太さん(以下笹沼) ヨンデミーのデータでも、1日30分以上読む習慣がある子は、その後読書時間は減りにくい。いっぽうで5分だけ誰かに言われて読んでいた子は不読層になる場合が多いです。
青木:ただ、そんなふうに読書の習慣づけをしなければいけない、というのがママたちの責務というのも大変ですよね。
糸賀雅児さん(以下糸賀) 昔と比べて家の中でも外でも、本や新聞を読んでいる大人が今は少なくなってきているんですから、本を読まない子どもたちが増えているのは当たり前です。幼児期は語彙を増やすのが大事だから、しりとり遊びを楽しめれば十分でしょう。そのうえで言うのですが、子どもが本を読むようにしたければ、大人が日頃から楽しそうに本を読む姿を見せるのが一番だと思います。あまり読め読めと強く言う必要はありません。
青木:私自身は子どもの頃から楽しみが本を読むことでした。ご褒美が本屋で本を買ってもらうこと。なので子どもには本の魅力を知ってほしいという素朴な思いも。ただ今は他の娯楽の誘惑も多いし、読みたくても時間がないと嘆くママも多いですよね。
笹沼:「本を読む」というのを、読書している瞬間だけではなく、感想を話す、イベントに行く、積読本を眺める、あらゆることを含めて考えていいと思うんです。すべてが読書体験だし、読書を自走できるきっかけになるはず。選書も対象学年どおりではなく、本が苦手で慣れていない子には学年を下げてみて。何冊か並べて数ページだけ読むつまみ食いも全然いい。図書館で何冊か借りて、続きが読みたいなと思ったら買ってみればいいと思います。
青木:本屋さんに行って、「ひとり一冊ね!」と家族で選ぶのだって立派なイベントですよね。ちなみに、感想を話すのもとてもいいなと思うのですが、息子の「楽しかった!」に対して、「楽しかった、ってだけ?」とつい言ってしまって(苦笑)。
笹沼:楽しかっただけで十分です。大切なのは読んでどれだけ想像力を膨らませられたか。
・つまみ食い読書でいいと聞き、肩の荷がおりました(青木さん)
・あとは大人が楽しそうに読む姿さえ見せれば満点(糸賀さん)
糸賀:文字を読んでこれはどんな状況だろう?と頭の中で状況を思い浮かべる、つまり想像する。この想像力が、多様な人たちと生きていくこれからの時代にすごく大事なこと。同じ情報にアクセスしても、そこから想像するものは人によってみんな違う。その想像力の一助に間違いなくなるのが子どもの頃からの読書なんだと思います。ただ今までの話をひっくり返しますが、本好きもいれば、ゲームに夢中で本を読まない子がいてもまた多様性としていい。海外に行った時にはスポーツすればすぐ互いの心が通じますし。
青木:先日うちの子どもたちも英語を話す子たちと、言葉の壁があってもゲームを通じて、それこそ一瞬で仲良くなっていました。
糸賀:だから親が読ませなくちゃと強迫観念に駆られなくてもいいし、もっとのびのび育てて構わない。ただしどこで線を引くかは難しいとしても、やはりそこそこの読む力、たとえば将来、仕事や住宅なんかの契約書を理解できるくらいの読解力はあったほうが絶対にいい。それはゲームやスポーツの力を上達させる時だって役に立つはずです。
笹沼:そうですね。仕事でリモートワークも増えるなかひとりでドキュメント作業をする時も、読解力があるとスムーズなのは確か。読書はある意味、とても手軽な学びなので、人生を豊かにするためのツールとして気楽に考えてほしいです。
糸賀:その一方で個人的に危惧しているのは学校の図書室が以前よりも軽視されているんじゃないかなということ。きちんと整備されている図書室とそうでないものとでは、子どもたちにとっての魅力はまったく変わってきます。学校図書室は読書好きへの入り口なので、もっとヒトとお金をかけるように保護者からも要望してもらえるといいですね。
笹沼:本好きになる環境はどうしても少なくなっていますが、逆説的に、子どもにとって本に一面囲まれるのはワクワクする新鮮な経験のようで、図書館に行くと読書へのモチベーションが上がる、というエピソードを弊社でもたくさんいただきます。図書館に行ってただ本を眺めるだけでもいいですよね。
糸賀:そういう時間を増やせば、おのずと読みますよ。そこまでしても読まないなら、無理して読ませなくてもいいんじゃないかな。
青木:そうですね。つまみ食い読書から始めてもいいと聞いて、肩の荷がおりました。それにママ自身にとっても、こんなふうにVERYを読んだりする時間は自分の世界を持てる貴重な時間。楽しみながら本に触れていけたらいいですよね。
profile
青木裕子さん
VERY専属モデル。1983年生まれ。2005年に慶應義塾大学を卒業後TBSテレビにアナウンサーとして入社。2012年よりフリーとして活動。小5、小3男児の母。
profile
糸賀雅児さん
多様性として考えると、全員が本の虫でなくてもいい
慶應義塾大学名誉教授。1954年生まれ。東京大学大学院教育学研究科修了。図書館情報学を専門とし、絵本専門士制度の創設にも深く関わった。
profile
笹沼颯太さん
読書はただのツール、娯楽だと思って気楽に考えて
株式会社Yondemy代表取締役・CEO。1999年生まれ。2020年4月、東京大学経済学部経営学科在学中に、筑波大学付属駒場中高時代の友人と株式会社Yondemyを設立。
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「絵本だけど文字は多くてちょっと難しい『ウエズレーの国』、形は児童書だけど文字は少なく簡単な『にんきもののひけつ』、子どもの興味ど真ん中なので夢中になって読める『はれときどきぶた』。子どもの興味は各々違うので全員へおすすめというのは難しいのですが、『はれときどきぶた』は多くの子に興味を持ってもらいやすい〈ユーモラス・学校モノであり身近である・起承転結がはっきりしている〉という3要素を満たす本です」
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撮影/金玖美 ヘア・メイク/Hitomi〈Chrysanthemum〉 取材・文/有馬美穂 編集/中台麻理恵
*VERY2025年3月号「読み聞かせのそのさきについて考えよう」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合もございます。