イタリア最大級の炎のお祭り「Al Focara(アル・フォカラ)」を訪ねて 

ー大人のイタリア旅 vol.1ー

300年の歴史ある炎のお祭り

毎年1月、イタリア南部のプーリア州に〝すごいお祭り〟がある!ということで、その噂を聞きつけてノヴォリ(Novoli)という小さな町を訪れました。イタリアで最も壮大な炎の祭り「Al Focara(アル・フォカラ)」は、実は地元住民や世界中の観光客約8万人が訪れる一大イベント。2年前、夏のプーリアのワイナリーを訪れてから、すっかり虜になっていたこの地、イタリア最大級の炎のお祭りって⁉ということで、その所以とこの目で見てきた魅力のすべてをお届けします。

「Al Focara(アル・フォカラ)」とは

サン・アントニオ・アバーテ(聖アントニウス)の祝日にあたる1月16日から17日にかけて行われる「Al Focara(アル・フォカラ)」の起源は中世にまでさかのぼります。

この祭りは、この土地の修道院長で、死後キリスト教の聖人となった聖アントニウスが火と癒しの守護聖人であることに由来し、人々が病気や災厄から守られるよう祈るために、特に農民たちにとっては、家畜や農作物の保護を司る聖人として崇められていました。

冬の厳しい寒さを乗り越えるため、また、前年の収穫を感謝し新たな豊作を願う意味を込めて、地元の農民たちはブドウの木の剪定枝を集めて巨大な焚き火を作りました。火は、生命の再生と浄化の象徴とされ、燃え盛る炎によって病や悪霊を追い払うという信仰があり、この風習が300年の年月を経て発展し、現在のような大規模な祭りへと成長した模様!

お祭り前夜、ノヴォリの市議会に招待され、市長から温かい歓迎を受けました。町の歴史やフォカラの意義について深く学ぶ機会をいただきました。

街の代表的な教会を案内いただき、石畳の道を歩きながら、古き良きイタリアの雰囲気を満喫。小さな教会ごとに異なる装飾や歴史があり、地域の信仰の深さを感じました。

伝統的な建築技法を継承

ブドウの木の剪定枝を集めて、束にしたものを重ねてつくる「フォカラ」は、約1週間かけて作られるそうで、大人の両手に抱えきれるかきれないかぐらいのブドウの木の剪定枝の束を、ブドウ畑からトラックでどんどん持ち込んで、農民やボランティアがバケツリレーで重ねていきます。

まさに肉体労働。日本の稲刈りの後のはさがけのようなイメージで、フォカラの形状は巨大な鏡餅のよう、高さは25メートル、直径20メートル。これをマンパワーで作るわけだから本当に〝すごい〟!このフォカラに夜、点火するというセレモニーに昼間からたくさんの人が集まり準備をしていました。

祭りのハイライト

ほぼ爆発に近い状況で、日本では絶対に見ることができない迫力!コンサートとかフェスのようなテンションで、とにかくショータイムは瞬きするのももったいないぐらい〝すごい〟!

数万人の観客が集まる中、ついにお祭りがスタート。バレエ組曲『火の鳥』の踊りとともにオープニングからはじまり、華やかな舞台照明がフォカラを照らし、花火も音楽に合わせて何発も打ち上がります。

お祭りのクライマックスは、何と言っても「フォカラ」と呼ばれる巨大な焚き火の点火。高さ25メートル以上、直径20メートルにも及ぶ薪の山に火が灯されると、夜空を赤々と照らす壮観な炎が舞い上がります。一斉に炎が上がる瞬間は圧巻。火の粉が舞う中、幻想的な光景が広がりました。花火の煙が風でスーッと立ち消えると、炎に囲まれたサン・アントニオ・アバーテ(聖アントニウス)の絵が浮かび上がり、お祭りのプロローグは終了。そして点火された炎は約一か月燃え続けフォカラを燃やし尽くします。

 

まとめ

「Al Focara(アル・フォカラ)」は、イタリアの冬の風物詩として広く知られるだけでなく、歴史と文化を感じられる貴重な体験ができる〝すごいお祭り〟でした。高さ25メートル超えの炎の迫力と、地元の人々の情熱に触れ、忘れられない思い出になりました。来年の開催も楽しみです!今から、旅のウイッシュリストに。

 

取材/髙橋奈央

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