我が子の不登校を乗り越え…どのように700組を超える親子のサポートをするに至ったか

「学校へ行きたくない」、子どもの発したこの言葉に親は心配し、焦り、不安に苛まれるかもしれない。不登校は決して失敗ではなく、子が選んだ一つの選択。我が子が成長するための一歩と捉え、道を切り拓く姿を見守っていく。きっとそれは親の成長にもつながるはず。

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鈴木理子さん 59歳・神奈川県在住
一般社団法人家族心理サポート協会代表理事、 株式会社ファミリータイズ代表取締役

親子で笑顔になれるよう
子にも親にも寄り添いたい

鈴木理子さんの三女が学校に行けなくなったのは、中3の夏休み明け。「体が鉛のように重いと言って起き上がれず、2日間眠り続けました」。

小児科や内科を受診しましたが、悪いところはありません。本人も高1からは行くと言い、1学期は休まず登校しましたが、夏休み明け、また行けなくなりました。「朝起こそうと必死で、自分が仕事に行くときは、LINEを何本も入れたり、『今日は行くの?明日は?』と問い詰めたり。もめごとが絶えず、姉たちともギクシャクし始めたんです。そこで、まずは学校に行く行かないは脇に置き、母娘関係を立て直そうと考えました」。

実は鈴木さんはコミュニケーションを教える企業研修講師。なのに、家で実践できていないことに気づき、「まず、娘が心にためていることを聞こうとしたんです。でも、自分が責められているような気がして、話を途中で遮ってしまい『やっぱりママは聞いてくれない』と思わせてしまったことも。ようやく一晩かけてじっくり話を聞いたところ、私がいかに世間体や学歴の呪いで娘を縛っていたかに気づきました。猛反省し、今後は娘がしたいことのサポートに徹すると心に決め、口出しをやめました」。

すると、娘さんは高校をなんとかして卒業し、大学に進学すると自分で決めて実行。その後は大学生活を楽しみ、現在は社会人として働いています。「自分の失敗も含めた経験を忘れないようにとブログを始めたところ、読者からカウンセリング依頼が舞い込みました。娘に相談すると『誰かの役に立つならいいよ』と言ってくれて」。

その後、個人相談から講座へと広がり、現在までにサポートした親子は700組にものぼります。鈴木さんに、子どもが不登校になったらどうすればいいのかを尋ねると、「『明日は行くの?』と詰問しないこと。『行く』と言うのは、行かなければいけないのはわかっているという意味で、行かなくても、噓をついているのではないんです。そして、訳は聞かずに休ませてあげましょう。理由は子ども自身にもわからないことが多く、話してくれたとしても、それは単なるきっかけで、本当の理由ではないことも多いのです。また、子どもの話をよく聞きちょっとしたことでも承認しましょう。名前を呼んで挨拶したり、作り置きのごはんにメモを添えるだけでも、見守っているよと伝わるものです。親が話を聞いて認めてくれる存在だと感じ安心安全な場所ができると、自己受容感が高まり、動き出すエネルギーが湧いてきます。たくさんの親子のお話を聞いて思うのは、どの子にも絶対に未来を切り拓く力はあるということ。それを信じて、自分がいきいきと生きる姿を見せることが大切だと思うのです」。

<編集後記>オンライン講座は大盛況。受講者さんからの信頼も絶大

いつもオンライン講座を行っているご自宅をお訪ねし、在宅勤務中の三女サナさんにもお会いできました。講座は復学は目的にしていませんが、受講後の1年後の復学・就職率は93%。ご自身の失敗があるからこその言葉に共感を覚えました。子どもが自分らしい人生を歩むために、親はどうすればいいのかを今一度考えさせられる時間でした。(ライター 秋元恵美)

撮影/BOCO 取材/秋元恵美 ※情報は2025年5月号掲載時のものです。

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